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作品解説

現代まで続く永遠不変の権力の寓話、ついに日本解禁。

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 残忍で無能な農場主に虐げられてきた動物たちは、2匹の有能な豚をリーダーとして革命を起こす。「すべての動物は平等である」という理想を掲げ、人間を追放し、自ら農場経営に乗り出す。順調に滑り出したかに見えた「動物農場」だったが、幸せな日々は数ヶ月しか続かなかった・・・。
 どんなに働いても豊かさを手に入れることができない動物たち、巧みな宣伝や恐怖を用いて農場を支配し、やがては堕落していく豚たち。半世紀前に公開された本作が暴きだすのは、まさに現代日本の姿。ワーキングプアの問題や格差社会の本質が見事に寓話化され、見えにくくなった現代の支配構造をあぶり出す。
 すべての動物が平等だったはずの世界が、次第に壊れていく農場を舞台に、動物たちが向ける怒りの目と絶望の涙は、今いったいどこへ向けられようとしているのだろうか?

風刺と迫力に満ちたジョージ・オーウェル原作『動物農場』

 『1984年』などで知られるイギリス人作家ジョージ・オーウェル原作の『動物農場』。社会の片隅から戦場に至るまで自ら足を運び、問題の本質をえぐり出してきたオーウェルが、その鋭い視点と行動力で暴き出したソビエト共産党の内部腐敗や全体主義批判。登場する動物たちは、それぞれ現実に存在した政治家などになぞらえて読み解くことができるとも言われている。しかし、優れた寓話として完成されており、時代やイデオロギーを越えて広く権力の腐敗を痛撃している。
 またアニメーション化の際には、冷戦下のアメリカCIAが出資したと噂されるなど、作品をめぐっての政治的思惑も見え隠れする。
 原作をほぼ忠実にアニメーション化しているが、ラストシーンだけ改変されており、評論家の間では賛否が分かれた問題作であるが、オーウェルの風刺が見事に映像化された迫力に満ちた作品である。

イギリス初の長編アニメーションであり、
伝説のH(ハラス)&B(バチュラー)最高傑作。

 イギリスの「ハラス&バチュラー」といえば、1940~70年代にかけて、ヨーロッパで最大、かつ最も影響力のあるアニメーションスタジオであった。長編映画はもちろん、戦時中のプロパガンダ映画から、実験的アートフィルムに至るまで、実に2000以上もの作品を残している。
 また、子ども向けの娯楽商業作品とはまったく別のアプローチで、芸術作品にまでアニメーションを昇華させ、大人をも観客の対象としたことは非常に画期的であった。
 しかし、日本においては、その功績どころか名前さえもほとんど知られていないのが現状である。三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーは、彼らの代表作である「動物農場」を劇場初公開する。古きよきヨーロッパのアート感覚や乱暴なまでのグロテスクさで描き出される動物たちの心理描写、擬人化された動きや表情など「ハラス&バチュラー」の知られざる魅力をお楽しみ頂きたい。