2003年10月


10月01日(水)
ロシア出張最終日の三好さんは、ノルシュテインさんの助手のナターシャさんとともに日本へ運ぶ原画のチャックや梱包を済ませ、準備万端。ダブルブッキングの恐れがあると聞いて早目に空港に向かい、フライト3時間前に着いたのだが、なんと飛行機は2時間遅れで、5時間も待つ羽目になる。仕方なく、見送りに来て下さったノルシュテインスタジオのスタッフのターニャさん、ナターシャさん、通訳の児島さんとおしゃべりしたりウトウトしたり、しまいには歌ったり。さらに、ベンチで向かいに座っていた日本人観光客に「どちらの国の方ですか?」と、日本語で話していてもそう聞かれてしまった三好さんであった。

カフェで新メニューが始まる。麦わらぼうしの形の「麦わらぼうしのオムライス」と、栗がたっぷり入った「ジブリの森のマロンケーキ」。喫茶室から、厨房でライスを炒めたり栗をむくスタッフの姿が見られるようになった。ちなみに栗は1日3キロも皮をむくそうだ。


10月02日(木)
結局2時間遅れで三好さんが成田に到着。あとは通関手続きをお願いしている日本通運さんの保税倉庫にロシアから運んできた原画を搬入し、税関審査通過を待つだけなのだが、先日の北海道地震への国際援助が殺到して税関が忙しく、こちらのほうまで手が回らないとのこと。美術館への作品搬入が延びる可能性も出て、またもや三好さんは呆然としたそうだ。ともあれなんとかアトリエに帰った三好さんは、恒例の甘いりんごのお菓子をお土産に振舞っていた。

美術館に駐車していた社用車のバッテリーがあがって、押しても引いても全く動かなくなってしまった。幸い開館前だったので、急遽ガソリンスタンドの方に来ていただいてバッテリーを交換することに。日ごろの管理の大切さを痛感。


10月03日(金)
ノルシュテインスタジオのナターシャさんが美術館を見学。実に興味深そうに見て回って「入り口に入ったとたんに魔法をかけられたみたい」と嬉しい感想を述べてくださった。トトロぴょんぴょんでは「涙が出そう」と大いに感激した様子。案内した三好さんによると、さすがアニメーションに関して詳しい方なので、展示物の説明はほとんどしなくてすんだそうだ。


10月04日(土)
「フラーニャとユーラ」展の展示物についてアトリエで打ち合わせ。額装の方法の変更などが三好さんから田坂さん、宍戸さんへ報告された。今の懸念事項はノルシュテインさんの描き下ろしの絵が果たして間に合うのか、ということらしい。


10月06日(月)
ナターシャさんがスタジオジブリを訪問。作業をしているスタッフの様子や書棚に入っている本などを興味深そうに眺めていた。大きな撮影台を見て「ノルシュテインのスタジオでも、こういうのが大活躍しています」とのこと。

来年の企画展のために、ジブリとも親交のあるアメリカの某アニメーションスタジオへ出張していた吾朗さん、安西さん、滝口さんが帰国。膨大な資料を漁ることとなり、想像以上に大変だったとのこと。しかし収穫はたくさんあったようだ。

今日から急に寒くなった。天気予報によると11月下旬の気候とのこと。しかし、外エリアでお客様を迎える深谷さんは、なぜか半袖姿。お客様で半袖を着ているのは、元気のいい小学生だけなのに。郎君が「がんばりますね、深谷さん」と指摘したところ、「当たり前だよ。長袖着るなんて甘いよ」と男前な返事。しかし数分後、深谷さんは空に向かって「さむいなぁ」とつぶやいていた。


10月07日(火)
アトリエでアメリカの某アニメーションの巨大な人形で遊ぶ吾朗さんを見つけた机さんは、意味もなく人形にパンチをしたところ、当たり所が悪く、逆に人形にやられていた。

ナターシャさんと三好さんがロシアから運んできた「フラーニャとユーラ」展の原画が通関手続きを終えて美術館に搬入された。


10月08日(水)
美術館収蔵庫と作業室で、田坂さんと宍戸さんと額装の業者さんが、「フラーニャとユーラ」展の原画の採寸作業を行った。田坂さんによれば、今まで写真でしか見ることができなかった絵だが、本物の迫力は想像以上で、感動したそうだ。


10月09日(木)
「フラーニャとユーラ展」の開催を記念して、ジブリ出版部から11月中旬にノルシュテインさん初の画文集が発売される。その関係で、編集スタッフの田居さん、武田さん、田村さんが美術館に原画を見に来た。今まで写真で見ていた色やイメージのギャップに一同頭を悩ましていたようだ。


10月10日(金)
「ツール・ド・信州」で着るジブリチームのジャージとパンツが完成。早速デザインを担当した吾朗さん自らが試着し、「カッコイイ」と大好評を得ていた。
しかしこれだけ派手でジブリのロゴやら美術館のエンブレムやらが入った服だと、ツール当日、休憩にコンビニとか立ち寄ったらかなり怪しまれるんではなかろうか?
「フラーニャとユーラ展」のパンフレット作成のため、机さんがカメラマンの方と美術館へ原画のチェックに。


10月13日(月)
お昼を過ぎた頃から、不気味なほどの大雨が降り出し、外には即席の池がたくさんできた。屋上とカフェテイクアウトは一時閉鎖となり、屋外のテントも崩壊寸前という状態に。そんな中、深谷さんから無線で「この雨は30分以内でやみます」との情報が入ったが、誰も信じるはずもなく、暗い空の下、働くスタッフたち。
しかし15分後、真っ青な空が広がり、深谷さんの予言は見事的中した。


10月14日(火)
美術館開館から2年もの間、バックヤードに集められていた落ち葉が搬出された。
その量はおそるべきものであったが、それを聞いた田村さんは「焼き芋がどれくらい焼けるだろう」と呑気な想像をしていたらしい。


10月15日(水)
連日夜遅くまでの仕事が続く橋田さんは、疲れきって逆によく眠れず、夢をたくさん見たのだが、覚えているのは「塩島さんと遊園地へ行って、すごく楽しかったこと」だけとのこと。それを聞いた塩島さんは「今日も1日がんばれそう」とうれしそうだった。


10月16日(木)
「フラーニャとユーラ」展のパンフレット制作のため、原画の写真撮影を行った。
原画の色や雰囲気をできるだけ忠実に表現できるよう、撮影は慎重に行われ、無事終了。パンフレット担当の机さんは、仕上がりが待ち遠しいとのこと。


10月17日(金)
自転車通勤をしている吾朗さんはどんなに寒い日でも、出勤直後は体がぽかぽかしている様子。ヘルメットを脱いだ頭にタオルを載せて事務所でくつろぐ姿を見て、小池さんが「お風呂に入っているみたい」と突っ込むと、すかさず「い~い湯だな♪」と切り返していた。


10月18日(土)
朝、出勤すると机の上にトンボの死骸を見つけた大口さん。とてもキレイな姿だったが、そのままにしておくわけにもいかず、外で葬る。それを高橋さんは「最近急に冷え込んできたからなあ」とトンボを憐れんでいた。


10月20日(月)
「フラーニャとユーラ」展に向けてのスタッフ研修として、ノルシュテイン作品の上映と解説、展示主旨等の説明があった。説明役の三好さんは、『話の話』を見て頭の中がその映像と音楽でいっぱいになり、話そうと思っていた内容を思い出すのに必死だったそうだ。


10月21日(火)
昨日に引き続き、「フラーニャとユーラ」展用スタッフ研修として、展示場所を担当する運営スタッフ向けの説明会が行われる。「歴史的な流れの説明も必要」とエジソンやリュミエール兄弟の話から始めた三好さんだが、案の定次々と時代をはしょって、早々にノルシュテイン監督が活躍した1970年代の話に移るという無計画性を見せていた。その後も田坂さんが作った資料に助けられ、話の脱線や不足分を安西さんに突っ込まれつつ、なんとか無事終えたそうだ。


10月22日(水)
「フラーニャとユーラ」展と同時期に、ジブリ出版部からはノルシュテインさんが初めて自分の作品について語る画文集「フラーニャと私」が刊行される。そこで、お互いに情報交換と意思の統一を図ろうと、展示、広報、出版の担当者が集まっての打ち合わせがもたれた。


10月23日(木)
休憩室でもノルシュテイン作品についての会話が交わされることが多く、今日は『話の話』がスタッフの間で話題に。作品の解釈などをそれぞれが話す中、以前ノルシュテインさんの講演を聞いたことがある松永さんは、その時に知ったことなどをみんなに披露したそうだ。


10月24日(金)
ノルシュテインさんの通訳の児島さんが仕事でペテルブルクに行っているため、この数日間、三好さんは日本→ペテルブルクの児島さん→モスクワのノルシュテインさんという連絡ルートを使っていた。ノルシュテインさんからダイレクトに緊急ファックスが来て、慌てたこともあったそうだが、今日児島さんが帰国し、三好さんはホッとした様子。


10月25日(土)
ノルシュテインさんからの展示物のサンプルを受け取りに、三好さんが児島さん宅へ。そのついでに、以前三好さんがノルシュテインさんに間違った書類を送ってしまったときに児島さん宅に返信ファックスされた「巨大なゲンコツをもらう三好さんの図」も受け取り、嬉しいやら情けないやらだったそうだ。


10月27日(月)
「フラーニャとユーラ」展の名称を、よりわかりやすく、ストレートに伝わるものに変えるため、先週末からずっと悩んでいた三好さんは、たくさんの案を考えたが、結局「ユーリー・ノルシュテイン展~ノルシュテインとヤールブソワの仕事~」に落ち着いた。より多くの人に、ノルシュテインさんとヤールブソワさん、二人の絵の魅力が伝わることを願うばかりだ。

10月限定季節メニューの「ジブリの森のマロンケーキ」のために一日3~5キロの栗を剥くカフェスタッフ。
シェフの佐藤さん中心に昨日と今日で今年最後の栗、15キロを全て剥き終えた。
ちなみにこの一ヶ月で剥いた栗は86キロとのこと。旬の食材と手づくりに拘りを持つ佐藤さんの「今年の分は終了!来年もまた栗剥くぞ!」との勢いに、「はい!」と答えた村上くんには、心地よい疲れが感じられた。


10月28日(火)
外壁洗浄の最終日。西側のトトロ受付回りを行なう。朝から雨だったので、担当の北嶋さんは心配したのだが、業者さんによると「雨天のほうが、汚れも落ちやすくて一石二鳥なんです」とのこと。とはいえ、10月末の寒い中、大変な作業で休憩時間もつらそうな様子。にもかかわらず、作業後「来年もよろしくお願いしま~す」と明るく去っていく彼らに「さすがプロ…」と思う北嶋さんであった。


10月29日(水)
「ノルシュテイン展」の額装作業が順調に進んでいる。担当の田坂さんによると、絵そのものでも迫力があったのだが、額に入れるとさらに雰囲気が出るとのこと。


10月30日(木)
深夜、日付が変わって石光さん30回目の誕生日となる。記念すべき瞬間を美術館で迎えた石光さんに、事務所にいたスタッフからつぎつぎとお祝いの品が渡された。しかし、それらは身の回りにあった食べ物がほとんどで、滝口さんが「賞味期限2003年03月11日」ゼリーを渡して、とどめを刺していた。それでも石光さんは大人の女性としてやさしい笑みを浮かべていた。


10月31日(金)
展示スタッフはすっかり「ノルシュテイン展」の準備にかかりっきり。三好さんのキャプション書きがなかなか進まず、間に合わないと危ぶまれていたが、田坂さん、宍戸さんのサポートでなんとか間に合いそうだ。


11月01日(土)
カフェの堀口さんと佐藤さんは、11月中旬から始まるメニュー○ ルシチに使う肉を探しに茨城県にある畜産農家へ出張した。黒毛和牛を680頭飼育しているこの牧場は、自ら牧草トウモロコシを育て、それを牛たちの餌にしているそうだ。30年前、3頭の牛からはじめという農家さんの仕事振りと誠実さに感銘をうけ、帰り道で「美味しい○ルシチ作るぞ!」と夕日に向かい決意した二人であった。