2001年04月


04月02日(月)
「とうとうオープンまで半年を迎えたのでますます忙しくなるが、さらに連帯感を持って作業を進めていこう」と新年度最初のムゼオミーティングで吾朗さんは力強く発言。

今日入社の大城さん、大口さん、滝口さん、塩島さんへの美術館に関する説明会に張り切ったのか、橋田さんはスーツを着て登場。さらに美術館の制服となる青い上っ張りを着たその姿は、美術館オープン本番そのもの。完璧な衣装でテンションが上がった橋田さんは、なめらかな口調で延々と説明を続け、4時間にも及んだ。

新入社員歓迎会をスイングビル事務所で行う。買い出しに行った田坂さん、田村さんは、調子に乗ってワイン4本、ジュース4本、サラダの材料一式、お寿司一式などなど買い込み過ぎて、結局持って帰ることができず、深谷さんに迎えにきてもらっていた。歓迎会では○○○○ビールさんからの大量のビールの差し入れに感謝感激し、おいしいごちそうに囲まれ、皆は気分上々。そんな様子を横目に、吾朗さん、橋田さん、宍戸さんはなかなか終わらない仕事に追われていた。


04月03日(火)
新入社員4人を含む8人が建築現場を見学。キップ売り場や螺旋階段、丸い窓枠、階段の手すりなど、細部まで出来ているところもあり、着々と進んでいる感じだ。
とはいえ、まだ資材がたくさん置いてあるそばを、身をよじらせながら歩かなければならない。ロボット兵を見ようと屋上に上がったのだが、作業中でそばまで近づけない。ロボット兵を初めて見た滝口さんは「もっと近づきたい!」と手を伸ばしていた。


04月04日(水)
スタジオジブリの新作「千と千尋の神隠し」の展覧会が行われることになった。
その一角で美術館の展示も行うことになり、業者さんと打ち合わせ。やるなら中身の濃いものにしたいが、時間的猶予はない。ともかくまずはイメージをつかむために、以前三鷹市で行ったパネル展で使用したパネルを見てみることに。橋田さんが事務所の隅から次々とパネルを取り出し、丁寧な説明をしてくれた。方針もほぼ決まって一同ほっとした後、パネルを戻そうとしたのだが、もとのようにきれいに収納できない。結局、大掃除並に片付けをする羽目になり、終わった頃はみんな汗だくだった。


04月05日(木)
7月に大幅リニューアルを予定しているホームページの作成方針を、大口さん、滝口さん、田村さんで打ち合わせ。地図担当の大口さんは、何パターンもの案を出し、「お客様がどこからでもスムーズに美術館まで来ていただけるようにがんばる」と頼もしい。ホームページを見てくださる方々に、わかりやすく親切な情報を提供したいところだ。

3スタでは、ネコバスの模型のチェックが行われる。宮崎監督も、映画制作の合間を縫っての立ち会い。ラッシュ上映が始まる時刻を過ぎても、熱弁をふるって指示をしていた。


04月06日(金)
心なしか宍戸さんの目にいつも力がない。ここ数日、ショップ販売用セル画のトレス作業に力を使い果たしているのだ。作業自体は単純だが、細かいところまで神経を使い、3時間を超えるともうへとへとらしい。しかし、同じくこの作業に追われているショップの新人・塩島さんが「電車に乗る頃はふらふらだけど、商品を自分たちで作ってる実感がうれしい」と笑顔を見せ、宍戸さんも目を細めていた。この作業は、7月中旬まで続く…。


04月07日(土)
運営課の3人で美術館運営のコンセプトを最終的に詰めるために打ち合わせ。美術館を良いものにしようという思いはどのスタッフも同じだが、それを言葉や文章にするとそれぞれ違う表現になり、それをひとつのコンセプトとして統一していくことは至難の業だ。案の定、打ち合わせでは三者三様の意見がぶつかり合っていた。こうしたことはどのセクションも同じらしく、ムゼオでは今後も喧喧諤諤な打ち合わせが繰り広げられそうだ。


04月09日(月)
カフェのスタッフと運営の深谷さんが、生ごみを堆肥化する処理プラントの見学に行く。ごみが入ったプラントの中に手を入れてみたが、嫌なにおいが全くしないことに一同は驚いたそうだ。

立体ゾートロープに使う人形の着色見本を作ったが、ストロボを照射すると、普通の光で見るときと色が全然違ってしまうことが判明。もっとコントラストを強めた色彩に塗り直さなければ。


04月10日(火)
コーヒーの入れ方のトレーニングを受けに行った堀口さんは、自分の入れたコーヒーがおいしかったのか、空腹なのに何杯もお代わりしてしまって冴えない顔色。「空腹にコーヒーはだめ。カフェではやっぱりカツサンドを食べた後に飲んでもらいましょう」と調子のいいことを言っていた。


04月11日(水)
販売用グッズの試作品として、蚊取り線香を入れる豚型の焼き物が届く。どっしりした姿とざらざらした手触りに懐かしさを覚える。しかし、それだけでは満足せず「煙は鼻の穴から出そう!」と、さらにこだわることに。小葉松さんは、「豚の鼻から煙を出すための打ち合わせを、この年になってこんなに真剣にするとは…」と文句を言いつつも楽しそう。


04月12日(木)
朝から北嶋さんと二馬力で映像展示室の壁画・天井画の打ち合わせをし、息つく暇なく吾朗さんと東浦和へ、模型飛行機製作をお願いした方のお宅に向かった安西さんは「机に向かってやる仕事がどんどんたまっていく…」とぼやいていた


04月13日(金)
「千と千尋の神隠し」展への美術館の出展について、業者さんと最終的な打ち合わせを行う。配置や額の大きさ、壁の色に至るまで決定し、あとはパネルやキャプションの原稿を完成させるだけ。できるだけ多くの来場者に美術館への興味を持ってもらえるようにと、橋田さんと田村さんは原稿チェックに余念がない。


04月16日(月)
ジブリとムゼオの合同入社式がジブリのバーで行われた。「入社式なのでそれなりの格好で参加すること」との吾朗さんの指示で、ムゼオの新入社員は全員スーツを着用して出席。しかし、同席したジブリの新入社員は皆カジュアルスタイル。
しかも吾朗さんまでが、半袖シャツにチノパンと、普段どおりの格好をしていた。
おかげで、ムゼオの新人はかなり目立っていたが。


04月17日(火)
ジブリ作品のフィルムを使って作る美術館のきっぷについて打ち合わせ。フィルムを何コマ分使うか、どんな枠のデザインにするかなどを話し合う。しかし、話すだけでは完成品のイメージがわかず、吾朗さんが実際のフィルムを切り貼りして試作品を作ることに。たちまち打ち合わせ机は作業机へと変身し、たくさんの試作品ができたが、どれもそれぞれに持ち味があってなかなかひとつに絞れない。担当の橋田さんと田村さんは頭が痛そうだった。


04月18日(水)
ショップのユニホームとなるシャツを探しにでかけた塩島さん。女性用は決定したものの、男性用はなかなか適当なものがみつからない。昨日は吉祥寺、今日は渋谷、と街のはずれからはずれまで歩いたが、結局どのシャツもデザインや予算の面でいまいちだったとのこと。それを聞いた佐々木さんは「ネット販売でいいものが出ているかも」とのアドバイス。足を棒にした塩島さんが、ITによって報われる日はくるのか。


04月19日(木)
なぜだかいつもより事務所の雰囲気がバタバタしている。みんなそれぞれ分刻みで打ち合わせが入っているせいか。そこで「腹が減っては戦ができぬ」と、みんな打ち合わせが終わる度におやつを食べ、次々にこなしていた。

3スタでは地下一階の展示室の打ち合わせ。展示用壁の工事段取りや、パノラマボックスの設計などを詰める。さらに、ここにきて新たに大物展示物の壁や木工造作の製作を、ただでさえやること満載の業者さんに依頼してしまった。


04月20日(金)
図録を制作するジブリ出版部の田居さん、高畑さんが、編集スタッフの方とともに建築現場を見学。屋上のロボット兵の周りには土や植物が入り、外壁に鮮やかな緑や赤の土壁が塗られ始め、映像展示室の天井画に下描きが入り出し、各部屋の仕切りも明確になるなど、工事がかなり進んだことに感嘆の声を上げつつ、その出来具合を確認していた。同行した三好さんによると、特に評判だったのは、男子トイレの壁に貼られたタイルの色と蛙のレリーフだったそうだ。

続いて安西さんが、立体ゾートロープ制作スタッフの方々と、建築現場の地下一階展示室で採寸や打ち合わせを行う。その後、ゾートロープを制作している工房に移ってターンテーブルに人形を全て並べた状態をチェック。当初「大きな円盤だからもっとキャラクターがいないと寂しいのでは」と言われていたが、いざ実物を見ると、キャラクターが所狭しとひしめいていて、安西さんは「すごいけど、暑苦しいかも」と圧倒されていた。


04月23日(月)
定例のムゼオ・ミーティング。普段はセクションごとに分かれて仕事をしているので、このミーティングで他セクションの進捗状況を知ることができる。建築工事も佳境に入り、プレス発表などの広報スケジュールも固まりつつあるが、やはりどのセクションも、順調に遅れている…。

「千と千尋の神隠し」に追われているはずの宮崎監督が突然建築現場に行き、左官作業に突入した外壁の土の色をチェック。色は気に入ったらしいのだが、その他を見てまわる際、立ち入り禁止区域にもお構いなしに歩くので、同行した安西さんはあせっていたそうだ。


04月24日(火)
電話配線工事の打ち合わせのため、久しぶりに現場を訪れた佐々木さんは、状況があまりにも変化しているのでびっくり。ちょうど1階のトイレで、イタリアから買ったタイルの貼り付けがはじまっていて、そのやさしい風合いを見て、北嶋さんとともに歓声をあげていた。また佐々木さんは、ニセ窓が入る地下1階トイレの「蛙が跳ねているタイル」をはじめて見たとのことで、いたく感動したそうだ。


04月25日(水)
日本橋高島屋にて催される「千と千尋の神隠し展」が、いよいよ明日に迫った。
しかし午後から展示物の搬入の立会いに行くはずだった橋田さんと田村さんは、急な案件が入り、現場に行けなくなってしまった。代表として一人で行く羽目になった川口さんによると、「千と千尋の神隠し」に関する大掛かりな展示物が次々と搬入され、楽しい雰囲気になっていたとのこと。来てくださる方には、美術館の展示部分もぜひ見ていただきたいです。


04月26日(木)
サンドイッチを分け合い、声高に笑い、つまらないことに一喜一憂しながら食事する橋田さんと田村さんが、「なんだか怖い!」とみんなに責められていた。
前日、たまっていた仕事を空が白々するまで片付けていたせいで、テンション絶好調になってしまったようだ。

販売用セルのトレスがけが思うようにいかず、宍戸さん、塩島さんを悩ませていたのだが、マシンの清掃と調整を行ったところ、線の出が良くなった。しかしまだ、カーボン不足の問題が残っている。


04月27日(金)
ジブリで行われた広告宣伝に関する打ち合わせが3時間におよんだ。広報宣伝チームとしては、今ある計画をさらに深く掘り下げるヒントがつかめたとのこと。

立体ゾートロープの照明実験のため、安西さんは工場へ。人形がぼやけて見えはしないか、色が変わりはしないかなど懸念事項はいろいろあったが、具合は「ばっちり」だったそうだ。