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作品解説

ロシア史上、最も愛される人形童話「チェブラーシカ」
全四話完全《デジタルリマスター》版、堂々劇場公開!

 オレンジの木箱に閉じ込められて、遠い南の国からやってきた、大きな耳の小さないきもの。起こしてもすぐに倒れてしまうので「チェブラーシカ(ばったりたおれ屋さん)」と名づけられたこの正体不明のいきものは、動物園にも受け入れを拒否され、都会の片隅の電話ボックスで暮らしていた。そんな彼が出会ったのは、動物園で働く、一人暮らしの孤独なワニ・ゲーナだった。

 「この街には一体どれくらいいるんだろう。ひとりぼっちの人が」

 ふたりの優しさが今、この街に、ささやかな幸せを生み出してゆく——。

 詩情ゆたかな童話的世界を舞台に、動きの細部にまで人間の心をそそぎ込まれた人形たちが、愉快に働き、歓びをわかち合い、哀しみにふれ、無責任さに怒る。一見無邪気なエピソードに惹き付けられる一方で、描かれるのは現代にも通じる社会のひずみと、この世界の幸せのかたち。公開から約40年たった今もなお、ますます人々を魅了するこの古典的名作には、“かわいい”だけで終わらせることのできない、時代と国境を越えた生命力が満ちている。

 膨大な時間をかけて1コマ1コマ動かすことで全てを描き出す人形アニメーションという表現方法。2008年夏、三鷹の森ジブリ美術館は、人間の手作りだけが生み出しえた、ロシア史上、最も愛される人形童話「チェブラーシカ」をお届けします。

オリンピックイヤーのこの夏、
チェブラーシカが世界中に出没する!

 「チェブラーシカ」は、1969年から83年にかけて全四話の短編が公開されて以降、ロシアでは知らぬ者がいない、絶大な人気を誇る国民的映画となった。その人気は世界中に飛び火し、日本においても2001年に渋谷のミニシアターで公開され、子どもから大人まで数多くのファンを生んだ。フィギュアスケートの安藤美姫選手ほか、著名人にもファンが多い。

 しかしその後、ソ連崩壊後の混乱の煽りを受けた「チェブラーシカ」は、ロシアやアメリカなど権利保有を主張する企業により訴訟問題に発展するなど、版権トラブルに巻き込まれた。2006年、日本法人2社からなる「チェブラーシカプロジェクト」は、それら版権問題をすべて解決し、アニメーションの普及・啓発を目的とする三鷹の森ジブリ美術館に協力を要請。こうして、2008年夏、映画「チェブラーシカ」全四話完全<デジタルリマスター>版が、晴れて劇場公開を果すことになったのだ。

 なお、登場人物のチェブラーシカは、2008年の北京オリンピックにおいて、ロシアチームの公式マスコットに決定している。この夏、世界中のお茶の間に、チェブラーシカが出没するだろう。

人形アニメーションの巨匠ロマン・カチャーノフの元に、
ロシアの天才・鬼才が集結した!

 原作は現代ロシアで最も有名な児童文学作家の一人、エドゥアルド・ウスペンスキー。監督は、「ミトン」(67)、「レター」(70)、「ママ」(72)など、人形アニメーションの世界的名作を生み出した巨匠ロマン・カチャーノフ。そしてキャラクター設計と美術は、宮崎駿監督が愛した「雪の女王」(57)など、ロシア・アニメーションの傑作背景美術を描き続けたレオニード・シュワルツマンが担当。さらに、世界で最も偉大なアニメーション作家の一人ユーリー・ノルシュテインも参加している。ロシアの代表的な童謡作曲家ウラジーミル・シャインスキーが手掛けた哀愁感ある音楽も素晴らしく、劇中歌は国民的な童謡となった。ロシアの天才・鬼才が結集して制作された、まさに類例のない作品だ。