本棚より[季刊トライホークス 2017年50号]


世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。

みつばちさんと花のたね

作...アリソン・ジェイ 文...蜂飼耳 徳間書店 1,700円(税抜)
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 ある雨の日、びしょぬれの"みつばち"がデイジーのところにやってきました。さとう水をごちそうし、濡れたからだをドライヤーで乾かすと、みつばちは元気になりました。それからデイジーとみつばちはいつも一緒。みつばちはぐんぐん大きくなって、ある時デイジーを背中にのせて野原をめざして飛び立ちました。

 この本の作者アリソン・ジェイさんが絵を担当した『くるみわりにんぎょう』(徳間書店)は、2014年度の美術館企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展」のきっかけを作った絵本です。宮崎駿監督がこの絵本に出会わなければ、企画展示の実現はありませんでした。そして、今年の6月に刊行された『みつばちさんと花のたね』を読んだ宮崎監督はこの本を気に入り、「なんて愛らしいみつばち!! みどり色がとても美しい絵本です......」というコメントを書いてくれました。

 日本版の絵本では文章がつけられていますが、原作は文字のない絵だけの絵本です。丸い顔に黄色と茶色のふわっとしたからだのみつばち。デイジーと自転車で出かけたり、お茶を飲んだり......。見ているだけで幸せな気持になります。さらに、建物の窓にはそこで暮らす人びとがいて、通りを行く人、車、鳥や葉っぱまで丁寧に描かれているので、階層ごとにのぞいていく楽しさや、他でもお話が生まれてきそう気配を感じます。

 やさしい色使いで世界が創られ、絵のすみずみまでじっくりと見て、読む楽しさにあふれている本です。

魔女がいっぱい

著者...ロアルド・ダール 絵...クェンティン・ブレイク 訳者...清水達也 鶴見敏 評論社 1,300円
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 意地悪でどぎつい表現や展開に驚きつつ、引きこまれてしまう物語ってありませんか。本作も読後の印象が強烈なため、好き嫌いが分かれそうですが、時間を忘れて読んでしまう本だと思います。

 それは、夏休みにおばあちゃんと訪れたホテルでのことでした。少年は〝素敵なご婦人たちの集まり〞に見せかけた魔女の集会に迷い込んでしまいました。仮面をはずした魔女たちは、爪はまがり顔は腐りとても醜い姿をしています。この日は大魔女から魔女たちへ、イギリス中の子どもたちをネズミ化する計画が発表されました。全てを聞いていた少年は、魔女たちに見つかってしまいます。

 魔女軍団に囲まれ、ネズミの姿に変えられてしまった少年の状況は、ホラー作品のように恐ろしく、空想物語でありながら現実的な設定が不気味さをかきたてます。恐くて先を読めない子どももいるでしょうが、逆に怖いもの見たさでやめられなくなる子どももいると思います。魔女の言葉づかいやネズミに変えられた金持ちブルーノくんなどなど、こっけいでユーモラスな描写もたくさんありますが、ダールの語り口は少し残酷で、独特のブラックさが漂います。紫で描かれたクェンティン・ブレイクの挿絵もそんなお話にぴったりです。

 おばあちゃんと少年は魔女たちに反撃することにしますが、さてどうなることでしょう。ページをめくる手が止まらなくなり、最後まで楽しいのですが、予定調和を想像していると裏切られるので、ご注意ください。

季刊トライホークス 50号(内容紹介)

「季刊トライホークス」は、図書閲覧室で3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。

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