GIORNALE DEL MAMMA AIUTO!
トトロ はりこーシカ


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20161201s55.JPG12月になりました。この季節、美術館の周りの落ち葉は大豊作。集めても集めても降ってくる落ち葉に、豊かな自然に囲まれていることを実感します。
もうすぐ美術館が開館して16回目のクリスマス。今年もスタッフによる手作りの装飾で、館内が賑やかになっています。"トランスパレント"という半透明の折り紙や、色とりどりのプレゼントボックスなど...試行錯誤しながら皆で心をこめて準備しましたので隅々まで見て楽しんで頂けたら嬉しいです。
ショップの天井から下がっているアンティークランプにも、井の頭公園の森を意識した緑の飾りが施されて素敵に変身しています。 新商品も出ていますので、一年の締めくくりに、素敵な一時をお過ごしください。


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ささやかな幸せを願い、福を呼ぶ張り子細工
―――【トトロ はりこーシカ】

日本の伝統的な民芸品である張り子。
紙を重ね合わせて作る素朴な人形で、お祝いやお守り、縁起担ぎの品として、古くから親しまれてきました。
このたび、そんな張り子細工とトトロとのご縁がつながりました。
しかもすべてが大トトロの中に入ってしまうではありませんか!
もしかしてこれはマトリョーシカ......?

今回は、張り子とマトリョーシカ、そしてトトロ----
多くの縁をひとつに結んで生まれた[はりこーシカ]の
ふるさとを訪ねてみました。

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▲トトロ[はりこーシカ]...¥5,500(税別)




だるまの伝統から生まれた[はりこーシカ]

[はりこーシカ]とは、張り子細工の製作会社、株式会社 一千乃/(旧 アクティ大門屋株式会社)さんが考案したオリジナル商品です。
その[はりこーシカ]の作り手を訪ねて、群馬県高崎市の本社におじゃましました。

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▲(左)深澤浩昭さん:株式会社 一千乃/(旧 アクティ大門屋株式会社)・東日本営業統括マネージャー。(右)本島裕美さん:同社のクリエイターで、[はりこーシカ]のデザイン、製作を手がける

高崎といえば、だるまで有名なイメージがありますね。

深澤  はい、高崎は古くからだるま作りが盛んで、その生産量は
日本一としても知られています。
農家の冬の副業としてはじまったと言われていますので全国各地で生産されていますが、
高崎のように50数軒の作り手が残っているところは少なくなりました。

こちらも、最初はだるま屋さんだった、とうかがいました。
社内にもだるまはもちろん、たくさんの張り子が並んでいますね。
眺めているだけで喜ばしいような、なんだかおめでたい気分になります(笑)。

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▲アクティ大門屋さんのだるま、そして2017年の干支も製作中でした

深澤  ありがとうございます、縁起物屋をやっております(笑)。
だるま自体が幸せを願う心が形になった縁起物ですが、
うちはだるまを中心に扱う会社だったのを
社長が早い段階でそれ以外の張り子...、さまざまな縁起物の開発にシフトしたんです。

だるま屋さんから、縁起物の張り子屋さんへと転換されたわけですね。
そののち生みだされた[はりこーシカ]というのは、こちらのオリジナル商品ですか?

深澤  はい、そうです。張り子は中が空洞ですが、
そのことが発想の原点になりました。
ふとマトリョーシカとの掛け合わせを思いついて、
〝張り子のマトリョーシカ〟だから[はりこーシカ]なんです。

なるほど。一説にはマトリョーシカも子孫繁栄の意味があるとか。
縁起のよさも倍ですね。

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▲館内の常設展示室、とある棚にもマトリョーシカが

本島  マトリョーシカには、日本の入れ子のこけしがロシアに伝わって生まれたという説がありますから、
ぐるっと回って帰ってきた感じでしょうか(笑)。

マトリョーシカは同じ顔が次々でてくるのが、
親子がどことなく似ているのと同じようでユーモラスですね。
トトロとのご縁も重なり、ますます頬がゆるむ組み合わせです(笑)。

深澤  さらに幸せを運んでくれそうですよね(笑)。
我々とジブリ美術館さんとのご縁は、鯉のぼりの[はりこーシカ]をたまたま見つけていただいたのがきっかけでしたね。
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そうでした。でも筒状の鯉のぼりとはちがい
耳やしっぽなどの凹凸があるトトロの形を入れ子形式にするのは、難しい注文ではありませんでしたか?

本島  たしかに普通の入れ子のものは、
形をあまり複雑には作れないようにみえますよね。
でも〝耳や手の凹凸をつけながらもちゃんと収まる〟というのを、
いつかチャレンジしたいとずっと思っていたんです。
作業的にはちょっと大変なんですが、モチーフがトトロだしどうしてもやりたい、と(笑)。
でもやってみたらトトロの形はひっかかりもなく、ちょうど良かったです。

すっぽりと張り子が順番におさまっていますね。
ところで、内部を空洞にするのはどのような技法なのでしょうか?

深澤  トトロの[はりこーシカ]も基本的にはだるまと同じ技術でつくっているんです。
だるまの型をつくる製法の応用で、さまざまな形の張り子をつくっています。

そうなのですね。だるまはどのようにつくられるのでしょうか?

深澤  現在は少し違うのですが、むかしはだるまの木型をつくり、
その外側に張った紙を乾かして型をつくっていました。
背中を割って外側をとりだして、切れ目をニカワで貼りあわせるんです。
型ができたらニカワと胡粉(ごふん=貝の粉)を混ぜたもので全体を白く塗り、
それから赤い色をつけたり顔や装飾を描いていきます。
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▲骨董品的な風格のあるだるまの木型。その背中には表面に張った紙を割る際の刃物の跡があり使い込まれていました

深澤  ただ現在では木型に紙を張る製法ではなく、まったく異なる製法でつくられています。
昔はすべての工程を各だるま屋さんがやっていましたが、いまでは分業が普通なんです。
うちも型づくりは、ここから少し離れた別の工場にお願いしています。
これからご案内しましょう。




トトロに活かされるだるまの伝統:作り方その1

張り子の型づくりの作業を見せてもらいに、
お隣の富岡市にある、福澤だるま成型さんの工場に伺いました。
工場内にあるいくつもの水槽の水の中に、木の箱が沈められています。
いったいどんな作業をしているのでしょうか...?
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深澤  先ほど少しお話しましたように、現在では型づくりは木型不要の製法でつくっています。
おそらく昭和40~50年ころから主流になった製法で、《真空成形法》というものです。
簡単に言うと、立体に作った金網の中に、水に溶かした紙の原料を流し入れ、空気だけ吸い出すんです。

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福澤だるま成型の福澤さんは、この道30年という大ベテランです。
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▲張り子の成形を手がける福澤薫さん。20代のころに張り子作りを修行し、農業から成形業へと転換。以後、30年以上にわたり高崎の張り子作りを支えてこられた

――寒くないですか。水が冷たそうですね。

福澤  水だから冬はどうしてもね。夏はいいんだけど。冬はお湯をたいて、手を温める程度で一年中やってるよ。
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先ほど、高崎はだるまの生産量が日本でいちばん多いとお聞きしました。
年間どのくらいつくっているのですか?

福澤  年間かい? ちっちゃい張り子だけだと5万個くらいかなあ...?
うーん、大きいだるまもあるし、
そうだねえ、高崎のだるまのだいたい3〜4割かなあ(笑)。

すごいですね。日本のだるま産業の一部を支えてるといっても過言ではない...!
やはりだるま市が近づくと忙しくなるのですか?

福澤  いちばん忙しいのはこれからだよねぇ、11月、12月。
この時期からだんだん大きいだるまを作るからね。

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▲水槽から型を引き上げると、トトロの形があらわれた

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▲型からはずし、合わせ目を福澤さんがひとつひとつ均す

福澤  紙の厚みを均等にするのがポイントかな。
だるまの場合は外側から見るだけだから多少厚ぼったくても関係ないけれど、
これ(※[はりこーシカ])の場合は中にものが入るから、薄めにしないとね。

厚みはどうやって調整するんですか?

福澤  ポンプで原料を吸い上げる時間を変えて調整してるんだよ。
時間をかければ厚くなるし、早めに止めれば薄くできるわけだね。
でも吸い上げた直後は柔らかいし、型からはずしたときに自分の重みで崩れてしまわない、
ぎりぎりの厚みは必要になるね。

その力加減は、職人のカンなのですね...。

福澤  だいたい手でわかるね。
でもこれはだめだとなったらまた撹拌機に入れちゃう。
水に溶かした紙だから、再生がきくからね(笑)。

(一同笑)だるまづくりの技術が受け継がれて、
[はりこーシカ]につながり、そしてトトロが出会えたのも、だるまがつなぐご縁ですね。
これからの季節、水仕事は大変でしょうけど、どうかよろしくお願いします。

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▲ビニールハウスの中で三日ほど乾燥させる(冬場は一週間くらい)。こうして乾いたものがアクティ大門屋さんへと運ばれ仕上げられる


黙々と大量の形作りを30年も地道に続けてこられた福澤さん。
最後に、どんなときにやりがいを感じていらっしゃるかお尋ねしたところ
「そりゃあ、お祭りや市で自分が作っただるまを見ると、やっぱり嬉しくなるよ!」と豪快に笑ってくださいました。




和紙を重ねていのちを吹きこむ:作り方その2

水の中で型どられたあと、北関東のからっ風に吹かれ
陽にあたりすっかり乾いたトトロたちは、
本島さんのもとへと運ばれ、仕上げ作業が行なわれます。

和紙の色選びから一枚ずつ張り重ねる作業、
そして絵の具による繊細な表情づけ...
すべての工程が本島さんの手によるものですが、そのていねいな仕事は、
まるでトトロたちにいのちを吹きこんでいるかのようです。

本島さんがデザイン・原型を担当されただけでなく、
仕上げまで全部手でなさると聞いて驚きました。
その作業を見せていただく前にお尋ねしたいのですが、最初にこの企画をきいてどう思われましたか?

本島  そうですね...うまく言えないのですが、
トトロには、ふわふわした、なんだかさわりたくなる温かみを感じていました。
やはり張り子は手に持ってもらいたい玩具なので、
手にしたときの優しいぬくもりが、トトロの雰囲気と個性にすごく合うと思ったんです。
トトロのシルエットといい世界観といい、
張り子の持ち味にもってこい、というか...。

たしかに手にしたときにふわ、っとして、温かみと優しさを感じます。

本島  はい。張り子は〝温かみのある形〟になってしまうので、
シャープなものには向きません。
そして、「絶対にぴったりだ!」と思うのと同時に、
なんだかたいへん光栄な気持ちになりました。

特に苦労された点はどんなところでした?

本島  苦労の連続でした(笑)。
最初は何度も関連書籍を読み返してスケッチを描くところから始めました。
平面のものを立体にする作業が大変で...。
何回もスケッチを描きなおして、やっと原型のOKをいただきました。

何度も修正をお願いしてしまって...。

本島  はい(笑)。でも絵付けのラインに訂正が入ると
ぐっとトトロの顔が変わり、「あぁなるほどそういうことか!」と、
すっと腑に落ちるんです。おかげで何がちがうのか理解できるようになりました。

そうなんですね。和紙の仕上げは本島さんのアイデアですか?

本島  はい、これは《和紙張り》だな、とすぐに思いました。
うちでは《塗り》の張り子がほとんどなのですが、
トトロは絶対に《和紙張り》でいきたい、と思ったんです。

(※和紙の紙漉きについてご紹介した、バックナンバーGIORNALE DEL MAMMA AIUTO! 【和紙っこ クロスケシール】~マンマユート便り vol.9もあわせてお楽しみください)


それではそのぬくもりを生む《和紙張り》の工程をみせていただきましょう。

1:和紙を選びます。
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▲「トトロの色は、最初に近い色を選んで、いつも仕入れている和紙屋さんに相談しオリジナルで作ってもらいました。素材感が良く、柔らかい感じで。」

2:和紙を張るための糊は米粉を使用します。
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▲「これで米粉パンとかフォーなどを作れるんですよ。防腐剤入りの糊と違い手への負担がないので、素手で作業します」

3:和紙に糊を浸透させ、伸ばしながら曲面に張ります。
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▲「和紙の両面に糊をつけて重ねていきます。しばらく置いておくと糊の水分で和紙の繊維が柔らかくなり、同時に伸びが可能になる為、曲面にしわが出にくく張りやすくなるのです」

4:お腹の白い部分を張ります。
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▲「お腹の形の型紙に合わせてちぎります。そしてすでにできている体に張って乾かします」

5:目や模様に筆を入れていきます。
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▲「和紙なので絵具を吸い込むとムラが出てラインがでこぼこになりやすいので、細かい輪郭は筆で修正します」

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▲「歯を描くのは最後の楽しみですね(笑)。『トトロになった〜』という感じがすごくするので」

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▲完成~!!




ぬくもりを手から手へ...張り子は幸せを運ぶツール

和紙をていねいに張るところから、
筆の線一本まで、本島さんの愛情にあふれていますね。

本島  それは、ほんとうに心から込めています。
ひとつひとつ、和紙を張るとか、筆入れにしても。
作業工程が多いので、時間はかかってしまっているんですが......。

一体一体の作業をお一人でされているのに驚きました。

本島  そうですね。つくるのは大変ですけれど、
気持ち的にはすごく楽しくやらせてもらってます。
個人的にはジブリ作品の中ではトトロがいちばん気持ちが入り込める映画だったので、
なんだか言い表せない縁を感じているんです。
出来あがって詰め込むときは「かわいいなぁ」って嬉しくて(笑)。
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最後に全体をふさぐフタをどうしようかご相談して、
悩ませてしまったかもしれません。

本島  [はりこーシカ]の底にフタをする方法は、
じつは最初からずっと気になっていました。
迷いを抱えてもんもんと悩んでいたら
隣の席でウェブサイトを担当している竹内さんが、
「座布団がいいんじゃない?」と、良いアドバイスをくれまして。
「座布団か!」と思って試してみるとぴったり。
ジブリ美術館さんに一か八か提案させていただいたのを聞き入れてもらえたときは、嬉しかったですね。

あの座布団は、なるほど!と思いました。
座布団なら『となりのトトロ』の世界観にもあいますし、台座としても飾れますね。

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本島  張り子作業は一人ですが、その前の段階ではいつも一人じゃなくて、
たくさん相談してアイデアをしぼり出しながらやっています。
この会社自体、だるまがなかったらありませんが、
うちの社長は、いつも貪欲にたくさんの良い縁を見つけてくるんです。
私たちもほんとうに〝縁〟をすごく感じながら仕事をさせてもらっています。

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▲本島さんの席(※手前)と、お隣の席の竹内さん

そうなんですね。今回お話をお伺いして、
[トトロ はりこーシカ]はたくさんの人との出会いとつながりによって生まれた
縁起ものらしい、幸せな商品なんだと感じました。

本島  みんな笑顔になりますから。ぱっと見た瞬間にひと目で...。
なにかがお客さんにも伝わるのかなあ、そうだといいなぁ...、と思うんですよ。

出来あがりをみると「かわいい」と、自然に笑顔になりますね。
今日はなんだか〝だるまの町〟に呼ばれたような気もしました。
貴重な時間をほんとうにありがとうございました。


張り子とマトリョーシカ、そしてトトロ......
それぞれを手がける人たちの思いが結びつき、
三つもご縁が重なって生まれた[トトロ はりこーシカ]。

だれかに幸せになってもらいたい、と願い作られたそれぞれの思いが、
嬉しい暖かいおくりものに感じられました。


(2016年10月、群馬県高崎市、アクティ大門屋(現:株式会社 一千乃)にて収録)




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今回ご紹介するのは、企画展示『猫バスにのって ジブリの森へ』にちなんだ商品です。

『猫バスにのって ジブリの森へ』グッズ

... リングノート600円(税別) オリジナルポストカード150円(税別) メモ帳450円(税別) クリアファイル300円(税別) ジグソーパズル1,800円(税別)

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ジブリ美術館の企画展示『猫バスにのって ジブリの森へ』のために描かれた宮崎駿監督の水彩画が、かわいらしい文房具とパズルになりました。絵の中のネコバスたちは、お客さんをたくさん乗せて美術館へとやってきます。ノートやメモ帳は中にも挿し絵が入っているのでうきうき楽しい気分で使っていただけそうです。美術館の展示を堪能したあとは、ぜひショップで思い出の一品を見つけてみてください。


『猫バスにのって ジブリの森へ』 マスコット2種  ... 各740円(税別)

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こちらのマスコットも、『猫バスにのって ジブリの森へ』のポスター画の中に登場します。どこにいるか見つかりましたか?何やら袋を担いでぞろぞろと美術館に遊びにきているようです。マスコットの小さな袋の紐をほどくと、ドングリサイズのモノでしたら中に収納できるようになっています。形は二種類あるので、どちらにするかお気に入りを選んでいただけます。


「KAMON」ピンバッジセット3種  ... 各1,000円(税別)

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こちらは企画展示の商品ではありませんが、新しくオリジナルのピンバッジが登場したのでご紹介します。かわいらしいデザインは、日本の家紋をモチーフにしたもの。文字や色合いが少しレトロな雰囲気で、一味違うバッジになりました。トトロやカオナシ、ポニョなど、色々な作品からキャラクターが揃っているのも魅力のひとつ。3つセットで三種類ありますので、お好みで付け替えていただけます。

※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。