本棚より[季刊トライホークス 2014年38号]
2014.09.10
世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。
せかいのひとびと
その名の通り、表紙はたくさんの人で埋めつくされています。色とりどりの、様々な民族衣装を着ている人の中に、着物姿の人がいないか探してみたくなりますね。表紙をめくると見返しには宇宙を背景にした地球が描かれています。さらにページをめくると原始の森。そこにいるのは裸の男と女の二人だけです。そして次のページは、またひと、ひと、ひと......、この本には宇宙にあまたある星のひとつ、地球に住む人々が紹介されています。
肌や髪の毛の色、洋服、食べ物、家、言葉、文字......、大勢人がいれば、姿かたちも生活も違うし、もっと言えば、好みだって人それぞれ、ということをたくさんの絵を使って描いています。言葉だけで聞くと、ちょっと教科書のように想像してしまうかもしれませんが、いろいろなものを見る楽しさがいっぱい詰まっています。形や色が違う「目」や「耳」が並んでいるかと思えば、国や地域ごとの「遊び」の絵がコマ割りのように描かれています。ちなみに、日本の遊びは「指ずもう」と「将棋」でした。
絵をひとつずつ見ていくことは、知らない世界をちょっとのぞくようなもの。自分の知らないものへの興味はいつだってみんな持っているのではないでしょうか。歴史はひとまず置いておいて、とにかく世界にはこんなにたくさんのいろいろな人たちがいて、それが本当に面白いことなんだ、と伝えてくれる絵本です。
アーサー王物語
絵画や文学、映画やゲームなどでくり返し取り上げられてきた"アーサー王伝説"。断片的にしか知らなかった壮大なお話を、一度まるごと読んでみたいと考えていました。本書では、アーサー王の誕生から死までをいっきに読むことができます。
魔術師マーリンの予言のもとに生まれたアーサー。美しく成長したアーサーは、剣を岩から引き抜き、自身が王位を継ぐものであることを証明します。そして名剣エクスカリバーを手に反逆者たちに打ち勝ち、小国にわかれていたブリテンを統一します。美しいグウィネビアを王妃に迎え、円卓を設置して勇敢な騎士たちを集めますが、中でも優れていたのはグウィネビアを慕うラーンスロットでした。騎士団とともに戦いに明けくれたアーサー王はローマ皇帝となり、ブリテンはかつてない繁栄を誇りますが、やがて王に忠誠を誓った円卓の騎士たちと、道を分かつときがきます。
誇り高く誠実な騎士たち。彼らにかかわる乙女や魔術師、巨人たち。聖杯探求の旅。予言や魔法。アーサー王伝説には、ときめくような冒険がこれでもかと詰まっています。偉大なアーサー王は想像上の人物とも実在の人物とも言われていますが、神のように強い存在として語られています。
そんなアーサー王も晩年に悲劇が訪れます。この時彼は、何を思ったのでしょう。様々な作家によって書かれた伝説があるので、この本を入り口に、アーサーの心の動きを描いた本も読んでみたいと思いました。
季刊トライホークス 35号(内容紹介)
「季刊トライホークス」は、図書閲覧室トライホークスで 3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。
- 夢中になって読んだ本
- 絵本作家であり、鳥の巣研究家でもある鈴木まもるさんに紹介していただいたのは『はなのすきなうし』と『ちいさいおうち』です。長く読みつがれてきた本ですが、鈴木さんに紹介していただき、改めて小さな絵本の中に大きな世界が広がっていることを感じました。
- 連載「ローラ・インガルス・ワイルダー(第2回)」
- この号では「小さな家シリーズ」の第3巻『プラム・クリークの土手で』を紹介しています。大草原を旅して、たどりついたのはプラム・クリークという小川のほとりでした。そして家は、土手を掘って作った横穴の家。ローラ7歳のときです。子どものときの楽しい思い出、そして常に流れている音楽。ぜひお楽しみください。
- 山猫だより「小さな人気者」
- 美術館の裏側(?)、日常について書いています。今回は、美術館の敷地内で見かける昆虫を、おすすめの虫関連の本とともに取り上げました。5月くらいから美術館のあちらこちらで虫たちが姿を現し始めますが、中にはカブトムシやナナフシなど都心ではあまり見かけない虫も存在します。子どもたちに人気の虫たち、この時期足もとを注意深く探すと、意外と見つかります。