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イントロダクション

思春期の少年が夢想する“聖”と“俗”の世界を描いた文学的作品

introduction_02.jpg 思春期の少年は女の子のことで頭がいっぱい。理想の女性を想像し、勝手な恋愛模様を夢想する。当然、性的なものにも興味を持ち、大人の世界を盗み見るようになる。しかし一方で、純粋な心を失わず自らの尺度をもって理想とし、大人たちの不条理な言動に激しく反抗する。大人の世界をいい加減で、汚らしいものと決めつけ、自らの理想のままに一途になって突っ走るのも思春期の少年の特徴だ。
主人公の少年アントンも、そんな思春期の少年。19世紀末、ロシアのとある町。16才になるアントンは、ツルゲーネフの『初恋』を読み、女主人公ジナイーダに夢中になった。そして、自分自身の恋を夢見て想像を膨らませていく。

 そんなアントンに彼の家に住み込みで働く少女パーシャが思いを寄せていた。彼女は貧乏な孤児だったが、可憐で愛らしく献身的にアントンに尽くす。アントンは「彼女となら身分の差を越えた本物の恋ができるかもしれない」と想像する。一方でアントンは隣の家に住む25才の令嬢セラフィーマに出会い、恋をする。「彼女はまさに女神だ!」と。こうして彼は年齢も境遇も違う2人の女性に向かって性急に行動を起こすのだった。

 身の回りの大人たちの俗物さを尻目に見ながら、恋愛とは神聖なものだと信じるアントン。しかし、思春期の少年が初めてする恋は、無鉄砲で身勝手。本人の真剣さとは裏腹に浅はかで危なっかしい行動がやがて様々な事件や悲劇を引き起こしていく。
そして、二人の女性の現実の姿に触れたとき・・・。アントンは、初恋を通じて“聖”と“俗”が入り混じる現実の大人の愛を体験する。