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館長日誌 2月

第13回 妄想が妄想を呼ぶ!(2007.02.01)

前回、無声映画に弁士が話をつけて上映する提案の話を書きましたが、実は、ロシア語版のフィルムが完成したとき、これを他の人に見せるにあって、私はまさにその弁士を演じたのでした。日本語字幕がなく、翻訳もまだされていませんでしたから、台詞もなにもわからない。それでも、知りえた限りの情報をもとに、私が場面設定から主な台詞までを映像に合わせて講釈したのです。
『パーシャ♡♡』
『だめ!それ以上は』
『いいじゃないか、パーシャ。』
などと。かなり想像を入れていましたが。
そうやって、何人かに見せて感想を求めていったのですが、これに対する、それぞれの反応がまた面白かったので、ここで紹介しておきます。
A氏(40才代男性)
「いい作品ですね。映像だけでも内容はよく判ります。私なんか今の年令になっても頭の中で色々想像しては、勝手に喜んだり落ち込んだりしてますから。思春期の少年の気持ちをうまく捕らえて表現してますよね。」
どうも、男性陣は思春期の少年の悶々とした気持ちにみんな共感。映像が少年の想像の世界と現実の世界をめまぐるしく行き交うのですが、言葉がない状態の映像だからなおさら少年の妄想が拡大されて伝わってきて、見ている人が妄想してしまったのですね。
B氏(30才代男性)
「こういう時期って男ならみんなあるじゃない。男なら誰もが共感する話だよ。同級生の女の子にも気があるし、一方で年上の人に教えてもらいたいという妄想を膨らませる年頃。自分がこの年頃だったら、もっと色々想像したね。」
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完全に妄想が妄想をよんでいます。一方、女性の意見として参考になったのが次の感想です。
Cさん(30才代女性)
「私は、アントンくんがかわいいなあと思います。頑張って一途に女性に向かっていく様子がいいですよ。年下の男の子に頑張って向かってこられると、かわいいと思いますから。」
もしかすると、アントン少年をハンカチ王子のキャラで押すと妙齢の女性たちに受けるかも・・・、なんて考えたのでした。
なおその後、日本語字幕の完成版を見たら、彼らの印象は変わっていました。「もっと深い愛についてのテーマがあったんだ」と。
私としてはそんないい加減に台詞をつけたつもりはなかったのですが(笑)。どうも私には弁士は向いていないようです。




第14回 幽霊が見える(2007.02.02)

今日は夕方から「春のめざめ」のCMスポットの編集、ナレーション収録がありました。日本テレビの某アナウンサーがナレーションを担当してくれたのですが、予定の時刻になっても現れない。暫くたってかかってきた電話で、タクシーに違うところへ連れて行かれてしまったと判明。運転手に電話を代わってもらって、場所を教えて事なきを得ました。
その待ち時間の雑談の中で、突然、日本テレビ映画事業部の飯沼さんが「自分は幽霊が見える」と言い出し、ひとしきり彼の幽霊話になりました。
何回も見ているそうでいくつもの話をしてくれたのですが、その中に長年付き添っている(?)幽霊がいるとのこと。その幽霊はトレンチコートを着たチョイワルおやじ風。扉のところから覗き見ていたり、後ろに立っていたりすることがよくあるのだそうです。
ある日、先輩からある品物を受け取るために、自宅から自分の車で先輩を乗せて家へ向かいました。夜だったので、親に気づかれないように先輩と二人でコソコソと出て行きました。そして、先輩の家に到着して先輩が家の鍵をあけて入るやいなや、
 ススススッー
と、トレンチコートのおじさんが自分の後ろから走って出て先輩の家へ入ったのを目撃したのです。
家から品物を持って出てきてくれた先輩に、「家の中に何か入っていきませんでしたか?」と聞くと、先輩は気味悪がっていましたが見てはいないようでした。
家に帰ると、こっそり出て行ったつもりだったのに、母親に「こんな時間にどこに行ってきたの?」と聞かれました。どうも出て行くところを見られていたようです。「先輩を送っていった」と答えると、母が、
「ああ、3人で乗っていったもんねぇ。」
飯沼家では皆さん幽霊が見えるそうです。
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「幽霊を振り払う飯沼さん」


なお幽霊の話は「春のめざめ」とは何の関係もありません、念のため。
CMスポットのほうはナレーションもばっちりで、情感豊かなすばらしいものができました。2月下旬から日本テレビで流れる予定です。お楽しみに。




第15回 気に入ったからこそ?(2007.02.05)

三鷹の森ジブリ美術館は日時指定の完全予約制です。なぜ予約制かというと、一言で言えば建物が小さいから。入場人数を一定数以下にしないと見学が困難になってしまうからです。それでも、チケットが完売する土日休日にはお客様にご不便をかけているところがあると思います。この場をお借りしてお詫び申し上げます。
さて、この予約が取れるのはLAWSONだけ。開館以来、ジブリ美術館の予約用にシステムを組んでくれたり、宣伝協力をしてもらったり、ローソンさんには言葉に尽くせないほどのご協力を頂いています。
今回の三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー発足にあたっても、色々と協力してもらっています。たとえば、「春のめざめ」前売鑑賞券はローソンさんだけで取り扱ってもらっています。
パンフレット付前売鑑賞券  1,500円
ポスター・パンフレット付前売鑑賞券 2,000円
しかも、これを皆さんで盛り上げてくれるんです。下の写真は、手元に届いたLoppi Goods カタログ2月号です。ローソンのLoppiで買える商品の紹介がされているフリーペーパーなのですが、見開き2頁で紹介してくれました。
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関東近県にお住まいの方必見!という断り書きがあるものの、渋谷のシネマ・アンジェリカ単館のみの公開にもかかわらず、こんなに大きく掲載されてとても恐縮しています。
ちなみに私はこれを見て、担当の盛谷さんが「春のめざめ」を相当気に入ったな、と推測しましたね。そして思い出したのです。数ヶ月前、盛谷さんが「春のめざめ」を試写室で初めて見たあとのミーティングのときのことを。
盛谷さんはミーティングの間ずっと、出来たばかりのポスター案を何度も手にしては舐めるように眺めていました。見ては置き、また引き寄せて手にとって見る。しかも2案あるポスター案のうち、片方のみを何度も。その手にしていた方が正式にポスターになりました。
その時、感想を求めると「男なら誰しもこの少年の心情がわかりますよ」とかいいながら、ポスター案を手にして感慨深げな様子でした。何か思い出すことでもあったのでしょうかねぇ。
盛谷さんの思いは別としても、盛谷さんを中心とするローソンの皆さんのご協力に深く感謝しております。
前売鑑賞券はいずれも300円のお得ですので、是非ローソンでご購入ください。




第16回 セラフィーマ・新井さん(2007.02.06)

昨日、ローソンの皆さんと一緒に三菱商事グループのジブリ担当窓口の新井さんが打ち合わせに来ていました。新井さんにはジブリ美術館の宣伝・広報活動においても大変ご協力を頂いています。ローソンさんとのパイプ役になっていつもミーティングを仕切ってくれている上に、彼女の幅広いネットワークを生かしていつも面白いネタを提供してくれます。
「春のめざめ」についても、新井さんが中心になって動いてくれたことにより、ローソンさんで多方面から取り上げてもらえるようになりました。
昨日からは、NATURARL LAWSONの店頭で、「春のめざめ」キャンペーンを展開してもらっています。2月5日から18日の間に600円以上の商品をお買い上げいただいた方から40組80名様を、3月14日のホワイトデーにジブリ美術館での「春のめざめ」試写会へご招待いたします。詳細はローソン「春のめざめ」特設サイトもしくはNATURARL LAWSONの店頭でご確認ください。
その他にも新井さんは、私たちではパイプを持っていない、いくつもの雑誌、その他媒体で「春のめざめ」を紹介してくれました。
私たちにとって、新井さんはまさに“女神!”。
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「打ち合わせ中の新井さん(右)、その左はローソンの盛谷さん」

そして女神といえば、「春のめざめ」の中で、主人公の少年アントンは隣に住む年上の令嬢セラフィーマの美しさに心を打たれます。彼女は貴族の娘で、昼間から何人かの男たちに囲まれ、歌を歌い、楽しげに暮らしています。そんな彼女の姿をツルゲーネフ作「初恋」の中に出てくる女主人公ジナイーダと重ね合わせ、“彼女こそ女神だ!”と、憧れを抱きます。そして、彼女のための愛の詩を創作し、彼女に手紙を送るのです・・・。
新井さんの日常については判らないのですが、仕事は良くできる、テキパキとしているのだけど、それでいて人の言うことをピシャッとやり込めない。物腰柔らかで優しいんですよね。ミーティングなどでも打つ手がなくて困っていると、「こんなことはできますか?」と案を出して助けてくれる。まさに“女神”ですねぇ!
そんな新井さんは日頃からきっと年下の男性から好かれているだろうなぁ、と思うのです。
そこで、新井さんが試写を見る前に「きっと新井さんはこの作品を気に入ってくれますよ」と言ったのですが。
さてどうだったのでしょうか?回答は「どうして私が気に入ると思ったのですか?」とはぐらかされて、聞いていないような気がします。




第17回 パーシャ派? セラフィーマ派?(2007.02.07)

「春のめざめ」の作品内容を検討している頃、ある日、スタジオジブリのYくんが作品に登場する二人の女性についてこんなことを言い出しました。
「パーシャは、アントンの家に住み込みで働く女中。貧しい孤児であり、字も読めない。アントンに恋心を抱いていて、何かと彼の世話を焼くので、アントンも彼女と結ばれることを夢見るようになる。しかし、アントンにとってパーシャはその気になれば手に入れることができる存在。二人の力関係としては、アントンが主人となって彼女を保護する立場になる。
一方でセラフィーマは、10歳近く年上の美しい貴族の娘。アントンにとっては高嶺の花の存在であり、アントンは彼女を女神と崇め、彼女の前にひれ伏す。彼が書いて歌う詩の中で言っているが、彼女のために身も心もささげるという態度で彼女にのぞんでいる。
アントンは二人の女性の間を揺れ動き両方にアプローチしているが、男は誰しも心の中に、女性を支配したい欲求と女性に支配されたい欲求を持っている。アントンの場合、その両方の欲求をたまたま同時に身近に現れた、好対照のタイプの女性、パーシャとセラフィーマにぶつけたのだ。」
なるほど鋭い分析だと思いながら、さらに会話を続けました。
「それでYくんはどっちのタイプが好きなの?」
「ぼくはセラフィーマですねぇ。」
「Nくんはどっち?」
「ぼくは絶対パーシャですよ。」
それから、Yくんとその場にいたNくんの、パーシャとセラフィーマのどっちがいい論争が続きましたが、しばらくして判りました。
Yくんの奥さんは体も小さく童顔で守ってあげたいタイプなんですね。そのYくんは逆のタイプのセラフィーマが好きだと。
一方、Nくんは奥さんと付き合うようになってから洋服、持ち物など奥さん好みに変えられた話は有名で、夫婦間では奥さんの意見が強いんです。ゆえに(?)、守ってあげたくなるパーシャが好きなんですねぇ。
つまり、二人ともないものねだりをしているのです。Yくんの分析のとおり二つの欲求があるとしても、両方はかなえられないんですね、現実の世界では。




第18回 いい女の定義とは?(2007.02.08)

スタジオジブリでは、毎月10日に小冊子「熱風」を発行しています。内容、常設書店等についてはジブリ出版部のサイトをご覧ください。この「熱風」2月号で「春のめざめ」が特集されます。映画監督の大林宣彦さん、作家のあさのあつこさん、俳優の香川照之さん、字幕翻訳の児島宏子さんが文章を寄せてくれています。是非お読みください。2月10日発行です。
その中で、あさのあつこさんが女性の立場から「春のめざめ」をひも解いてくれています。

不思議な世界だった。
相反するものが、混ざり合い、融け合う。混ざり合い、溶け合ったはずのものが突然、裂け、千切れ、散り散りに分かれていく。幻想と現実、精神と肉体、理想と俗心、男と女・・・・・一つの映画に、一つのシーンに、一人の少年の内に、同時に存在する。

といった映画の内容の本質をついた話もあれば、ご自身の少女期の心のうちについても語ってくれています。そして、パーシャやセラフィーマについての寸評も。

だけど、やはり一等好きなのはパーシャなのだ。彼女の現実を生き抜く逞しさと一途さとはかなさがいい。軽くはないだろう人生の荷物を背負いながら、歌を歌い、恋をして、生きる。

セラフィーマは謎だ。美しい謎。アントンを翻弄するようでいて、「わたしを愛してくださる」と縋ってくる。凛としているかと思えば、脆く崩れていく。
たまんないだろうなぁ。

さらに、こんな粋な話も書いてくれました。

以前、悪友数人と喫茶店でケーキセットをぱくつきながら、しゃべったことがある。
「いい女の定義って、なによ」
「顔と頭とスタイルがいいこと」
「食べても太らない体質の人・・・・・うらやましい」
「それは、あんたの理想じゃが」
「男に依存しないでも生きていけるってやつじゃないかな。なあ、そっちのミルフィーユ、おいしい?」
好き勝手な意見が飛び交ったが、その内の一人が黒ゴマプリンを口に運びながら、ぼそりと言った。
「自分よりずっと年下の男を夢中にさせる女」
フォークやスプーンを持った手を止めて、しばし、わたしたちは顔を見合わせた。黒ゴマプリンを除いて、みんな、なるほどという表情をしていた。

あさのあつこさんは、3月4日、三鷹芸術文化センターで開催される三鷹の森アニメフェスタ2007の第2部で、「春のめざめ」の上映に引き続くトークショーに出演していただきます。そこでも、「春のめざめ」の感想から、思春期の頃の話や大人の女性について、恋愛について、いろいろ聞けると思います。詳しくは、こちら




第19回 阿部サダヲさん アニメフェスタ出演決定!(2007.02.09)

3月4日開催の三鷹の森アニメフェスタ2007第2部 トークショーに、俳優の阿部サダヲさんが出演してくれることになりました。
阿部さんは、先月放映された「世界ウルルン滞在記」(TBS系)で、チェコへ行って本場の人形アニメーションを学び自ら制作されていました。俳優さんだけに人形の動きのとらえ方とかお上手で、とても面白く拝見しました。ジブリ美術館の社員の間でとても評判がよかった番組で、録画したビデオが回覧されるほどでした。
そこで、阿部さんならば「春のめざめ」のようなアート系のアニメーションに興味があるのではないかと、今回のトークショーにお声をかけさせていただいたのです。
マネージャーさんの話では、ご本人が「春のめざめ」を見てとても面白かったから、と言って引き受けてくれたそうです。ありがたい話です。
これで、女性の立場から作家のあさのあつこさんに、男性の立場から阿部さんに、「春のめざめ」を題材に恋愛や思春期についてそれぞれ話してもらえるので、きっと楽しいトークショーになると思います。ぜひお楽しみに!
阿部さんが出演されることになってたいへん喜んだのが、宮崎吾朗監督でした。吾朗さんはゲド戦記の監督日誌でも書いていましたが、阿部さんが参加している「グループ魂」のファンです。ゲド戦記制作中は、グループ魂のCDを聞きながら仕事をしていました。お気に入りは「モテる努力をしないでモテたい!」。
それで吾朗さんが「阿部さんが来たらCDにサインをもらうんだ」と息巻いていましたので、先日マネージャーさんとの打ち合わせの折に事前にお願いしておきました(笑)。

なお、三鷹の森アニメフェスタ2007は抽選でのご招待となります。詳細はジブリ美術館ホームページをご確認ください。




第20回 ご縁を生かして!(2007.02.13)

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーは映画配給とDVD発売の二本柱で活動していきます。映画はシネマ・アンジェリカで上映、DVDはブエナビスタから発売になります。映画の第一弾は「春のめざめ」3月17日公開、DVDは「王と鳥」4月4日発売です。改めましてよろしくお願いします。
さて、世界のアニメーションの数々を紹介している劇場がないわけではありません。またDVDシリーズになっているものも既に存在しています。名作と呼ばれるものはほとんど過去に紹介されていると思います。
それでは、なぜ三鷹の森ジブリ美術館があえてライブラリー活動をやるのか?
理由は色々あるのですが、一つは、高畑勲・宮崎駿両監督を慕ってきてくれる同じ志を持った仲間たちの作品を紹介していきたいということがあります。
数年前にスタジオジブリが中心になって公開したフランスのミシェル・オスロー監督作品「キリクと魔女」という作品があります。この作品はフランスでは大ヒットだったのに、日本ではこれを配給しようとする会社がありませんでした。そこで、高畑勲監督の肝いりでスタジオジブリが日本に紹介したという経緯がありました。
ジブリ美術館には、両監督を慕う世界のアニメーター、アニメーション監督が多数やってきてくれます。昔から親交のあるロシア・アニメーションの巨匠ユーリー・ノルシュテイン監督やピクサーのジョン・ラセター監督は何度も来てくれていますし、彼らはイベントにも協力してくれました。そして、彼らに紹介されたり、噂を聞きつけたさまざまなクリエーターたちが来日の折に訪れて下さいました。ウォレスとグルミットのニック・パーク監督、Mr.インクレディブルのブラッド・バード監督、映画界からは、スティーブン・スピルバーグ監督もご家族と遊びにいらして、愉しいひと時を過ごされました。そうしたネットワークは大切にしたいと思います。
映画配給第一弾となる「春のめざめ」も、監督のペトロフさんがジブリ美術館設立当初から何かとお世話になっているノルシュテイン監督のお弟子さんというご縁で、この作品の日本公開についてご相談を受けたことから、話が始まりました。
高畑・宮崎両監督を慕ってきてくれる仲間たちの作品をより多くの人に紹介したい、広く見てもらうためのお手伝いをしたい。これが三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの活動目的の一つなのです。




第21回 お客様は来るのだろうか?(2007.02.14)

昨日の続きで恐縮ですが、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーのもう一つの狙いとしては、高畑勲・宮崎駿両監督が影響を受けた作品など彼らの認める新旧の作品を多くの人に観てもらいたいという思いがあります。
昨年夏、ポール・グリモー監督の「王と鳥」という数十年前の作品をスタジオジブリ提供で公開しました。この作品は宮崎駿監督や高畑勲監督が若き日に観て多大な影響を受けた作品で、ついたコピーが「ジブリの原点」。
この企画が持ち上がったときは、古い作品でありDVDにもなっているので、今更映画館に足を運んでみてくれるお客様は数が知れているだろうと言われていました。この時もシネマ・アンジェリカにお願いして単館での興行でした。シネマ・アンジェリカは104席、1日5回の上映。「一体一日何人のお客さまが来るんだろう?」「お客のいない回があったらどうしよう」と、担当者は気を揉んでいました。
しかし実際に公開してみると連日満員が続き、上映期間も延長されて8週間の興行となりました。いまでも地方都市で興行が続いています。良い作品であれば旧作であってもお客様は見に来てくれる、本物であれば評価してもらえる、そんな自信を深める出来事でした。
今回の併映作品「岸辺のふたり」も2000年の作品ですが、宮崎監督が絶賛し、高畑監督が21世紀に入って5年間で最も優れた短編アニメーション作品に推す作品です。わずか8分のアニメーションですが、見る人の魂を揺さぶるような素晴らしい作品です。こうした作品を紹介できるのもライブラリー活動の楽しみなのです。
さらにもう一つライブラリーの目的をあげるならば、既に行われているアート系のアニメーションの劇場公開やDVDシリーズはアニメーションファンに向けたものという色合いが強いと思います。私たちはそうしたファン向けというよりも、それをより多くの一般の方々に届けたいと思っていることがあげられます。
いまTVからは毎日数多くのアニメーションが流されています。しかし一方で、一般には目に触れられることのない作品の中に良いものが多数存在しています。高畑・宮崎両監督と同じように、子供たちに良質なアニメーションを見せようという強い思いで、労力を惜しまずに作られた力作が存在します。これらをアニメーションファンだけのものにするのではなく、多くの人に見て欲しい。
ジブリ美術館には開館以来5年間で350万人の方が訪れてくれました。そうした方々に、ジブリ作品とは一味違う素晴らしい作品があることを知ってもらい、その内の何パーセントかの人に興味を持ってもらえたら、ジブリ美術館がライブラリー活動をやる意義があるのではないかと思うのです。




第22回 バレンタインデー 美術館の内と外(2007.02.15)

昨日はバレンタインデー。ジブリ美術館は普段よりもカップルのお客様の比率が高い一日でした。カップル客の特徴は、ゆったり、まったり!
「これ本当に宮崎駿が描いたのかな?」
「すごいねぇ!」
展示を一つ一つ指差しては楽しげに会話する二人の歩みはまさに牛歩戦術。スタッフたちは展示室内が詰まってしまって困っていました。そんなスタッフたちの思いにはお構いなく、二人の世界があちらにも、こちらにも、そしてそこにも。
「春のめざめ」原画展のあるギャラリーもカップルでいっぱい。飾られた原画の一つ一つを前にして、
「きれいな絵だね。」
「指で描いているらしいよ。」
「これが本当に動くの?」
「どうやって動くのだろう?」
幸せいっぱいのカップルたちは、どんなものを前にしても会話が弾むのでした。そして、「こんな日は、仕事ではなくお客として来たい!」ある女性スタッフの呟きでした。

その頃バックヤードでは、愛にあふれる館内の雰囲気をよそに、パソコンにひたすらデータを打ち込む女性たちがいました。
三鷹の森アニメフェスタ2007」の応募が13日で締め切られ、昨日は到着したハガキの山を申し込み区分別に分類し、当選者の抽選が行われました。そして、総務の女性3人は当選者への招待状送付のためのデータを入力していたのです。営業中ですから通常の業務をしながら、しかも昨日はゲストのお客様も多く来館されその対応もあった中での作業でしたので、短時間で終わらせようと必死の形相で打ち込んでいました。扉の向こうの館内はゆったりと華やいだ時間が流れているのに・・・(笑)。
おかげさまで多数のご応募をいただきました。第2部「春のめざめ」上映会並びにトークショーの倍率が特に高かったようです。
今回は「春のめざめ」が一般公開に先駆けての上映ですし、人気のお二人 作家あさのあつこさんと俳優の阿部サダヲさんのトークも聞けますので、当選された方は本当に運がいいと思います。当日を楽しみにしてください。
そして、残念ながら当選されなかった方々、「春のめざめ」は3月17日公開です。ぜひ渋谷マークシティすぐそばの「シネマ・アンジェリカ」にお越しください。




第23回 あれから1ヶ月(2007.02.16)

1月16日に記者発表してから1ヶ月がたちました。この1ヶ月間はいろいろあったのでもっと昔のことのように感じます。
今振り返れば、記者発表はむさ苦しい男どもしか登壇しないものでした。ゆえにマスコミの注目を浴びないだろうと事前予想していました。しかし、おかげさまで会場は満席になり、翌日のテレビ、新聞各紙、ネットで取り上げられ、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの発足についてあちこちで報道してもらえました。とても良いスタートが切れたと思っています。
加えて、1月24日からジブリ美術館ではアレクサンドル・ペトロフ「春のめざめ」原画展を開催。こちらもペトロフ監督の驚異的なガラス絵手法に関心が集まり、毎日新聞、産経新聞が取り上げてくれたほか、多くの取材を受けました。美術館を訪れたお客様も原画の前に立ち止まり、絵の美しさと油絵が動くアニメーションに関心を寄せてくれています。

2月5日からはナチュラルローソンで試写会ご招待キャンペーンが始まりました。ローソン各店ではパンフレット付とパンフレット・ポスター付の前売鑑賞券を取り扱ってくれています。Loppi Goodsカタログ並びに店頭において、「春のめざめ」を大きく紹介してくれています。パンフレットは映画から抜き出した美しい絵 8枚を使い、一枚一枚をそのまま飾れるようになっています。額に入れれば立派な絵として飾れます。是非この機会にご購入ください。
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「これがパンフレット。裏に作品解説などが書いてあります。」

そして、ここにきて雑誌での紹介記事が出始めました。「CREA」「流行通信」「Invitation」「ぴあ」「アニメージュ」など。うれしいことに、美しい絵を生かせるカラーページに紹介されています。「CREA」では試写会への読者プレゼントが載っています。また、「流行通信」「Invitation」「アニメージュ」にはペトロフ監督インタビューが掲載されていますので、「春のめざめ」の理解を深めるのに役立つと思います。さらに「Invitation」には、ジブリの鈴木プロデューサーの連載ページ「としお写真日記」が掲載されています。ここで鈴木さんが「夢が膨らむ美術館の新事業」と題してライブラリー事業について書いてくれています。読んでみてください。
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「掲載された雑誌いろいろ。」




第24回 公開まで1ヶ月(2007.02.17)

「春のめざめ」公開はいよいよ1ヵ月後の3月17日です。ついにカウントダウンです!
これから1ヶ月は、雑誌その他で続々「春のめざめ」が紹介される予定です。見つけたらみんなに回覧してください(笑)。なお、本日発売の「美術手帖」、19日「CUT」、3月4日「MOE」にはペトロフ監督のインタビューが載ります。
そして、2月25日(日)NHK教育「新日曜美術館・アートシーン」(9時45分、再放送20時45分)で、アレクサンドル・ペトロフ「春のめざめ」原画展が取り上げられます。
ジブリ美術館のギャラリーに展示されている、撮影に使われた油絵やペトロフ監督直筆のスケッチなどが紹介されることはもとより、ペトロフ監督が美術館のアトリエに来訪された時のインタビュー、展示を制作中の宮崎吾朗監督との会話などが紹介される予定です。是非とも見てください。
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「ペトロフ監督がアトリエに来た時の吾朗さんとのツーショット」

そして、今後の予定としては、3月4日(日)三鷹の森アニメフェスタ2007において「春のめざめ」上映会&トークショー(残念ながら申し込みは既に締め切り)、3月14日(水)にはホワイトデー試写会が予定されています。こちらの試写会は、ナチュラルローソンのキャンペーン(2月19日応募締め切り)、CREAの読者プレゼント(3月7日応募締め切り)として受付中です。
また、今しばらくすると日本テレビで「春のめざめ」のCMスポットが流れる予定です。楽しみにお待ちください。




第25回 二人の女性に翻弄されて(2007.02.19)

春のめざめ」は、16歳の少年アントンが同じ年頃の住み込みの娘パーシャと、隣に住む10才近く年上の美しい令嬢セラフィーマの二人の女性の間を揺れ動きながら、色々なことを経験していく物語です。
実はいま、私も二人の女性に翻弄されています。
女A「館長、この取材を受けてください。これは必要ですから必ず受けてくださいね。」
私「はい。」
女B「館長、○日の○時からミーティングを設定しましたから、これには必ず出てください。」
私「はい。」
こうして私のスケジュールは埋めつくされていくのです。その二人とは、広報の田村さんと学芸の内野さん。田村さんは「ゲド戦記」のクモさまのモデルとして知る人ぞ知る女性です。「ゲド戦記」の中で、クモは主人公アレンの魂を手中に入れて、アレンを自分の思うとおりに操るのですが、田村さんも私を手のひらの上で転がすごとくあれやこれやと操るのです。
内野さんは「春のめざめ」の担当者。どんな忙しい時も逃げない頑張り屋さんです。そして、こうと決めたらテコでも動かぬような頑固な一面も持っていて、それゆえに彼女に予定を入れられた決まりです。
そんな二人が、雑誌の取材を受けました。私たちは裏方ですからと嫌がる二人でしたが、そこで一言。「これは仕事だから!」

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「取材を受けている田村さん(左)と内野さん(右)」

田村さんと内野さんの二人は本当に良く働いてくれます。何かやる時の仕切りの良さ、昼夜を問わぬ働きぶりに感謝しています。彼女たちのおかげで「春のめざめ」は公開に向けて順調に準備が進んでいます。

春のめざめ」公開まで、あと26日




第26回 女性の元気なところは大丈夫!(2007.02.20)

今日は、稲城市・小金井市・狛江市・調布市・三鷹市の商工会女性部会のお招きで、三鷹産業プラザで講演なぞというものをやってまいりました。女性部会の役員の方々50名ほどの集まりでした。講演なんてめったにないことで不慣れなのに、話し始めるや否や、私の心臓をドギマギさせることが相次いで起こりました。
まず、話し始めて1分も立たないうちに、一人の女性から突然声があがりました。「声が割れて聞きづらいです。」
私もそう感じていたのですが、マイクが悪いんだろうと思っていました。それで、そんなことを私に言われても・・・という顔をしていたら、「マイクを離してしゃべったらいいんじゃないですか。」と突っ込まれてしまいました。
ついついカラオケのように手にマイクを持って口を近づけて話していたのですね。ご指摘のとおりマイクから口を離して事なきを得ました。
そして、まず自己紹介から話を始めました。少々時間をかけて館長に就任した経緯などを話した上で、「ここまでお聞きになって、こんなつまらない奴の話は別に聞きたくないとお思いの方は今のうちに帰ってください。ここから先は話がつまらなくても席は立てませんよ。」と言ったんです。
当然、冗談のつもりだったのに、一人の方が本当に席を立って出て行ったんです。少し間はありましたが、それが視界に入ったとき「えっ!」と心の中で叫びましたね。さすがにびっくりしました。
動じた素振りは見せず話を続けていると、暫くしてその方は席に戻ってきてくれたので、何か用事があったのでしょう。よかったです!
そんなスリリングな滑り出しで始まった話も、何とか持ち時間どおりに話し終えることができ、最後は皆さんの暖かい拍手を頂戴できました。安堵しました。
講演後の懇親会では、「ジブリ美術館はスタジオのある小金井ではなく、なぜ三鷹に行ったんだ」「ジブリという言葉の意味は何か?」などなど、ご意見・ご質問を次々にいただきました。女性パワー炸裂です。
席上、どなたかが「女性が元気なところは大丈夫!」とおっしゃっていましたが、今日お会いした5市の商工会はどこも大丈夫そうでした。

「春のめざめ」公開まで あと25日




第27回 腹へったよ~!(2007.02.21)

実は来週一週間、海外出張いたします。まず、ロンドンへ行って、「春のめざめ」の併映作品「岸辺のふたり」の監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィッドさんを表敬訪問し、また、夏にジブリ美術館提供作品第二弾として公開予定の「アズールとアスマール」(ミシェル・オスロー監督)の権利元の会社とミーティングを行ってきます。
その後、パリに移り、フランスで4月から公開予定のスタジオジブリ作品「ゲド戦記」のプロモーションに宮崎吾朗監督に同行して行ってきます。運がよければ、オスロー監督もプレミア上映会に招待しているので、そこでお会いできるかもしれません。
そんなわけで来週不在にするため、今週はスケジュールがびっしりです。特に今日はとんでもない一日でした。
朝一番はスタジオジブリにいました。
まず10時半から鈴木プロデューサーほかと、今夏に東京都現代美術館で開催される展覧会への企画協力体制について打ち合わせ。
11時から1時までジブリ社内の定例会議に出席。
1時から鈴木さんと橋田事務局長とカツカレーを食べながら、今夏のジブリ美術館の学芸活動・ライブラリー活動について打ち合わせをしました。
そして、2時過ぎから1時間ほどの間に、社内の2名の人とそれぞれ雑件の打ち合わせを行い、スタジオジブリを後にしました。
ジブリ美術館に移動して、3時半から1時間、雑誌の取材を受け、4時半には美術館を出て、今度は徒歩10分ほど離れたアトリエに移動。
それから7時ごろまでは、ジブリ美術館で5月から開催する次の企画展示に関するミーティングを行いました。
ミーティングが終わると、待ってましたとばかりに、会計担当者が部屋に入ってきて、来年度の事業予算の打ち合わせ。終わったころには9時近くなっていました。
やっと机に落ち着いてメールの整理をしていると、今度は美術館ライブラリーの打ち合わせが自然発生的に始り出し、ついに12時になってしまいました。
夕飯食べてないよ~。腹へったぁ~。
ということで、本日はこれにて仕事を終了させていただきます。

「春のめざめ」公開まで あと24日




第28回 初ラジオ出演(2007.02.22)

今日、初めてラジオの収録というものを経験しました。「ラジオ版 学問のすすめ」という番組で、ジブリ美術館のこと、ライブラリー事業のこと、「春のめざめ」のことについて話をしました。地方FM局で3月25日に放送される予定です。Web上でも配信されますので、機会があれば聞いてください。
ジブリ美術館が世界のアニメーション作品を紹介する事業を始めたということで、ここのところ館長である私が取材を受けることが少なからずあったのですが、ラジオは初めてです。ライターさんの取材なら、言いなおしも聞くし、語尾が曖昧でも何となく通じるので、あまり話し方に注意しないのですが、ラジオだときちんとした話し方をしなければいけないのではないか。そう思ったら直前になってやめたくなりました。
でもそういう訳にはいかないので当日は観念して臨みました。同行してくれた内野さんは前の会社でラジオ収録の立会いを何度も経験しているので余裕の表情。こちらは内心は緊張しているのに上辺だけは余裕を見せて収録スタジオのある半蔵門へと向かいました。
午後2時からの収録だったのですが、腹が減っていては声も出ないので、直前にカルビビビンバを食べて、気合を入れて臨みました。そしてスタジオに入ると・・・。
とてもテンションの高いディレクターさんがいらして、腰をかけるや否や私の氏素性について質問攻めにされました。受け答えして一通り話したら、もうグッタリ。グッタリとしたところでさあ収録です。おいおい。
収録の前に思わず聞いてしまいました。
「『学問のすすめ』という番組だけど、こんなハイテンションのやり取りでいいんですか?もう少し落ち着いた調子にしないといけないんじゃないの?」
「いや今の調子でいいですよ。普通に話してもらえば。」
「ハ~。」
まあ、そうは言っても、本番はそんなハイテンションにならずに話しましたけど。

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「収録が終わっても話し続けてました(笑)」

それにしても、ラジオのパーソナリティの方は声がいいですね。蒲田健さんという方だったんですが、惚れ惚れとする声でした。それに比べると私の声は上ずっているような話し方で、なんとも恥ずかしいです。
でも、とてもいい経験になりました。次の機会には上ずらないように気をつけます。

「春のめざめ」公開まで あと23日




第29回 飄々と手間を惜しまぬ男(2007.02.23)

2月25日(日)NHK教育「新日曜美術館アートシーン」(午前9時45分、再放送午後8時45分)で、アレクサンドル・ペトロフ「春のめざめ」原画展が取り上げられます。展示された原画はもちろん、ペトロフ監督のインタビューや「春のめざめ」の制作風景なども紹介される予定ですので是非見てください。

さて、今日は文化庁メディア芸術祭の授賞式がありました。「春のめざめ」がアニメーション部門で優秀賞を受賞したので出席してきました。残念ながら、ペトロフ監督は都合が付かず欠席だったため、電通テックの三浦啓一さんが代理で賞を受けられました。
電通テックは「春のめざめ」の製作会社の一つに名を連ね、企画段階からこの作品に関わってこられました。そして、三浦さんは「春のめざめ」のプロデューサーでもあります。
今回の劇場公開にあたっても、ロシア側との窓口となり、権利関係のことから、フィルムを取り寄せることに始まる細々としたことまで、諸事万端整えてくれました。三浦さんなくしては「春のめざめ」を私たちが配給できなかったといっても過言ではありません。
そんな三浦さんにまだ直接聞いていない疑問があります。三浦さんは、1月にペトロフ監督夫妻が来日した折に、ほぼ1週間ずっとご夫妻に付き添ってくれました。その時に感じた疑問です。
「1週間も会社のデスクに行かなくて、仕事は大丈夫だったんでしょうか?」「ロシア語は出来ないはずなのに、通訳の方がいない時に意思疎通はどうやっていたのでしょうか?」「監督が取材を受けたり、あれこれ仕事をこなしている時、一人で待たれていたけど暇だったんじゃないでしょうか?」今日も聞くのを忘れてしまいました。
三浦さんは、いつも飄々とされていて、どんなに大変なことも苦にされず、手間を惜しまずにやられます。とても真似できません。ロシア側の事情で字幕制作が遅れた時も粘り強く交渉してもらって見事に仕切ってもらい、ギリギリでスケジュールに間に合わせてもらいました。感謝しています。
今日は三浦さんの晴れ舞台。きっと制作過程からの長かった月日を思い起こしているのではないかなあと想像しました。日露の距離を越えて製作に携わってきた三浦さんの今日の心持がどうだったのかも今度聞いてみたいと思います。不覚にも今日は三浦さんの七五三姿に話題が集中してしまったので(笑)。
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「真ん中に移っているのが三浦さん」

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「祝賀会での三浦さん 授賞式ではすまし顔だったのですが、ここではニッコリ」

私は来週、「岸辺のふたり」のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィッド監督他に会うために、ロンドン、パリへと出張してまいります。可能であれば、現地からもレポートをしたいと思っています。

「春のめざめ」公開まで あと22日




第30回 トラブルメーカー?(2007.02.26)

25日、スタジオジブリ海外事業局のアルパートさんと武田さんと私の3人でロンドンへ旅立ちました。しかし、旅はトラブルの連続、出発からしてすんなりとは行きませんでした。
まず、成田空港へ向かう武田さんの携帯電話へアルパートさんからトラブル発生の第一報が入りました。アルパートさんの航空券がダブルブッキングされていて、なんと、席がない!
アルパートさんは必死に食い下がり(見ていたわけではありませんが)何とか席を用意させたようで、私たちが追いついたときにはチケットを持っていました。しかし、武田さんと私が何の問題もなくチェックインできたことに、また腹を立て始めました。アルパートさんは過去にも同じ経験があって、「いつも私だけダメ。外人だからだ。ひどい!」と言って怒っていたのでした。
そんな形で旅が始まり、何とかロンドンに着くと、今度はホテルの予約が3人のうち私の分だけがない。何度コンピューターで私の名前を探してもない。予約したのはアルパートさん。アルパートさんがコンファメーション(確認書)を見せて予約してあると主張しても、受付の女性はコンピューター上に名前がなければ無いの一点張り。またもハードネゴシエーターのアルパートさんが頑張って、一部屋用意させて無事部屋に入りましたが、受付の女性の態度に腹を立てたアルパートさんでした。
部屋に入ってもまたトラブル。パソコンが繋がらない。LANにつないでメールの送受信をしてみると、受信はできるのに送信ができない。送信したメールが次々と帰ってきてしまう。どうも強烈なセキュリティーがかかっている模様。それでは電話回線でつなごうとしたら、電話はデジタル回線になっていてアナログの発信音を感知しないので通じない。もうダメ!
武田さんと私はもうすっかりあきらめてしまいました。しかし、アルパートさんだけはあきらめません。翌朝、ホテルのE-Butlerというインターネットの係に電話をして何とかさせようとしました。しかし、係の人は風邪でお休み。午後になれば交替の者が来るから待ってくれとのこと。あきらめることなく午後の係の人を待って苦情を言うと、この人はとても有能だったらしく、ほんの1分で開通。送受信が完璧にできるようになったとのことです。
最終的には交渉して何とかするアルパートさんですが、どうもアルパートさんの行くところトラブルありとも言えるのでした。




第31回 マイケル監督のご自宅を訪問!(2007.02.27)

「岸辺のふたり」のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴッィト監督のお宅に表敬訪問しました。わざわざマイケル監督自ら自家用車でホテルまで迎えに来てくれて、お宅に向かいました。とても気さくなお父さんといった感じの方で行きの車中からとてもくだけた調子で話が弾みました。
ご自宅はロンドン郊外の瀟洒な町並みの中にありました。郊外に出るとロンドン中心部とは違って、レンガ造りの家並みと自然がマッチしたとても可愛らしくて、とても良い環境の町並みがありました。
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「マイケル監督のご自宅前」

マイケル監督の家はかわいらしいお宅で、なんと部屋の中でうさぎ1匹とハムスター2匹を飼ってらっしゃいました。
庭にはアトリエがあり、その中も拝見させてもらいました。とてもきれいに整理されたアトリエでした(私たちが訪問するので急いで片付けたと言ってましたが)。壁に張られた写真や絵の中には日本のものも少なくなく、日本に興味をお持ちなのがよく判りました。
「岸辺のふたり」ほかの絵コンテも見せてもらいましたが、とてもコンテとは思えない丁寧な線で描かれた一カット一カットの絵に感動しました。
マイケル監督は、スタジオジブリのこと、日本のことについて、車の中で、またご自宅についてからも熱心に質問されてきました。高野山にも登ったことがあるとかで、我々に合わせてというわけではなく、本当に日本好きのようです。アルパートさんにどうやって日本語を覚えたのか執拗に聞いていたのが印象的でした。
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「持参した掛け軸を手にするマイケル監督」

こちらからは、高畑、宮崎両監督が「岸辺のふたり」を大変高く評価していて、今春、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーで「岸辺のふたり」を劇場公開することになった。多くの人に見てもらえるように頑張りたいと思っていると伝えるととても喜んでくれました。
マイケル監督は一度ジブリ美術館に来ていただいてますが、今回、こちらからも訪問することができて、親交を深められる良い機会を得られたと思います。これからも彼の作品を紹介できる機会があれば是非やっていきたいと思っています。




第32回 モネ三昧の一日(2007.02.28)

今回の海外出張のきっかけは、「ゲド戦記」のフランス公開に向けた現地プロモーションでした。宮崎吾朗監督をはじめとする一行がパリへ出かけるついでに、私もついて行って、彼らのプロモーションの合間にいろいろな人に会うアポイントをとったのです。
昨晩、吾朗監督とパリで合流しました。そして、今日は吾朗監督がフランスの雑誌やテレビの取材を朝から晩まで受ける一日でした。ほぼ30分刻みで次々と取材をこなしていきます。
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「フランス・アニメ雑誌の取材を受ける吾朗監督」

その間の私はというと、3件目くらいまでは写真をとりながら一緒に聞いていたり、控え室で待っていたりしたのですが、ずっと付き合っていても暇ですから、外出することにしました。目的はいくつか美術館を見にいくこと。
「春のめざめ」は油絵が動くアニメーションです。そして、印象派の絵画のように描かれています。見る人の中には、パーシャがルノアールの描く女性のようだという人や、青を基調とした絵がモネのようだという人もいます。
そこで、モネの絵を見に行くことにしました。まず行ったところがマルモッタン美術館。印象派と呼ばれるきっかけとなった「印象-日の出」から「睡蓮」などの晩年の絵まで、モネの絵が集められた美術館です。並んだ絵を見ていくと年代ごとに変わっていくモネの絵の変遷がたどれてとても興味深かったです。
そして、何枚もの睡蓮を見ていて感じました。光の揺らめきをとらえて描こうとしたモネの絵と、ペトロフ監督の輪郭線をはっきりさせずに次々と変容していく絵が、とても似た感じを与えると。きっとモネの絵のようだといった人たちは青色の使い方もさることながら、その辺りをさして言っているに違いないと思ったのです。
睡蓮の絵は、池のふちの草木と水面に映った草木、水に浮かぶ睡蓮と水の中の濁りが、タッチを違えて描かれていて、それによって水面がまるで揺れているように見えるのです。少なくとも私にはそう見えたのです。線で描かれていない水面の揺らめきが明らかに見えるのです。
じつはペトロフ監督の絵には、1コマ1コマを見ると線がぼけていて何の物体かわからないのに、動かすと柔らかそうな毛並みをしたネコが走っている、なんていうところがあるのですが、モネの絵を見ながらそんなことを思い出しました。
どでかい睡蓮の絵の連作が展示されていることで有名なオランジェリー美術館にも行きました。こちらはとにかく圧倒されたとしか言いようがありません。しばしの間、腰を掛けて見とれていました。
入場するのに雨の中を1時間近くも外で並んだ疲れのせいもあったのですが・・・。それにしても、並んでいる間に突然雨が降り出したのは、吾朗監督が仕事をしている間に抜け出した天罰でしょうか?
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「オランジェリー美術館の睡蓮の一枚」