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対談:太田光×高畑勲 「王と鳥」と現代という時代 (1)
「王と鳥」と現代という時代。客席にいるだけではすまない、お前もこっち側のひとりになる可能性があるんだぞと思わせる作品。
太田光×高畑勲
「王と鳥」と現代という時代。客席にいるだけではすまない、お前もこっち側のひとりになる可能性があるんだぞと思わせる作品。

 完成から四半世紀の時を経て、日本で初公開されるポール・グリモー監督の長編アニメーション映画「王と鳥」。今回この作品の日本語字幕を担当した高畑勲監督と、現代の世相を鋭い視点と毒舌で切る爆笑問題・太田光さんに対談をお願いした。

 太田さんは、多忙でこの時点ではまだ作品を観ることができなかった。だが、「王と鳥」と現代社会をリンクさせた高畑監督の話に、日ごろから日本人や現代日本について感じていた疑問と重なる部分を見出した太田さんの舌鋒は、真摯かつ鋭い。ふたりの話から1980年にフランスで公開されたこの作品が2006年の今、日本で初めて映画館で公開される重要性も、より明快になった。

 本サイトに特別企画として掲載した太田さんの文章とともに、読んでいただければと思う。これは、対談後本作品を観て、書いてもらったものだ。

(撮影:落合淳一)


受動的な言葉の流行


 

司会

始めに高畑さんのほうから、「王と鳥」についての基礎知識を、初めてこの作品を観られる方への紹介も兼ねて話していただければと思うのですが。


高畑

「王と鳥」は世界というものが基本的にどうなっているか、非常に端的で明快にアニメーションで描いたものなんです。単に感情に訴える映画とはまるで違います。少し今の映画を例に考えて見ましょうか。

僕はこの頃、日本でヒットしている映画を観て、ある傾向があるんじゃないかと思っているんです。特に若い人たちは“いやぁ、泣けた”と嬉しそうに言う。要するに面白い映画、ヒットする映画というのは、“泣けるか、どうか”。それが大きな基準になっていると思うんですが、どう思いますか?


太田

僕は「世界の中心で、愛をさけぶ」を観て、片方が病気で死んじゃうとかね。そういうところに感動があるという傾向には、すごく反発があるんです。というのは実際の自分の生活とは、あまりにもかけ離れていますから。映画が描いている恋愛はすごく美しいじゃないですか。すごく美しくて醜い部分が見えにくい。相手を傷つけないし、包み込むような愛で癒してくれるし。そういう愛がないとは言わないですけれど、僕は経験したことがない。うちのカミさんとはボロクソに言い合いをして、いつも“お前はダメだ”(笑)って言われるような関係。だから、自分の恋愛には身近にそういうものがないんです。

それは映画の中のこととして処理していればいいんだけれど、若い奴らは自分の恋愛と比べて“なんで、ああならないんだ”と思っちゃう。自分の恋愛が、ニセモノだと思っちゃうところがあると思うんです。そういう美しい恋愛映画を観て、高校生とか20代の人たちが感動してね。そうすると自分の恋愛は間違っているんじゃないかと思ってしまう。女性なら映画のヒーローならここで守ってくれるのに、私の彼はちっとも守ってくれないとか。それでこの恋愛はダメだと思って、次の恋愛へと行くわけですよ。だけど僕はそういう意味でいい恋愛をしてこなかったのかもしれないですけれど、そんなわけないだろうと思っちゃう。

でも映画の恋愛を現実だと考える人はそれを許せなくなってしまうと思うんです。そのことがすごく僕は心配で。なぜ心配かと言えば、そういう恋愛のイメージを持っていると僕のような人間のことは許せないだろうなと思うから。映画の主人公みたいに、女の子をちゃんと満たしてあげることはできない、そうする自信が僕にはない。未熟な人間が許せないってことになると、僕はますますモテなくなってしまうというね(笑)。


高畑

分かります(笑)、でもね、それは未熟な他人に対してだけじゃない。そういうものと比較すると自分も許せなくなるんじゃないですかね。今の自分を許せないと言えば格好いいけど、理想の自分と違いすぎて、ありのままの姿をさらけ出せませんよね。人に向かって踏み出せなくなる。結局それによって、人とうまく関係が結べない。

太田さんは言葉の専門家だと思うんですが、僕が怖いなって思い始めたのは、言葉なんです。

まず“ムカツク”という言葉が流行り始めた。その反対語として“キモチイイ”というのもありますね。これは受動的な言葉です。“腹が立つ”とか“嫌いだ”は相手のある能動的な言葉だけれど、“ムカツク”や“キモチイイ”は自分の快・不快を言うだけで、もう相手はいらない。すごく受身です。


太田

自分だけの気持ちですよね。


高畑

そういう言葉が一般化したというのは、今の人がそれを好んでいるということでしょう。元々日本では相手の心を汲み取って読まなくちゃいけない、という文化ですよね。海外では自分から言わないとわからないから、自分の意思を伝える訓練を子供のときからやる。でも日本では子供が泣いていると、“どうして泣いているの?”と聴いてくれる。子供は不満があったら拗ねて泣いて見せればいい。その態度から相手が心を汲み取ってくれるんです。今は、お互い汲み取る力がすごく減ってるのに、その汲み取ってくれ、というのが極端な形になって来た気がします。


太田

自分から相手に何かを伝えようとしても、受け入れてもらえない状況もあると思うんですよ。例えば数年前、栃木で仲間にリンチを受けて殺された少年の事件があったんです。彼は山に穴を掘ってそこに埋められたんですけれど、確か捕まった犯人の証言でね。殺される少年は自分が埋められる穴を掘っているのを見て、最後に“生きたまま埋めるのかな……、残酷だな”と言ったというんです。

これって、よく考えると独り言の感想でしょう。本来なら“殺さないで”と相手に命乞いをするはずなのに、自分に向ってしゃべっている。これは僕の想像ですけれども、もうこいつらに言葉は通じないだろうなという諦めが彼の中にあって、独り言を言うしかなかったんじゃないかと。その独り言を相手に汲み取って欲しい。

そこまで言葉が通じなくなっているのかと思いました。そうすると相手に向って言うことが、非常に怖いというかね。要するに信頼できるのは自分の気持ちだけで、それを言って相手に感じ取ってもらうということしか出来なくなっているんじゃないかと思うんです。

僕なんかもTVでいろいろ言うと還ってくるのは“太田、殺す”とか、ものすごい憎しみだったりしますから。その反応は怖いんですけれど、僕なんかは図々しいから“うるせいや”って言えるんですけれど。そこで傷つく人は何も言えなくなってしまいますよね。


高畑

太田さんを見習って自分もやろうということにはならないんですね。それはこれも今流行りの“癒されたい”ということと関係がありそうです。恋愛映画やファンタジーの世界に、自分が入り込んで体感して“癒され”る。

それと同じように自分では言えないことを太田さんが言ってくれる。自分の代わりをしてくれるということで、これもひとつの癒しかもしれない。ただそれがひとつ間違うと“太田、殺す”になってしまう可能性は充分にあるわけですね。


太田

そうなんです。もし今、日本人が言葉に対する信頼、自分の気持ちを言葉にして伝えることに絶望しているとすれば、思い上がりだと知りつつも、それは俺のせいだと思っちゃうんです。

結局、僕がなぜ言葉に対して今の人のように思わなかったかというと、僕が小さい頃にTVで観ていた芸人たちはちゃんと言葉は伝わるんだと証明できていたからなんですね。そういうことが楽しいことで、自分もそういう人間になりたいと思ったし、それを信頼できた。でも今の子供たちがTVで僕のやっていることを観て、そう思えていないというのは僕らの表現不足というか……。小泉首相なんかはそれが顕著で、ものすごく断片的に言葉を使って、表現力なんてこの程度でいいんだと証明しちゃっているようなものでしょう?


高畑

小泉首相が“感動した”と言っても、それは何も表現していないことと同じでしょう。にもかかわらず、その言葉が人々に訴えかけるのは、日本人は心が大好きな国民だからだと思うんです。日本人は、どうも感情だけが問題になるんですね。これがフランスだと違うんです。

前に僕の作品をフランスの子供たちに観てもらって、感想を聞きましょうとなったらね、これが感想じゃないんです。皆、自分がどれだけこの映画を把握したかを語るんです。そこで、気がつきました。日本ではこういう場合、読書感想文という言葉がそれをよく表しているけれど、何を感じたか、感動したかを問うている。でも感動というのは、あっという間に雲散霧消してしまう感情を表現しているだけですよね。知的、理性的に何かを掴んだかどうかはあまり問われないんです。




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第一回「王様日誌」
天野ひろゆき
(キャイ~ン)

「王と鳥」は色んな意味ですごい映画だ

映像特典予告編

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