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作品Q&A

「チェブラーシカ」に関する8つの質問

~日本語版翻訳 児島宏子さんに聞きました。~


Q.「チェブラーシカ」は、どうやって生まれたのですか?

A. 街でだぶだぶの毛皮のコートを着た小さな女の子が、歩くたびにバタンバタンと転んでいるのを、原作者のウスペンスキーが見かけ、そこから「チェブラーシカ(ばったりたおれ屋さん)」の着想を得たようです。

 それともうひとつ。ウスペンスキーが港に行った時、船から下ろされた青いバナナの山から、なんと緑色のカメレオンがひょいと出てきた。もちろん、カメレオンはソ連にはいない生き物です。「うわぁ、こんな遠い国に南の国から来ちゃって、どうするんだろう」って。このふたつの思いがけない体験が「チェブラーシカ」の発想の源泉のみなもとになったようですね。

 カチャーノフのことはノルシュテインやシュワルツマンから聞いていました。カチャーノフが或る日、スタジオにやってきて「すっごい本、見つけたよ!とにかくすごいんだから!ひっくり返ってでんぐり返るくらい、面白いんだ!こういうのを映画にしたいなぁ」と言って。私もそれを翻訳しましたが、とてもとても面白かった。何と同じ街に、大人も、子供も、動物たちもみんな一緒に暮しているのね。


Q.「チェブラーシカ」第1話は、原作とはエンディングが違いますね?

A. 「チェブラーシカ」という映画には、戦争の影響が色濃く出ていると思うんです。第二次世界大戦で、ソ連は世界一の被害者を出した国です。しかし、その後の文化人たちは、特に子供に対して、復讐や仕返しという考えを絶対なくすように努めたのです。

 エンディングがあのように変わったことは、ソ連時代を生き抜いたカチャーノフの、子供たちに対する深く強い思い――やさしい人になってという――を感じます。


Q.「チェブラーシカ」第1話では、登場人物が皆ひとりぼっちです。

A. これは、当時のソ連の状況からしたら表面的にはおかしい。ただ、沢山の人が戦争で亡くなり、どこの家も父親が不在。男女の数が同じくらいになったのは、もっと後になってからです。ソ連は世界でいち早く女性の参政権が認められ、夫婦別姓も認められた国です。しかしどんなに男女平等を謳っても、戦後、一家の柱がいないというのは大変さびしい状況で、精神的にひとりぼっちの人は非常に多かったと思います。そういう社会状況が作品に、はからずも影響しているのでしょう。

  また、都市化が進み、都会の中の孤独という現象が起こりますね。私たち今の観客は、そこに共感を持つのではないでしょうか。皆ほんとうの友だちがほしいのです


Q.第2話では、遊び場を奪われた子供たちが登場しますが?

A. そこにも60年代のソ連の都市化の影響が感じられますね。5階建ての住宅が次々建設され、70年代には高層の建物が増えていきます。現代の日本の子供たちを取り巻く環境と、くしくも似通っていますね。身近に遊べる空間がほしいです。


Q.ピオネールとは、何ですか?

A. 簡単に言えば、ソ連時代のボーイスカウト。ピオネールは、「パイオニア(開拓者)」という意味で、小学生から高校生くらいまでの子が入ります。

 ピオネール宮殿という建物が地区ごとにあり、日本の児童館とは全く規模が違い、退職した有名なバイオリンやピアノ奏者、バレエなどの先生が来て子供たちに教えてくれ、色々なクラブ活動もある。夏は一ヶ月くらい、みんなでキャンプに行く。ピオネールは、子供たちの憧れで、みんな一生懸命良い子になろうとする。ただ、良い子かどうかを前もって評価するのでなはくて、入りたい子はみんな入れるのです。


Q.チェブラーシカは、働くことに積極的ですね?

A. 不労所得というのは、“社会主義国家”では良しとされないですから、電話ボックスに暮らすチェブラーシカも、「働かざるもの食うべからず」という考えを持っていたのでしょうか。


Q.ワニが紳士的な人物として描かれていますね?

A. ロシア人は、とにかくワニが好きなんですよ。児童文学でも絵本でもアニメーションでも、ワニが登場するものは多いですね。自分の国にいない生き物への憧れかしら。


Q.2006年は、トリノオリンピックで白チェブが話題になりましたが、北京オリンピックでは?

A. さて、何チェブになるんでしょう(笑)ウスペンスキーは、既にアイディアがあるといっていましたが、どうなったかしら?オリンピックまで待つとしましょうか。


児島 宏子(こじま・ひろこ)プロフィール

ロシア語翻訳、通訳他。
訳書に「霧の中のハリネズミ」「きつねとうさぎ」(日本絵本大賞)(福音館書店)、「アオサギとツル」(未知谷)、チェーホフコレクション(ロシア第一線の画家たちとコラボレーションで)「カシタンカ」「ロスチャイルドのバイオリン」「可愛い女」「大学生」「たわむれ」「すぐり」 「少年たち」(未知谷)、「ドルチェ、優しく」(岩波書店)、「チェーホフが蘇える」(A.ソクーロフの撮影日記)(書肆山田)、「チェブラーシュカ」(平凡社)、「ソクーロフとの対話」(河出書房新社)など。アニメーション映画「チェブラーシカ」では、字幕版、吹替版の翻訳を手掛けた。