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プロダクションノート

アニメーションの巨匠たちの青春

 脚本は宮崎駿、演出は高畑勲、キャラクターデザインは小田部羊一、そして作画監督には3人の大先輩である大塚康生も参加。
 クレジットを見ると若き日の保田道世や男鹿和雄も参加しています。
 まさに、スタジオジブリの原点を見るようなスタッフ陣です。

 さらに、この作品の始まりは、高畑・宮崎・小田部の三人に、実際に小さな子どもがいて、その自分たちの子供に見せる映画を作ろうということで企画されました。

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 当時は、漫画映画が製作されなくなり、アニメといえばテレビが主流となり始めた時代で、本当に子供にみせるべき良質な作品がほとんどなくなっていました。
 そんな状況に危機感を抱いていたのが、高畑や宮崎でした。こうして、子どもたちへ贈る永遠の名作が誕生したのです。

ヒロインミミ子はピッピから生まれた

note02.jpg スウェーデンの女流作家リンドグレーンの代表作「長くつ下のピッピ」。
 この作品をアニメーション化しようと、当時の高畑勲・宮崎駿・小田部羊一の3人は準備をしていました。

 なかでも宮崎は、スウェーデンのゴトランド島まで、交渉を兼ねた初の海外取材旅行にと、原作者が住む地へロケハンに出かけました。(後に宮崎は、「魔女の宅急便」をアニメーション化する際に、この島を舞台に選んでいます)。

 しかし、この企画は、最終的に原作者の許諾が得られず、断念することとなってしまいました。
 その後、3人が取り組んだのが、「パンダコパンダ」なのです。ヒロインのミミ子の髪の毛が三つ編みで逆立っている容貌や、両親がいない設定、そして何よりも天真爛漫な主人公像に明らかにピッピの姿が重なります。

パパンダはトトロの元祖!?

note03.jpg 大きな身体で悠然と構えていて、いざとなったら頼もしい。
 いつも優しくミミ子たちを見守っている。
 時には大きな口で相手を威嚇したり、真っ白な歯を見せてニッと笑う。

 そんなパパンダは、「となりのトトロ」に登場したトトロの元祖といっても過言ではありません。

 そういえば、パンちゃんもミミ子もパパンダのお腹にしっかとしがみついてます。
 トトロにしがみついたサツキとメイのように。

「パンダコパンダ 雨ふりサーカス」と「3びきのくま」の関係

note04.jpg 世界中の子供たちに親しまれている絵本、「3びきのくま」。

 高畑や宮崎は若き日、この絵本のアニメーション化を検討していました。
 しかし結局は、絵本のおもしろさを超えられないということで断念したという逸話が残っています。

 ただそのエッセンスは、「雨ふりサーカス」の冒頭に生かされました。
 無人のミミ子の家に侵入したサーカスの大人たち、そして、トラちゃんによって荒らされたパンちゃんの様子は、まんま「3びきのくま」の女の子であり、熊の子ミシュートカくんなのです。絵本を読んでから映画を見ると、また新たな発見があるかもしれません。

随所に観られる 後の作品をほうふつさせるシーン

note05.jpg パパンダの造形がトトロに似ているという点だけでなく、本編を見ていると随所に後の宮崎作品をほうふつとさせるシーンが登場します。

 パンちゃんとパパンダと一緒に自転車に乗っているシーンは、トトロの草壁一家を、洗濯物を干すシーンはハウルのお花畑での生活シーンを思い起こさせます。

 動物が乗った機関車を追いかける大人たちの車がボロボロになっていく過程はハウルの動く城が崩壊していくシーンの原型でしょうか。

 こうした宮崎駿ならではの表現方法は、若い頃すでに確立していたということも言えるのではないでしょうか。