GIORNALE DEL MAMMA AIUTO!
着るたびにからだの一部になってゆく......ループウィラーのスウェット&パーカ


20191001s19.JPG

前回のマンマユート便りでは、ショップ近くの小窓に飾られているフレスコ画スカーフをご紹介いたしました。
今回は別の窓を覗いてみましょう。

たくさんの色鮮やかな気球が描かれているこちらの絵は、地下1階女子トイレの個室の壁紙の1つです。ひとつしかないので入れた方はちょっとラッキー。男性の方はごめんなさい!そしてショップではこの壁紙をモチーフにしたトートバッグを販売しています。
ちょこんと浮かんだピンクのムゼオトトロが何とも愛らしく、明るい空色は持つだけで気分が上がりそうですね。

さて、2013年から6年間お届けしてきたマンマユート便りですが、今回のVol.22を最終回といたしまして、一度締めくくることとなりました。

また別のかたちで、ものづくりの面白さや、つくり手の魅力をお伝えできればと思っておりますので、楽しみにしていてください。

 
着るたびにからだの一部に――ループウィラーのスウェット&パーカ

20191001s20.jpg

毎年秋にジブリ美術館で発売されているスウェットをご存知でしょうか。こちらを手掛けているループウィラーは、「世界一、正統なスウェットシャツを」という想いのもと、日本製のスウェットを作り続けています。
1時間に1mずつ、ゆっくりと、丁寧に編まれた生地の最大の魅力は、他にはない手触りの良さと、体になじむ着心地の良さ。

今回は、そんな日本に残された希少な製法で、大事につむがれるスウェットのお話です。

スウェットづくりで目指したもの

ジブリ美術館とループウィラーの出会いは2007年。当時の館長の宮崎吾朗監督と、当時のジブリ美術館ショップの中島郎店長の二人がループウィラーを訪ねました。
そして同年の秋には最初の商品が発売となり、それ以降毎年新しいデザインのスウェットを作っています。

今回は、株式会社ミスズ代表取締役の鈴木諭さんに、多くの人を魅了するループウィラーの、ものづくりへのこだわりを語っていただきました。

20191001s4.jpg

鈴木 諭(ループウィラー代表):右
今井知己(スタジオジブリ商品企画部):中   
中島 郎(前ショップマンマユート店長):左

中島 最初に手に取ったのは偶然だったんですが、お店で初めに触ったとき、ひとつだけ全然違ったんですよ。
質感はしっかりとしているのに、手触りはやわらかくて、明らかに違うなと。
それで気になってループさんにお話をさせていただいたのが始まりだったんですよね。

鈴木 そうでしたね。中島さんは服飾の仕事からジブリ美術館に転職してということで、服のことも分かってらっしゃったから、僕も話がしやすかったです。

20191001s7.jpg

今井 僕も企画に携わるようになってループさんに出会ってから、スウェットのイメージが変わりました。合宿で着る練習着や寝間着というイメージだったものが、街にも着ていける洋服になったんです。
しかもこれは洗うと少し縮んで、着るとなじんで、全然だれない。やみつきになりました。

鈴木 そうなんです、僕らの若いころ、スウェットといえばスポーツウェアとか、せいぜいカレッジウェアとして大学生が普段着で着るもの。
社会人になったらスウェットを着て彼女とレストランでデートなんていうのはNGだったんです。
でも、例えばオックスフォードのボタンダウンのシャツは街に出かけるときに着ていてもおかしくないでしょ。
僕は、そこにスウェットをもっていきたかったんです。

そのためにプロダクトとして完成度やクオリティをどう高めていくのかを考えたとき、製法は吊り編み機などを使った昔ながらのものなんだけど、その生地を使って出来あがったものはコンテンポラリーな、今着てかっこいい、丁度いいというものを作りたいと思ったんです。

ただ僕はデザイナーやクリエイターになりたかったわけでも、ブランドを作りたかったわけでもないんですよ。
前職で糸や綿や編み立てについてを学びながらいろんな工場やブランドを回っていくうちに、最終的に行き着いたのが吊り編み機。元々スウェットやTシャツが好きだったのもあったけど、吊り編み機で編まれた生地はやっぱりすごくいいし、これは日本の宝だから、これを継続させるにはどうすべきかという手法論をいろいろ組み合わせていった結果、今に至っています。

ループウィラーのスウェットをつくるひとたち

ループウィラーのスウェットの特性は、くり返し洗濯してもその風合いが失われにくく、だんだん体になじんでくる着心地の良さ。その背景には経験値豊かな職人たちによる確かな技術がありました。

20191001s9.jpg

ループウィラーのスウェットができるまで こちら

鈴木 洋服の世界って、デザインだけに光が当たるという時代がすごく長かったんです。
でも生地を作ったり縫ったりしてくれる裏方の人がいなかったら、何もできない。
やっぱり裏方の人を大事にしないとだめだと思うんです。
彼らは毎日朝から晩まで、工場でずーっと縫ったり編んだりしている。それってすごく大変なことだと思うんです。でも彼らは自分の中で楽しみを見つけて、やり続けているんですよ。
そんな彼らの仕事に光を当てたい。自分たちの編んでいるものが、縫っているものが、どういうものになって、どういうお客さんの手に渡って、結果その人を豊かにしているのかという事を伝えたい。
自分達の仕事がどこに繋がっているのかわからないなんて、つまらないんじゃないかなと僕は思うから。

20191001s8.jpg

鈴木 携わる人みんなが今までより少しやりがいを感じられて、笑顔になれるような仕事をする。それを目指すことがうちのブランドの原点なんです。
勿論、売ってくれる人たちもすごく大事です。
お客さんに伝えることで、ちょっと高いけど欲しい!と思ってもらえて、今井さんのようにハマっちゃったっていう人が増えると、ループはきっといい方向にいきますね。

20191001s11.jpg

ジブリとのコラボレーション

今井 ジブリ美術館には「ループウィラー」を知らないお客さんも多く、最初は価格に驚く方もいらっしゃいますが、その中身をスタッフがきちんと伝えることで納得していただけることが多いです。

鈴木 それもジブリ美術館の中で言われるからものすごく説得力があるように聞こえるんじゃないでしょうか。
他のブランドさんからも「客観的に見て、一番しっくりくる」って言われました。きっとすごく相性がいいんでしょうね。

20191001s13.jpg

中島 ありがたいです。ジブリ美術館でも、アニメーションを作るにはどれだけの手間かかっていて、どれだけの人が携わっているのかということを展示を通して伝えられたらと思っています。
ものをつくるということに関して、その奥にあるものを想像してほしいという想いが、ループさんとうちは共通しているのだと改めて思いました。

鈴木 そうですね。アニメーション映画を観ているとオーラのような熱量を感じることがあります。
それと似たようなものをスウェットのなかに内包することができたら、僕の仕事での役割は果たせたことになるのかなと思います。

20190901s2.jpg

中島 ループさんのスウェットは作る人や着る人の生活のことがきちんと考えられていて、そこには裏方の人の仕事を目に見える形にしたいという想いがある。
いいものを継続して作っていきたいという現実的な仕事の流儀もある。そういったものづくりの姿勢が製品に込められているのだと、すごく納得できました。

鈴木 それが伝われば最高です、それが結論です。

今井 「ループウィラー」を買ってくれる人に、鈴木さんから伝えたいことはありますか?

鈴木 僕は着る人の年齢性別は問わないし、着る人が選択すればいいと思っています。
でも、ループウィラーのものづくりのフィロソフィー、これに......心が震えるといったら大げさかもしれないけど、何か感じるものがあって、こういうブランドを買いたいなと思って着てもらえたら、それが一番嬉しいですよね。

中島 本当に社内でも大人気なんですよ。すごくファンが増えました。今年の新デザインが販売中ですが、お客様の反応が楽しみです。今日はありがとうございました。

20191011s016.jpg <今年の新柄です...!>

(2019年7月25日、東京都渋谷区、ループウィラーオフィスにて収録)

これまでのデザインは こちら(923KB)

今回は、今年新たに発売になったポストカードセット2点をご紹介いたします。

「映画を塗る仕事」展ポストカードセット(6枚入り)

20191001s17.jpg
各900円(税別)

現在開催中の企画展示『映画を塗る仕事』展に展示されているパネルやセル画がポストカードになりました。セットは3種類あり、例えば<時刻によって変わる色>のセットでは、サツキやメイの色が時刻の変化によってどのように塗り分けているのかが比べられる内容になっています。その他<光を塗る><塗り分けの表現>の各セットも、展示を思い出せるセットになっています。ポストカードとしてはもちろん、付属のスタンドに入れて飾ることもできるので、その日の気分や時刻で入れ替えて変えてみてはいかがでしょう。
※『色を塗る仕事』展は2019年11月3日までの開催予定です。

ポストカードセット 「Look at me"私を見て"」/「Happy smile"幸福な微笑"」(8枚入り)

20191001s18.JPG
各1,000円(税別)

鈴木敏夫のノンフィクション小説『南の国のカンヤダ』に登場するタイ在住のシングルマザー、カンヤダさんが、美術館を撮影したポストカードです。彼女のユニークな視点から捉えた写真からはジブリ美術館の新たな一面を感じることができるのではないでしょうか。一枚一枚にエスプリの効いた英語タイトルが添えられています。たとえば、たくさんのマックロクロスケたちがこちらを見つめている写真には、「Look at me~私を見て」というフレーズが。伝えたいメッセージがあるお手紙に、ぜひご使用ください。