2001年08月


08月01日(水)
運営スタッフたちが着る制服が納品された。美術館入口をポジションとするスタッフが着るのは、綿100パーセントの白い七分袖ブラウスと黒いワンピース。
「魔女の宅急便」のキキをイメージしているそうだ。試着した大口さんには落ち着いた印象を受けたが、「かわいい」という声もあれば、何故か無言の人もいた。


08月02日(木)
塩島さんの実家から桃が届く。さすが桃の本場・山梨という桃の大きさと、お母さまの心遣いにムゼオ一同は感激。

一階常設展示室へ古本が再び搬入される。今回は、ジブリの鈴木プロデューサーの助け舟で、故・徳間前社長の蔵書が大量に加わり、棚がぐんと充実してきた。


08月03日(金)
夕方から、カフェで出すビールを取り扱う業者さんと美術館スタッフとの懇親会が、カフェで行われた。シェフの高築さんはこの日のために、ずいぶん前から仕込みをしていたそうで、おいしい料理に和やかに会は進んだ。締めくくりは吾朗さんの掛け声で「ごちそうさまでした。ありがとうございました」の言葉が、元気良くカフェ中に響いた。


08月06日(月)
アルバイトさん達の内数名が、今日から美術館で正式に配属される。美術館に人が増えて、開館へと時間は迫っているのを感じる一方、スイングビルでは日ごとに人が減っている。今日はカフェのスタッフが夏休み中で、さらに人が少ない。
田坂さんはフロアを見渡して「寂しいなあ」と呟いていた。


08月07日(火)
ネコバスの設営もいよいよ大詰め。映画の中のネコバスよりはちょっと小さめだけど、ふわふわ感は同じだということで、時間を見つけては触ったり抱きついたり、果ては乗ってみたりしているスタッフが続出している。


08月08日(水)
一部を残してほぼ全てのステンドグラスが完成し、入口や各階に次々とはめ込まれた。
「千と千尋の神隠し」の1シーンをモチーフにした絵柄もある。夕方には、夕陽がステンドグラスに射しこみ、さまざまな色を床に映し出していて、何人かのスタッフがつい仕事の手を休めてじっくり見入ってしまっていた。

ネコバスの縫製作業が終わり、完成。子供達が来るのを待つばかりとなる。


08月09日(木)
地下1階展示室の立体ゾートロープ「トトロぴょんぴょん」がほぼ完成。安西さんの「見にこない?」との誘いに、北嶋さんと田村さんが駆けつける。夕暮れの背景画が貼り込まれ、人形だけだった状態と全く違う雰囲気が出ている。試運転も行われ、トトロやメイ達がぴょんぴょんと跳ねたり、ネコバスが走ったりする様子のかわいさに、立ち会った皆は心が和み、しばらくトトロ達の前に張りついていた。


08月10日(金)
カフェと美術館の間にあるパティオを飾る花が運び込まれた。かわいらしい花々が赤い井戸小屋とマッチして、開放的でリラックスできる空間になった。現在パティオは様々な業者さんの休憩所代わりになっているが、その機能もアップしたかもしれない。


08月11日(土)
1階常設展示室の5つに仕切られた小部屋の内、メインとなる2部屋の飾り付けが着々と完成形に近づいている。図録のための撮影も控えているので急ピッチだ。大きな模型飛行機が吊るされたり、大工道具を掲げたボードが壁に取り付けられたりと、部屋を覗くたびに変化している。


08月12日(日)
プレスシートに掲載する写真撮影が行われた。「美術館にいらしたお客様」という設定でおよそ 50人のモデルが集まり、ポイントとなる場所で次々と写真が撮られた。あいにく雨となった悪条件にもめげず、幾度となく無線連絡が飛び交い、ドタバタと走り回るスタッフの姿があちこちで見られた。

1階常設展示室の壁にいよいよ絵が貼られ、絵を描く作業場の雰囲気がぐっと増したところで図録やプレスシートのための撮影が立て続けに行われた。これで撮影は一段落といきたいところだが、ステンドグラスなどは晴れた日でないとやはり良くないので来週の天気待ちとなる。


08月13日(月)
総務の中村さんがほぼ一ヶ月ぶりに、スイングビルに復帰する。久々なのに周りから言われることは「丸くなったね」という心無い言葉ばかり。「最近仕事が大変だから、みんなが痩せただけだよ!」と中村さんは主張していたが、どちらが正しいのか。

宍戸さんが事務所のエレベーターに乗ったとき、たまたま乗り合わせた親子に「もうすぐ美術館が開館ですよね!」と声をかけられた。もちろん宍戸さんはその親子を知らない。驚いたのと同時に、美術館への関心の高さを肌で感じて身が引き締まった。


08月14日(火)
美術館竣工後より少しずつ進めてきた映像展示室のスピーカーの音響調整もいよいよ完成に近づき、関係者一同そろっての試聴会が行われた。この音響システムは、美術館オリジナルの映画の良さを十分引き出すことができるように、加藤晴之氏を中心にスピーカーの試作を重ねて製作してきたものだ。試聴会は無事に終了し、評判も上々。これから最終調整を経て、オープンを迎えることになる。


08月15日(水)
美術館の近くには食べ物屋さんが少ない。昼ごろになると誰かが代表して買い出しに行くのがいつものパターンになっている。この日は机さんがみんなのオーダーを取ったが、出前をしてくれる中華料理屋さんやお弁当屋さんは2件とも休み。
「そうだ…今日は8月15日だった」と気づいて迎えた2001年机さんのお盆だった。

ショップに商品が搬入され始め、少しずつディスプレイが整っていく。宍戸さんや塩島さんが小柄な体で大きな荷物を運ぶ姿は、思わず「頑張って」と声をかけたくなる健気さが漂う。


08月16日(木)
佐々木さんの交渉のおかげで、あるお弁当屋さんから試食ということで12食分のお弁当が届く。良心的な値段の和食系お弁当に一同満足。来週からこのお弁当屋さんにもお世話になるのだろう。

夜8時頃イマジカの内田さんから2種類のシュークリームの差し入れをいただく。
くたびれ始めていた事務所の雰囲気が一瞬にして明るくなった。ごちそうさまでした。


08月17日(金)
19日に行われる運営検証会の準備のため、深谷・大口・滝口の運営チームが買出しに出かける。ロープやドアのストッパーなどを探した一日がかりの買出しで、 3人はぐったりした様子で帰ってきた。店中のものに目移りする大口さんと、民族衣装に過剰反応する滝口さんに反して、深谷さんは必要なもの意外は興味を持たなかったらしい。しかし何かの反動だろうか、その夜8時過ぎにパティオでもくもくと薪を割る深谷さんの姿が目撃されていた。


08月19日(日)
深谷さんを司令塔に、大口さんや滝口さん、アルバイトリーダーら運営チームの計画した美術館の検証会が行われる。180人を超えるお客様を相手に映像展示室の入れ替え検証などを実施し、大きな混乱もなく終了した。ただし課題もいくつか浮かび上がり、遅くまで反省会をしている運営チームであった。


08月20日(月)
ロシアから来日中のユーリー・ノルシュテイン監督が来館。吾朗さんと鈴木プロデューサーが案内をした。1階の常設展示室ではイメージボ-ド一点一点に目を留めながら、まるで部屋の主のようにイスに座っていた。その後も各所を熱心に見てまわり、少年のような表情で屋上のロボット兵の足に座る姿は一枚の絵のようであった。最後はカフェで吾朗さんと鈴木プロデューサーに、ロシアの現状について深く語っていた。


08月21日(火)
東に接近しつつある台風11号に備えて、鹿島建設さんが美術館の周りに強いバリケードを作ってくれた。しかしあまりにも強固なバリケードだったため、外側から美術館に入れない関係者が続出してしまった。


08月22日(水)
台風直撃の恐れとの知らせに、朝早くから土嚢を運ぼうと吾朗さんは一人出社。
会社に来てみると、前日からの大雨のためカフェのデッキはほぼ水没している状態だったという。幸いその後、台風は美術館方面を直撃することなく去っていった。

朝の大雨でずぶぬれ状態で出社した深谷さんは、業者さんの作業用のズボンを借りるが腰周りがきつくて入らず、女性用の作業ズボンを履くことに。それで一日を過ごし、そのまま帰宅していった。


08月23日(木)
昨日からはじまったコインロッカーの搬入がほぼ終わる。美術館の雰囲気に併せて落ち着いた緑色のロッカーがパティオに並んだ。設営に携る人たちの休憩場所になっていたベンチは撤去されたが、これでお客様が遠くから来ても大丈夫。


08月24日(金)
宮崎監督が1階常設展示室の壁画の下描きを木炭で描く。木炭の消しゴムとしてカフェから歯ごたえのあるパンを拝借して使っていたが、いつの間にかそのパンをもぐもぐ食べながらの作業に。1時間ほどで、セルに絵の具を塗っているスタジオの様子が壁に描かれた。その後を継いで作業をする男鹿和雄さんは、どんな色を塗るか思案していた。


08月27日(月)
サンクンテラスに「風呂釜」が搬入される。屋上のロボット兵を作った鯱丸さん作で、大人が6人、子どもだと13人も入れるという大きさだ。もちろん美術館でお風呂を焚くわけにはいかないが、テラスに設置されるやいないや、北嶋さんと田村さんは中に入って嬉しそうに湯船につかる雰囲気を味わっていた。


08月28日(火)
展示用にフィルムリールがいくつか必要になり、三好さんは業者さんと中古品の在庫状況について打合せ。大きいのだと直径90㎝のものもあり、どのサイズのものをいくつ使うか、まだ宮崎監督の構想が固まってないということもあって決められず、とにかくありったけを探してもらうようお願いすることに。


08月29日(水)
左官職人・横山さんによって、中央ホール2階の壁上部に作られていたモザイク時計が完成し、足場が取り外された。数字の部分にタイルを細かく割ったものを張り、レリーフ状に文字が浮き出たカラフルな仕上げになっている。横山さんによると、大変だったのは立ちながらの作業ではなく、横になっての作業とのこと。
おつかれさまでした。


08月30日(木)
運営スタッフが建築現場事務所で緊急対応の講義を受ける。消火器の使用方法などが説明される中、深谷さんがまじめな話をしながら、手を振り回して近くに寄ってきた蚊を捕まえようと悪戦苦闘。見ていた大口さんは、緊張すべき場なのに、楽しすぎて腹筋が疲れたそうだ。


08月31日(金)
宮崎監督がカフェ外観についているメニュー黒板にトトロの絵をチョークで描き、そこへ松下さんがメニューを書いた。そのコンビネーションのかわいらしさに、訪れたスタッフには思わず声を上げる人も。