2003年11月


11月03日(月)
三連休の最終日。朝はそれほど降っていなかった雨も、午後には本降りに。

トライホークスでは、ノルシュテイン展に合わせてロシアの絵本のコーナーを準備中。新人の横田くんは本のブッカーがけを頼まれ、最初は悪戦苦闘していたが、そのうちコツをつかみ始め、最後は楽しそうにやっていた。


11月04日(火)
休館日を利用して、運営スタッフによるノルシュテイン展の最後の勉強会が行われた。作品配置を想定しての動線確認や、展示資料のまとめなど、やらなければならないことはたくさんある。それでも何とか時間内に終わらせて、あとは19日を待つのみとなったそうだ。


11月05日(水)
ノルシュテインさんが19日より開催される展示の準備作業のために来日。
三好さんは成田空港へとむかった。しかし予定よりも飛行機の到着が2 時間も遅れ、同行していた通訳さんに他の予定があったためノルシュテインさん到着前に空港を去ることに。しかし三好さん、言葉は喋れなくても笑顔でノルシュテインさんを迎え、無事都内へとご案内した。


11月06日(木)
作業のためにノルシュテインさんがアトリエに初出社。打ち合わせ後。
ノルシュテインさんは展示スタッフとお昼を一緒に食べることになった。
ノルシュテインさんは冗談好きな人で、一同楽しいランチタイムが過ごせたそうだ。しかしその一方で、作業中のノルシュテインさんはほとんど喋らずに展示制作に没頭している。その真摯な態度に身の引き締まる思いをしたスタッフも多かったようだ。


11月07日(金)
本日ノルシュテインさんは美術館の作業室で展示準備を行った。とりかかったのは1階の常設展示室に置かれるパノラマボックス「冬の日曜」。
ロシアから持ってきた切り絵素材を加工したり、背景を描きこんだり、光量を調節したりと徐々に展示作品を仕上げていった。ちなみにノルシュテインさんはロシアから持ってきたCDをかけながら作業を行う。この日は「話の話」でも挿入される「疲れた太陽」を聴いていた。


11月10日(月)
映画「ファインディング・ニモ」のプロモーションで来日していたジョン・ラセターやアンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチら制作者ご一行が美術館に来場。平均身長190センチもあろうかという男性5人組は大はしゃぎで館内を見て回った。ラセターさんは「トトロぴょんぴょん」を一番気に入ったようで、「近いうちにまた見に来るよ」と嬉しい約束をしてくれた。


11月11日(火)
展示替え休館が始まる。
ノルシュテインさんが本日から美術館トライホークスに作業場をかえて、2階渡り廊下前にはめ込む「マドンナとオオカミの子」の作業に入った。ノルシュテインさんは「この作品が一番時間がかかるだろう」と、そばにいる展示スタッフを不安にさせつつ、切り絵をどの部分に配置するかについて思案していた。また、照明を下からあてるために作品を収める木枠を切るなどの変更指示が出て、スタッフの不安は増していった。


11月12日(水)
日にちが限られているため、ノルシュテインさんは同時進行でいくつかの展示作品の作業を行うことに。この日ノルシュテインさんは「マドンナ」を作業しつつ「踊る人たち」のケースをチェックしたのだが、手違いでサイズが違っていたことが発覚。ケースに合わせて切り絵を制作していたノルシュテインさんは、怒りで顔を真っ赤にしつつも、レイアウト変更に苦心していた。


11月13日(木)
引き続き「マドンナとオオカミの子」の作業が行われた。麦電球を使って、ロウソクの明かりを表現するのにノルシュテインさんは悪戦苦闘。その様子をとある雑誌が写真取材を行ったのだが、その場は神妙な雰囲気になっていて、普通の声で会話するもはばかられ、誰もがヒソヒソ声で会話をしていた。


11月14日(金)
家具工場で働いていたというノルシュテインさんは、ノコギリやカナヅチを使った作業も難なくこなし、「マドンナとオオカミの子」が次第に完成へと近づく。ようやくケースが2階渡り廊下の前の窪みに設置されたが、正面からの明かりがセルで作った切り絵素材を照らすので、遮光カーテンをつけなければならなくなった。


11月15日(土)
ノルシュテインさんは作業場所をアトリエに移し、「アオサギとツル」のマケット制作作業に入った。
午後になってナターシャさんが来日。美術館のクリスマス装飾のために、手作りの人形をはじめとするオーナメントを山ほど持ってきてくださって、担当の石光さんと北嶋さんは歓喜の声を上げていた。


11月16日(日)
展示スタッフを除く美術館スタッフが社員旅行へ。この日のために小林さんと朗くんは買い物に行ったりイベントの進行を考えたりして準備をしていた。

ノルシュテインさんは、日曜も休むことなく美術館にて作業。この日も「アオサギとツル」「キツネとウサギ」のマケット3点、「夜のネフスキー通り」が2階の廊下を使って同時進行で進められた。


11月18日(火)
いよいよ明日はノルシュテイン展初日ということで、展示作業は大詰めを迎えていた。そんな中、宮崎館主が展示の様子を見るために来場。厳しい表情で作業をしていたノルシュテインさんも、この時ばかりは笑顔で楽しそうに館内の展示を宮崎館主に説明して回った。展示の完成度の高さに感心した宮崎館主は「まだ始まっていないけれど、この展示は成功間違い無しですね」という感想を残し、新作の作業のためジブリへと戻っていった。

深夜に、ギャラリーに置かれるマケット「夜のネフスキー大通り」が完成。
寒さの厳しいロシアの町並みがノルシュテインさんの手によって表現された作品だ。今回の展示の担当者である三好さんは、この完成品を見て愛しむように微笑み、悦に入っていたそう。その様子を側で見ていた滝口さんは、遠い世界に行ってしまった三好さんに暫く声がかけれなかったそうだ。一方、作業の遅れを心配していたノルシュテインさんは、初日前に無事予定の創作活動を終えて、友人達と祝杯をあげにいったとのこと。


11月19日(水)
ノルシュテイン展の初日。朝からマスコミ各社が来日して、展示取材を行なう。コメントを求められたノルシュテインさんは「このようなユニークな美術館で自分の展示が開かれるのは光栄なことです。子どもの視点で楽しんでください」と話してくれた。ジブリ作品以外の展示が美術館で開催されるのは初めてのことで、お客さまの様子も普段と違った。戸惑う方もいれば、興味深そうに近づいてみたり、遠くから見たりして作品を鑑賞するお客さまの姿も見られた。


11月20日(木)
ジブリの出版部から販売された「フラーニャと私」というノルシュテインさん自身による画文集がトライホークスで販売された。一方草野さんが手がけたノルシュテイン展のポストカードやポスターもショップに置かれた。初めて手がけた印刷物だったということで、出来上がったときは大感激だったとのこと。


11月21日(金)
井の頭公園は今が紅葉真っ盛り。秋田さんは開門前に落ち葉の掃除を行なったが、昨日の雨のせいで葉っぱが道にくっついてしまい、とても掃きずらかったそうだ。
10時からのお客さまの入場がひとだんらくしたところで、再度箒を持ってきて掃除をしようと思ったところ、さっき掃いたばかりなのに、入口は、すでに落ち葉だらけだったとのこと。


11月23日(日)
ノルシュテイン展パンフレット制作担当の机さんが、18時ごろに美術館にやって来た。閉館と同時に、パンフレットで使用する写真撮影を開始するためだ。撮影予定の何体かのマケットは、セルやガラスが何重にも重ねられていたり、照明に麦球が使用されていたりして、撮影が難しいものが多く、結局、机さんがカメラマンさんと美術館を出たときには、午前2時を回っていたそうだ。


11月24日(月)
18時30分から今回の企画展示「ユーリー・ノルシュテイン展」開催を記念したノルシュテインさんの講演会が土星座にて行われた。「話の話」と「霧の中のハリネズミ」の上映後、「子どものためにアニメーションができること」という内容でノルシュテインさんが講演をした。参加者は、大人はどのように子どもたちと接していくべきなのかなど、美術館の姿勢にも通ずる話題に熱心に耳を傾けていた。


11月25日(木)
休館日にノルシュテインさんが展示の最終作業をするためにジブリ美術館にやってきた。本日は主にパノラマボックス差し替え分などを制作した。同時進行で、絵コンテ室のガラスケースに弟子のターニャさんが持ってきた、ノルシュテンさんの机周りの小物や映画の素材などを配置した。その作業をしていた田坂さんは、筆代わりのスポンジを見て、「展示を作るのにこういった道具が欲しかったのか・・・」と思ったそうだ。
ノルシュテインさんは作業が終って美術館を出る時に「アリガットーゴザイマシタ」と日本語で展示スタッフに言ったとのこと。


11月26日(水)
パティオで育ったみかんが食べごろになったので、朝「ご自由にどうぞ」と、カゴいっぱいのみかんが休憩室に置かれる。しかし昼休みの時間になると2・3個を残すのみとなり、カフェの川村さんは「やっぱりね。すぐ無くなると思っていた」と呟いていた。


11月27日(木)
寒い日が続くのに半そでユニフォームで仕事をする深谷さん。女子ロッカーでは何故深谷さんが半そでなのか、という話題で持ちきりだった。
真相は、深谷さんに冬山に行く予定があるので、身体を鍛える意味もあって、我慢して半そでを着ているのだ、とのこと。


11月30日(日)
小学校6年生くらいの女の子が、ギャラリーに展示されている『外套』のエスキースを真剣に見ていた。一緒に来ていた母親や妹に「行くよ」とせかされていたが、「お母さん達もちゃんと見てごらんよ、おもしろいから」と誘い、暫く家族で一緒に見ていた。「来年から映画の上映予定があるんですよ」とスタッフが話しかけると「今度は春休みに友だちと来たいです」と嬉しいことを言ってくれた。