GIORNALE DEL MAMMA AIUTO!
オリジナルベーゴマ


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20140601s001.JPG雨上がりの草木が目に鮮やかな季節になりました。晴れた日はお客様の服装からも夏の気配を感じます。美術館スタッフの制服は、働くエリアによって様々です。ショップのスタッフは「紅の豚」の登場人物、働き者で明るい"フィオ"をイメージしています。彼女は、ブルーチェックシャツに、動きやすいエプロンというスタイルです。エプロンのポケットはとても大きく、メモ帳にハンカチ、いざというときのための絆創膏、スタッフはここに何でもつめこんで忙しく動き回ります。毎日活躍するこのエプロンは消耗も激しいのですが、この6月新調されることになりました。フィオに負けないように働かなくては、と思いも新たな今日この頃です。
さて、ショップでは企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展」に伴い、新商品が登場。どれもかわいらしく夢がいっぱいつまっているようで思わず手に取ってしまいます。ぜひみなさまにもご覧いただけたら嬉しいです。



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にぶく光る、路地裏遊びの炎―――【オリジナルベーゴマ】

昭和から平成へと時代がかわるなかで、電子ゲームの台頭により、
子どもの遊びにもずいぶん変化がありました。
道具を使う遊び...たとえばメンコやビー玉、そしてベーゴマなどが、
下火となった〈路地裏遊び〉の代表といえるでしょう。
なかでも鋳物でできているベーゴマは、
鋳物工場じたいの減少により絶滅の危機にさらされました。
しかし、にぶく光りずしりと重いベーゴマのなかに宿る、遊び心の炎は今も消えていません。

今回は、子どもだけでなく大人も熱くさせる、
対戦ゲームの元祖、ベーゴマのお話です。
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▲オリジナルベーゴマ3種...各¥400(税別)

 

ジブリ美術館と、ベーゴマの出会い

美術館だけで取り扱っている、オリジナルグッズの数々。
その中でもベーゴマは、他の商品とは少し違った経緯で商品化されました。
三年前のある日、〈ベーゴマのプロ〉とも言うべき人物が、美術館の門を叩きます。
その人物は少年時代からベーゴマが大好きで、 それが嵩じてベーゴマ普及の伝道師となり、   
ついにはベーゴマの会社に入ってしまったほど!

「こちらでベーゴマ遊びをいっしょにできませんか...?」
彼からの大胆な申し出に、ショップのスタッフは驚きますが、
ベーゴマの回し方を教えてもらい魅力を聞くうちに、そのおもしろさが伝わってきました。
ひもの巻き方、台の上への投げ方など、
自分の頭と身体をうまく連携させ、しなやかさが必要とされるベーゴマは、
ジブリ美術館とどこか通ずるものがあるのかも知れません。
コマの回転がとり持ったのでしょうか、
やがて彼の熱意と美術館の思いが共鳴し、ついに商品化が実現します。

そんな彼が在籍するベーゴマ会社、株式会社日三鋳造所を訪ねて、
埼玉県川口市に行ってみました。


ただ一軒のベーゴマ工場 ―日三鋳造所―

出迎えてくれたのは日三鋳造所 代表の、辻井俊一郎さん。
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【株式会社日三鋳造所 代表取締役 辻井俊一郎さん】
昭和48年に入社後、鋳物製造に携わる。同社はもともと大手電機メーカーの部品を専門に製造していたが、
現在では日本で唯一、ベーゴマの製造を専門に担っている鋳造所


映画『キューポラのある街』で鋳物の街として有名な川口市ですが、
まずは鋳物産業とベーゴマを囲む現在の状況を教えてください。

辻井  戦後にどんどん工場が建って、かつて川口には1000軒ちょっと鋳物工場がありました。
そして、川口駅の両側にあった工場も、みなベーゴマをやっていたんです。
朝から晩までキューポラ(鋳物工場の溶解炉のこと)からぼうぼう煙が出ていました。
当時はそりゃもうすごかったですね。夕方に町を通ると、火事じゃないかと思うほどでした。
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▲現在の川口駅前には、キューポラの銅像(左)と鋳造所で働く労働者の銅像がありました(右)

辻井  でも途中にオイルショックがあったり、再開発でだんだんやめるということになっちゃって。
なんとか続けられるところはないだろうかというようなことで、
川口市からウチなんかにも話が来ました。
でも、ベーゴマを1トン作るのと、大きな機械部品を1トン作るのでは
五倍六倍の手間がかかるから、正直言って最初はお断りしたんですよ。

なるほど。しかしそれでも続けられたわけですね。

辻井  最初はしょうもない仕事だと思ってたんですけど(笑)、
最初に引受けた先代社長の心意気もありますし、
喜んでくれる子どもたちもいるんで続けてこられました。
そして気がついたら、ベーゴマを専門に作っているのはただ一軒になっていましたね。

しかし続けていくためには、やはり職人さんの力が欠かせないですよね。
今残っている職人さんは、ご高齢の方が多いのですか?

辻井  高齢ですねぇ。工場に行ってみるとわかると思いますけど、かなりご高齢(笑)。
じゃあ、実際の鋳造所をご案内しましょう。


熱気うずまく鋳物工場

日三鋳造所の製造を担う河村鋳造所に移動し、実際のベーゴマ作りの工程を見せていただくことになりました。

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▲キューポラが発する轟音とたちこめる湯気。工場の床一面に、黒く四角い砂型がびっしりと並んでいます。

皆さん、この仕事を長く続けられているんですか?

辻井  うちでベーゴマをつくる職人さんたちは、60~70を過ぎても現場でばりばりやっています。
大体みんな半世紀以上やっているんじゃないかな。
まだ煙を吐く列車で集団就職で来た、〈金の卵〉(注:労働力となる中学・高校卒業生)と言われた世代です。
でもとにかく暑いでしょ。昔から3Kなんて言われて、
鋳物の職人さんがどんどん辞めちゃったんですよ。

確かにものすごい熱気ですね。

辻井  夏なら、みなさんは5分もいられませんよ(笑)
外の気温が30℃以上の日でも、中より全然涼しく感じるほどですから。
中は50℃くらいになるので、仕事が終わると3~4キロやせますね。
力仕事だし、とにかく暑いから、生きるか死ぬかみたいになっちゃう(笑)。
でも終わったあとにやる一杯は格別なんですけどね。
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▲工場内のキューポラ。ごうごうと燃え上がる炎で鉄が溶かされ、溶岩のように流れ出ています。
中の温度は1500℃にもなっています。

五十年近く鋳物のお仕事をされているなかで、手応えを感じるのはどんな時ですか。

辻井  鋳物はすぐに結果が出るでしょ。
流し込んで30分くらいで出る。これはちょっとマズかったな...とかね。
不純物が一緒に入ってしまうとダメになったり、いろいろあります。
その日その日で違うんです、不良の出方がね。相手は砂ですから...難しいんですよなかなか。
だから今でも年中、毎日、勉強なんですよ(笑)。

この熱気の中で、鉄を操り、長年微調整を繰り返しながら、
ベーゴマは生み出されているのですね。

【ベーゴマの製造風景】
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▲ベーゴマの原型に、〈沼砂〉という黒い砂をかぶせ押し固めて崩せる砂型を作ります。
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▲砂を押し固める機械(モールディング)。型枠の中で砂を圧縮し、押し固めます。砂の水分の調整は、季節や湿気によるので難しいそう。
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▲昔は砂型を手で押して固めていたのだそうで、職人さんは赤銅色の太い指が逞しい!※奥に見えるのが一般男性(スタッフ)の手です
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▲数百度に溶けた銑鉄を柄杓に汲み取ります。遠くにいても熱で顔がヒリヒリするほどの暑さ。
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▲完成した砂型を床一面にびっしり並べ、上の丸い穴から重い柄杓で溶けた鉄を注ぎ込んでゆきます。腕や顔は真っ赤です。
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▲少し時間をおき、冷めて鉄が固まってきたら、砂型を崩します。辺り一面に蒸気がモウモウと広がります。
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▲ベーゴマが冷めたところで、ひとつひとつ切り離し余分な部分を取り除くと完成です。


 

熱くて深いベーゴマバトル!

ベーゴマは下火と言われる遊びですが、じつは全国規模でじわじわとその魅力が新たに広がっています。
ベーゴマクラブは現在、関東に19、全国に25団体があり、
[全国ベーゴマ選手権大会]は今年で開催十年目を迎えます。
そういったベーゴマ熱を盛り上げるのが、ベーゴマ道・五十年の伝道師、中島茂芳さんです。

四歳のころからベーゴマに熱中、これまでに対戦して勝ち取ったベーゴマの数はおよそ4000個!
そしてついに日三鋳造所に入社してしまったという奇特な人物です。
そんな中島さんこそが、最初に美術館のショップにベーゴマの話を持ち込んだ、その人なのです。
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【株式会社日三鋳造所  中島茂芳プロ】
一般社団法人全日本ベーゴマ協会 理事。メディアにベーゴマを回す講師として出演多数。加工・研磨の技術は業界で好評を得ている。ベーゴマの伝道師として一年中ベーゴマを教えに全国を飛び回っている。

女の子のベーゴマファンも増えているそうですが、選手権大会にはどんな方が参加しているのですか?

中島  ベーゴマは男の子の遊び、という既成概念を超え、男女比はほぼ5割ずつ、さらに下は5歳から80歳までの参加者がいます。
ですから小さい女の子が優勝することもあるんですよ。

基本的に最後まで台の上で回って残っていることがルールなのですが、
余計な力が入っていたりすると大人でも簡単に負けてしまうことが良くあるんです。
女の子でも男の子に勝てますからね。さらに子どもでも大人に勝てる。
そういった意味で、ベーゴマは大人から子どもまで一緒になって対等に遊べるのが特徴ですね。

しかし中島さんはプロですから、そうとうな腕前だと思います。子どもにはわざと負けてあげたりするのでは?

中島  わざと負けるなんてしません。そんなのは失礼ですから。全部同じように、容赦なく戦いますよ(笑)。

これは失礼しました!(笑)

中島  以前、あまり学校に行かなくなってしまった小学生の子どもにベーゴマを教えたことがあるんですよ。
すぐベーゴマに夢中なって、大人から子どもまで大勢の人と交わって遊んでいるうちに、
また学校にも行くようになりました。
「ベーゴマ」という世界では、勝ったか、負けたかの、それだけ。

遊びの世界ですけど、そこではみんなが対等です。
だから手加減はしないんです。
それもベーゴマの魅力の一つだと思うんです。

 

ベーゴマの将来

今後ベーゴマはどうなっていって欲しいですか?

中島 世界中に広めたいです。まずは日本中を教えて回っていずれ世界に...。
年齢性別に関係なく、対戦できてすぐ友達になれるという遊びは例がないと思います。
それを広めるためにはいろんな所に、必要であればどこでも教えに行きますよ。
やはり外で遊ぶのはいいと思いますし、ベーゴマを通じて人と人とがつながる、
そういうのが楽しいですよね。
喜んでもらって、遊びを教えていけるのが一番いいですね。もう、一生ベーゴマに捧げます(笑)。

辻井 やっぱり皆さんがね、中島のように心から楽しんでくれる人がいるんで、
続けていかなきゃいけないものだと考えているんです。
幸い彼みたいに、ほんとうにベーゴマが好きな人と一緒にやれるようになって、
ありがたいなあと思っています。
でも今では、ご縁があってジブリ美術館さんの商品を作らせていただいて楽しいです、とっても。
普通の形を作っているより「おっ、今度はトトロだ、マックロクロスケだ!」というほうが楽しいですよ(笑)

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▲ジブリ美術館のイベントでも、ベーゴマ遊びをしました


小さな鉄の塊であるベーゴマに、
これほど大勢の人がかかわり、体をはって魂を吹き込んでいることを知ることができました。
これからも大人も子どもも一緒にベーゴマ遊びを楽しめたら、私達も嬉しいです。
今日はありがとうございました。



 


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今回ご紹介するのは新企画展示「クルミわり人形とネズミの王さま展」にちなんだ美術館オリジナル商品です。

「レターセット」 … 800円(税別)

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便箋を縁取る絵は、宮崎駿監督が「クルミわり人形とネズミの王さま展」のパネル用に描いたもの。絵をよくみると、クルミわり人形だけではなくトトロやネコバス、パン種とタマゴ姫の姿も...メルヘンの世界からキャラクターたちがぬけだしてきたようです。全部で4色の便箋に、封筒、シールがセットになっています。


「マスキングテープセット」 2種 … 各750円(税別)

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柄違いのマスキングテープが2本ずつセットになっているので、どちらの組み合わせを選ぼうか、迷ってしまいます。プレゼントの飾りや手紙の封として使ったり、インテリアのアクセントにしたり...工夫次第でかわいらしくアレンジできます。


「メモ帳 」… 420円(税別)

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クルミわり人形の物語のエッセンスがたくさんつまったメモ帳。マリーのところにやってきたドロッセルマイアーさんや真夜中の柱時計。クルミわり人形にネズミたち。みているだけで夢の世界がひろがります。奇想天外なお話の続きをみなさんも書きつづってみてはいかがでしょうか。

※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。