2011年5月【番外編】新人スタッフ5人長野県レポート


初めに、島津さんによるレポートです。
「オープン以来ずっとお出ししているメニュー、『あこがれのフルーツサンド』に使用する黄桃を作って頂いている松田さんの家に到着。早速、畑に案内してもらい、御歳85歳になる松田さんが説明をして下さいました。桃の木は、4月に小さい濃いピンクのお花を咲かせ、6月上旬にかけて、1本の木に300~400個の実がなるそうです。これからその実に1つ1つ手作業で袋を付ける作業が待っていると知り、その果てしない作業にとても驚きました。今はまだ、500円玉くらいの小さな黄緑の実でしたが、しっかりと桃の香りがしました。今年も美味しい桃ができますように。桃の美味しい匂いに触発されてか、お腹が空いてしまった私達は、干し柿や野沢菜の漬け物など松田さん手作りの美味しいおやつをお腹いっぱい頂きました。続いて、主にキャベツをお願いしている小林さんの仕事場へ行きました。畑には綺麗に並んだキャベツがいっぱいでした。カフェでは、7月後半~11月まで小林さんのキャベツにお世話になります。今の時期のキャベツは葉っぱが柔らかく美味しいので、すぐ虫が食べてしまうそうです。人も虫も美味しいものには目がないようです。どうかどうか、虫にも負けず立派で大きなキャベツに育ちますように。
110708a.jpg
<これがキャベツ畑です。これから結球していきます。>
小林さんは、野菜の出荷だけではなく、オーガニックの野菜を、収穫してから乾燥させて粉末にするまで、自分の工場で加工してお店での販売も始められたそうです。そこで活躍するのが、新しく導入された『電気の乾燥庫』!かぼちゃやキャベツ等の野菜を機械に入れると、かぼちゃなら15時間もすればカラカラに乾燥します。その後、別の機械で粉末にし、お菓子や料理に使用するそうです。実際にここでは、野菜の粉末を使った、キャベツと人参の手作りシフォンケーキを頂きました。」


その後、美術館内の窓や天井、カフェの照明に使用しているステンドグラスを製作してくださった八田さんの工房へ。こちらは澤さんによるレポートです。

「外はあいにく雨が強く降っていましたが、工房の中は、窓から光が射し込んで明るいお部屋でした。そこには八田さんの作品がずらりと並んでおり、みんな揃って、「うわぁ~。」と思わず感嘆。この部屋では下絵をガラスの下に敷いてガラスをカットする作業を行うそうで、私たちも体験させて頂けることになりました。薄いガラスにカッターのような刃を押し当てて、すーっとなぞります。ガラスを持って折るように割ると、なぞった通りの形にカットされるのですが、これがなかなか難しい。しっかり跡がつくように力を入れないとうまくカットできないのです。曲線や丸みを自由自在に操る八田さんに、体験した一同は改めて感動しました。そしてデザインを考える隣の部屋には、八田さんご夫婦が初めて製作された作品が、仲良く2つ並んで飾られていました。「いつでも初心を忘れないように飾っているんです。」と恥ずかしそうにおっしゃった八田さん。その時の笑顔がとても印象的で、お二人の温かな人柄が作品に込められているんだなぁと感じました。最後にこちらでも手作りのケーキをご馳走になり、ほっこりとした気持ちになりました。」
110708b.jpg


二日目。最初に訪問したのは、木工家具・小物作りを行っている花嶋さんの工房です。こちらは、高村さんがレポート。

「カフェの店内で使われているテーブルや子ども椅子、花器などのテーブルセットはすべて花嶋さんの作品です。オープン当時からずっと大切に使わせていただいていますが、今回の休館に合わせてこれらのお手入れもお願いしました。その為私たちがお伺いしたときも作業中で、仕事場には見慣れたセット類や子ども椅子がずらりと並びお手入れされるのを待っているようでした。仕事場には、たくさんの木材、それを加工する数台の機械、壁にはいろんな種類のカンナが収納されていました。カンナは様々な大きさのものがありましたが用途によって使い分けるそうです。カンナの手入れをするためのカンナもあるのだとか。そして花嶋さんは、私たちの目の前で実際に使って見せて下さいました。面白いように薄くきれいに木が削られていく様子は、見ていて気持ちがいいくらいです。花嶋さんのご厚意で私たちも一人ずつ順番にカンナ削りを体験させていただきました。やってみると力の入れ方がよくわからず、思うようにいきません。簡単そうに見えましたが、道具を使いこなす熟練の職人技があってこそだと思いました。普段中々出来ない体験をして盛り上がる私たちに「みなさん楽しい方々ですね。」と微笑む花嶋さん。私たちはこの場所で一つ一つ丁寧に作り上げられたテーブルたちを、これから先もずっと愛情を注ぎ大切に使い続けていきたいと思いました。
110708c.jpg
それから、『野っぱらのクリームソーダ』ができるきっかけとなった場所へ。こちらもフルーツサンド同様に、オープンからお出ししている人気のお飲みものの1つです。麦わらぼうしのクリームソーダは緑色のソーダではなく青いソーダに真っ白なミルクのアイスクリームがのっています。向かう途中の車から見える景色には、立派な富士山も見え、期待に胸を膨らませます。林の茂った細い道を通り抜けると、そこには広大な野っぱらが広がっていました。車から降りて、走り回るスタッフや虫と戯れるスタッフ、はたまたトランペットを吹き始めるスタッフもおり、それぞれに野っぱらを楽しみました。天気も昨夜が大雨だったので心配していましたが、白い雲の切れ間から綺麗な青空が。クリームソーダと同じ色合いの空を目の当たりにし、野っぱらにごろんと寝転がって同じ色の景色を眺めるのでした。」
110708d.jpg


次に農家の立野さんの畑に伺いました。スタッフ岩崎さんがレポートします。

「今はカブやレタス、キャベツ、トマトなどが畑にあり、季節に合わせて旬な野菜を作っているそうです。伺ったときには一緒に作業をされている方々がいらっしゃいましたが、始めは野菜の収穫から梱包まで一人で作業をされていたそう。その頃は自宅に帰らず、畑にある建屋の中で毎日寝泊まりして作業をしていたこともあるのだとか。当時の話を聞いている私達に、「だた種を蒔いて、収穫するだけなんですけどね。」とおっしゃる立野さん。そんな立野さんの畑は、温かい優しさが伝わってくる畑でした。ちなみに、畑の周りにはヤギがいたり鶏の小屋もあったりして、動物好きのスタッフはヤギと触れ合ったりして楽しんでいました。」
110708e.jpg
スタッフの質問に丁寧に答えてくださる立野さん。


そして最後に、早川さんの畑を訪問しました。スタッフ多田さんのレポート。

「最初に目についたのは黒と白のコントラストが美しい、マルチ張りというビニールで土を覆ったレタスとセロリの畑。早川さんのビニールのマルチは黒と白のリバーシブルになっていて、色によって表面に当たる温度が異なり、土の温度にも差が生じるようです。そのため野菜の成長や季節によって色を使い分けるそうです。畑の敵はやはり虫。中でも夜盗虫(ヨトウムシ)が多いとの事。ヨトウムシとは昼間は土の中に隠れており、夜になると出てきて野菜を食べてしまう虫のことで、キャベツやレタス等はヨトウムシに少しでも中心の部分を食べられてしまっていると、次々に周りに広がってしまう為、廃棄処分になるそうです。最後に、私達は早川さんのご好意でレタスと大根の収穫体験をさせていただきました。とても新鮮なレタスをその場でいただき、その美味しさからヨトウムシが好んで食べてしまう気持ちに同感し複雑な気持ちになる一同なのでした。」
110708f.jpg
レタスの畑。コントラストがまぶしい。

みなさん、本当に貴重な時間をどうもありがとうございました!


今回の体験を通して、農家さんやステンドグラスやテーブルなどの作家さんなど、美術館を一緒に作ってくださっている方々の強い想いと温かい気持ちによって、カフェが大きく支えられていると感じたそうです。
新人5人はその想いをしっかり受け取り、自分たちなりにお客様に伝えていけたら、と笑顔でしめくくっていました。