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GIORNALE DEL MAMMA AIUTO! 【ノリタケ洋食器シリーズ】~マンマユート便り vol.8

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寒さの中にもやわらかな日差しを感じる頃となりました。 春もすぐそこまできています。
アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」。
残念ながら受賞は逃しましたが、ご覧いただいた方ひとりひとりの心のなかに深く刻まれるような作品です。
ショップで映像を流すと、釘付けになるお客様の姿も。
線が生み出す表現の豊かさに思わず見とれてしまいます。
かぐや姫の心情と共に、冬から春へと移り変わる自然の描写は、とても印象的なシーンのひとつ。
桜の開花を待ちながら、この季節にご覧いただくのもいいかもしれません。


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食器に映る草花の彩り、寄り添うトトロたち―――【ノリタケ洋食器シリーズ】

日々なにげなく見ている道端の雑草、
もしかしたらそこにはトトロたちが隠れているのかも。
高尚さとぬくもりを有した白い磁器に描かれた、
身近な草花とトトロの世界が美しい湯気となって立ちのぼり、
毎日の食卓をささやかな幸せで包んでくれます。
二十年以上にわたって愛され続けるノリタケのスタジオジブリ作品洋食器シリーズ。

今回は、ロングセラーに秘められた作り手の思いをお届けします。
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美術館カフェで愛され続けるオリジナル食器

毎日、多くのお客様がくつろいでいかれるカフェ「麦わらぼうし」
お客様のなかには、食べ終わったあとにお皿をさげずにいてほしいという声も聞こえるほど、
ランチやお茶の時間をより豊かなものに演出しているのが、オリジナルの食器です。

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▲カフェ「麦わらぼうし」店内に飾り付けられているオリジナル食器

どれも館主である宮崎駿監督の思いがこもった直筆の絵柄です。
お客様は料理に舌鼓をうつだけでなく、
食器の上の模様や数字を見つけて会話がはずんでいるようです。

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▲カフェではお皿が料理を際立たせる

白く光る美しい表面に、鮮やかな色彩。
それらは、100 年以上にわたり
日本はもとより世界にも洋食器を送り出してきた
ノリタケさんに作っていただいているものなのです。
その高い品質により世界中の人々に愛され続けています。
老舗ブランドとスタジオジブリの出会いのきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。


ノリタケとスタジオジブリ、初めてのコラボレーション

本日はノリタケ×ジブリの食器シリーズで、
当時、ノリタケでデザインを担当された加藤さんと企画を担当された鈴川さん、
ジブリ側からは原画を担当した二木さん、
商品企画の今井部長をお迎えしてお話をうかがいたいと思います。

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▲【加藤陽夫さん】(奥・右側)
元・株式会社ノリタケカンパニーのデザイナー。スタジオジブリ作品群食器シリーズのデザインを手がける。
【鈴川喜久夫さん】(奥・中側)
株式会社ノリタケの森、運営・企画グループ所属。当時、ノリタケカンパニーリミテド商品部に所属し、トトロ食器シリーズの企画に携わる。
【二木真希子さん】(手前・左側)
『天空の城ラピュタ』の原画以降、アニメーターとして多くのスタジオジブリ作品に参加。動植物をこよなく愛し、トトロ食器シリーズの原画を担当。
【今井知己さん】(手前・右側)
スタジオジブリ商品企画部部長。ジブリ作品洋食器シリーズの企画を担当。

現在担当してくださっているノリタケカンパニーリミテド営業企画の杉田さん、
ショップスタッフも同席し、和やかにテーブルを囲みます。

まず今井さん、企画の経緯はどのようなものだったのですか?

今井  企画がはじまったのは1992 年ですね。
宮崎駿監督から、「雑草とトトロをテーマにして良い食器ができないか」という提案がありました。
宮崎監督から直々に商品化の提案があったのは初めてのことです。

それを受けて、いろいろなキャラクターがついた食器のサンプルを集めたのですが、
宮崎監督にお見せしたところ「こういう食器じゃない」といきなり否定されたんです(苦笑)。
「もっといい食器で」と言われ、そこでお名前が出てきたのが、
日本を代表する食器メーカーであるノリタケさんでした。 

20150225s4.jpg 今井さん「はじまりは宮崎駿監督からの提案でした」

宮崎監督の反応はいかがでしたか?

今井  宮崎監督はノリタケさんの食器を見て「きれいですね」とおっしゃいました。
ノリタケさんの製品で良いところは下絵つけの技術です。
原画を印刷した紙を貼ってもう一度、釉薬を塗って焼くので、
生地の中に絵が溶け込んで表面がツルツルになっているんです。

その後せっかくならば形にしてみましょうということになりました。
形にするには絵が必要ということで、ノリタケの皆さんがジブリにこられて、
いろいろなお話をしたんです。
宮崎監督と二木さん、ノリタケのデザイン部の加藤さんとで、
いわゆる企画的な話をしたのですが、そこでの加藤さんの発言が印象的でした。
宮崎監督と二木さんに対して
「トトロの絵を自由に描いてください。食器の曲面やくぼみなどは気にせずに描いていただいて、
それを食器にするのが僕の仕事です」
と言ってくださったんですね。

二木さんが「食器周囲の飾りの草花の帯もアールをつけずにいいんですね?」と
おっしゃると、加藤さんは「それで結構です」ということで、絵を描く作業がはじまりました。
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▲紙に描かれた原画が丸いお皿に

ノリタケさんとしてはいかがだったのでしょう?

加藤  ノリタケでは当時、版権ものの製品を納めるところまではやりますが、
独自にライセンスをとって企画製造から販売まではやらないという方針だったんです。
しかし、ジブリさんが販売をやるのはたいへんだろうということで決断し、
逆に上をくどいてやらせてもらうことになったのです。
ノリタケでは初めてのことになります。

20150225s7.jpg 加藤さん「自由に描いてもらったものを形にするのが僕の仕事です」


題材は雑草...二木さんとノリタケ、共同作業のはじまり

その後、初めてのプロジェクトが動き出したのですね。
二木さんは、最初にお話をきいてどのように思われましたか?

二木  最初にお話をいただいたときは「描けるかな...?」と少し不安でした。
でも、それ以前から食器が好きだったので......海外の食器の写真を見ては憧れたりしていました。
ですので、食器の絵を描かせていただける、ということはとてもうれしかったんです。
ただ、宮崎さんの満足いくような絵が描けるかという心配はありましたが、
ともかくやってみたいなという気持ちでした。

ちゃんとした花ではなく、「雑草を描く」とはどういうものでしょう?

二木  つまり、道端でよく見かける植物を主役にするということです。
宮崎監督からは、
「花壇にあるような花や、野に生えているなかでも主人公になるような草花はやめろ」
との話がありました。野バラだとか赤いきれいな実がなるような植物ではないんだと。
最初にヘビイチゴを描いたんですが、それも違うと言われました。
...でもあとから使いましたけれど(笑)。
ぱっと目につく植物ではなくて、目立たないような、
ふだん見過ごしているような植物を使って描くように言われましたね。

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▲最初に生まれたシリーズ

今井  宮崎監督は最初から、草花が好きでていねいに描くひとがいるから
二木さんで、ということだったんですよ。

二木  アニメの原画でも、草花が出るカットをやらせてもらっていましたので、
そういうイメージを持っていてくださったのでしょう。

絵の作業を進めていくなかで、宮崎監督からの修正の指示はありましたか?

二木  それはあまりありませんでしたね。ただ最初のころはキャラクターは不安だったので、
大体のラフを描いて、宮崎さんに直しを入れてもらっていました。

さきほど、加藤さんのほうから、とにかく自由に描いてくださいというお話が
あったとのことですが、描いてそのままをお渡ししたという感じなんですか?

二木  ほんとにそんな感じです。

加藤  最初に見せていただいたのは、のちの[イヤリープレート]のような図案
(※皿の中が一枚の絵のように見える図案)だったんです。
それで僕たちは、食器を作りたいのか、ギフトを作りたいのか、とお尋ねしました。
食器の方向性には大きく分けてふたつあるんですよ。
二木さんに最初にお見せいただいた絵柄は、
我々の業界でいう《単品ギフト》的なデザインだったんですね。
そうすると、宮崎監督のお考えのような《食器》ではなくギフト的要素が強くなってしまうんです。
しかし、焼き物のデザインや色には制約があってむずかしいだろうなと思い、
もっと自由に描いてくださいと。
それを器になるようにバランスをとってレイアウトするのはこちらで担当しますから、
気になるところがあればやりとりするなかで調整しましょうとお伝えしました。

しかし、キャラクターがあると食器のデザインの邪魔になりませんか?

加藤  そんなことはないですよ。二木さんが描いている雑草とキャラクターは、
バランスの取り方がすごくよくできているので、食器の絵としては本当にいいんです。
そして我々は、若干の変更はあるけれど、
食器としては原画にできるだけ近づける、という作業をしてきました。

二木  私も、まず好きな絵柄と色で絵を描いて、
焼きあがった際のバランスをとってくださいね、とお願いしていました。

加藤  原画を描く二木さんもそのほうが楽でしょうからね。

二木  ありがとうございます。頼りっきりです。

なるほど。使ってもらうことを前提としたデザインを成立させる過程には、
お互いに余分なことを言いすぎず、お二人で作り上げていく作業があったのですね。

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▲このお皿、上下はどっち...?
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▲正解だと逆さまに
「トトロたちは、上下なんか関係のないおばけなんだと主張したかったんですよ」(二木)


ノリタケのこだわり

原画の雰囲気を活かしつつバランスをとって
焼き物に落とし込む作業というのは経験と勘によるものなのでしょうか?

加藤  そうとう感覚的だとは思うんですが、
女の人が食器を買うときに「使いやすそうね」と思うバランスの作り方があるんですよ。
そういう部分がないと食器としては良くないですね。
女の人...お母さんにとって、これだったら子どものために料理をのせてあげられるだろう、
ということを必ず考えます。

先ほど今井さんから「面がツルツルで綺麗だ」、というお話が出ましたが、
これは清潔感につながるんです。
子どもにご飯を出してあげる時に衛生的な感じがするし、そういうことを含めて、
いろんな意味で使うお客さまにとって心地よい食器をめざして、一生懸命やっています。

高級感ということではなくて、家庭で使いやすい、良質なものということですか。

鈴川  クォリティが高くて、使い勝手がよくて、
丈夫で品質保証できるようなものがノリタケのポリシーなんですよね。
もともと当社は、創業者がヨーロッパで白い食器を見て、
広くみんなに使っていただけるような価格帯で白くて美しく精緻な洋食器を作りたいと。
それを日本で作ってアメリカに輸出したいという思いからはじまっています。
しかし根底には日本の食文化があるので、
洋食器といえどもどこかに和の要素が入っています。

むかし、当時の社長が言っていたんですが、
「和食器というのは調和の美だ。洋食器というのは均一性の美だ」と。

20150301s6.jpg 鈴川さん「美しさを持ちながら低価格なのは、普段からどんどん使って欲しいという思いからです」


さらにイヤリープレート、季節シリーズの開発へ

1993 年から発売が開始されたトトロシリーズは、
じつはノリタケ社内でも「これは非常にいい」という声、
「なぜノリタケでこれをやるんだ?」という意見にわかれていたようです。
しかし発売から着実にお客様からの支持を集め、
トトロの人気と、品質が本物であることが認知され、
1997年のイヤリープレートの販売へと繋がります。

イヤリープレートは毎年、ショップでも販売していますが
「これを買いに来ました」というお客様もいらしゃいます。

鈴川  二木さんに描いていただいて楽しかったのは、
毎年新しいキャラクターが散りばめられていることでした。

→ 過去のイヤリープレート(1997-2015)デザイン画像は こちら

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▲二木さんの遊び心で、毎年どこかに隠れキャラがひそんでいます

これは雑草をあしらったシリーズよりも、草花メインということだったのですか?

二木  うーん、宮崎さんとしては同じように雑草でやって欲しかったのだと思うんですが...。
やっぱりネタ切れになっていくんですね。(一同笑)
あれも使いたいこれも使いたいとなって、だんだん派手なものになっていきましたね。

毎年、絵柄を考えるだけでもすごく大変な気がしますが...。

二木  大変です。トトロというキャラクターが、特に何もしてくれないんですよ。
させられることがほとんどないんです。ボーッとしていないと大トトロらしくないというか。(一同笑)

今井  ポーズ集がないですよね。あっち向いたりこっち向いたりしてくれればいいんですけれど。

二木  ボーッとしてるかコマに乗るくらいしかないので。
仕草を発展させてはいけないキャラクターなんです。それですごく困っています。

イヤリープレートは二木さんの世界観がとても出ていて、
毎年とても楽しみにしていますが、二木さんのなかでストーリー性などはあるのですか?

二木  ありがとうございます。私が子どもの時にしていたような遊びを取り入れています。
洋服につく草で遊んでいたり、色染めしていたり。
...あとちょっと不思議なことに、トトロとサツキとメイが草花と同じ小さなサイズになってるのに、
誰もそのことを言わないんですよ。(一同笑)
「どうしてこんなに小さいの?」って言われたことがないんです。
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不思議ですね、いま指摘されて意識しました(笑)

二木  逆にいうと、こういう感覚はスッと受け入れられたんだ、と思って嬉しいです。
キャラクターを小さくしてしまうことを最初は悩んだんですよ。
トトロたちは妖精みたいなものなのでまだいいのですが、
メイやサツキまで小さくしていいのかな、やっていいのかな? と思っていました。
でもやってしまったら、誰にも疑問を持たれなかった...なのでそのまま(笑)。

この世界に自然に入っていけるということですね。

二木  自然に受け入れられたのは嬉しかったです。

2005 年から《季節シリーズ》がはじまりますね。

二木  そうですね。最初の企画では絵柄は12か月分用意する予定だったんですけれど、
それはちょっと無理って(苦笑)。結局、6種類になりました。

今井  特に冬は苦労しましたよね。

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▲2005 年から発売された「季節のシリーズ」12ヶ月を2ヵ月ごと6種類の絵柄がある

二木  冬は題材が少なくて......。植物が冬越しするためにロゼットっていうのを作るんですが、
それを描いてみました。他の月は横から見た絵ですが、視点が他の絵と違うんですよね。
それと、ネコバスが冬眠するのかどうかは、わかりません。(一同笑)

草花の季節や種類などはどのようにわけているのですか。

二木  このシリーズの場合は月が決まっていますので、
他の地域の方には申しわけないのですが、このあたりの植物にあわせて描いてますね。
このあたりというのは東京近辺の武蔵野の植物です。
だからもっと北に行ったり南に行ったら季節がずれちゃうかもしれないです。
美術館近辺の林や原っぱで見られるものばかりなんですよ。


おわりに

1995 年、トトロ食器シリーズが軌道にのったお礼にと、
宮崎監督からノリタケさんに手紙が贈られました。
その文末は、
「今回のトトロの植物達は、意匠というには素朴で、はばかられるほどつたないものですが、
これから何年も何代もかけてやがていつかブドウ唐草や、
アーカンサスの十字唐草のような意匠に育っていったらなんて、空想も楽しんでいます」
と結ばれています。
それから20 年がたち、二木さんが思いをこめて描いた身近な雑草は、
トトロたちの息遣いとともにすくすくと成長、見事な意匠に育ったといえるのではないでしょうか。

手紙の画像はこちら

加藤  しかし20 年分をこうやって並べるといっぱいありますねえ。
焼き物ってこうやって消えないじゃないですか。だからずーっと残るんですよね。

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二木  何百年も前のものがきれいなまま残っていますしね。

加藤  だからあとで後悔しないように作らないとダメなんですよ。修正が効かないですからね。
日本くらい焼き物を大事に思ってる国も珍しいと思います。
安いものが増えてきていますが、基本的には焼き物を愛してますよ。
ヨーロッパなどですと、焼き物以外にも金属製の食器とかいろいろありますが、
ガラスのほうが高価ですよね。日本はやっぱり金属やガラス製より焼き物です。
ふだん使う食器にしても大事にしていると思いますよ。

20年は本当にすごいですね。その誕生から今に至るまでのお話をお伺いして、
携わられた方々の「長く愛されるものを創ろう」という想いを感じることができました。
そして実際にいいものは年月を経ても残るのだと強く実感している次第です。

鈴川  少しでも長く、いいおつきあいができればいいですね。
この商品を求めてくれる方が一人でもいれば作り続けたい、ノリタケはそういう姿勢でいたいと思います。

加藤  そうですね。さらにもう20 年くらい、がんばってください。(一同笑)


みなさん、今日はどうもありがとうございました。

(2015年2月17 日、三鷹の森ジブリ美術館にて収録)






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ここでは美術館のカフェで実際に使用されている食器をご紹介します。


「12ヶ月シリーズ」 ... 12ヶ月プレート 4,800円 / 12ヶ月マグカップ 2,000円 (価格は全て税別)

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1から12まで、その月のイメージで描かれたトトロの食器。素材はボーンチャイナとよばれる牛の骨灰を使用した磁器で、透き通るような白と、美しい艶が特徴です。好きな数字のトトロを見つけたり、ご自分のお誕生日月のトトロを探したり...食器を囲んで会話もはずみそうです。

「カフェのオリジナル食器」... 27センチプレート(トトロ/マックロクロスケ/魔女)  2,800円 / 24センチプレート(マックロクロスケ/ジジ) 2,600円 / 19センチプレート(トトロ)1,800円 / 18センチプレート(ジジ) 1,800円 /カップ&ソーサー 3,700円(価格は全て税別)

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12ヶ月シリーズの他に、美術館のカフェでお料理をのせている食器たち。とても丈夫で、日常的に使っていただけます。柔らかい水彩画のような縁取りで、お料理が温かく、美味しそうにみえます。用途によって大きさや絵柄も違うので、ぜひご自分にあった一品をみつけてみてください。

※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。