本棚より[季刊トライホークス 2019年58号]
2019.12.23
世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。
この湖にボート禁止
著者...ジェフリー・トリーズ 訳者...多賀京子 福音館書店 750円
親族から相続した山荘に住むため、狭い借家から湖水地方へと引っ越してきたビルとスーザン兄妹と母親のメルバリ―婦人。新しい住まいは、家の目の前が湖で、美しい自然に囲まれた素敵な場所でした。ビルとスーザンは散策中に見つけたボートで湖へ漕ぎ出し、湖の中に浮かぶ島に上陸し、キャンプをする 計画を立てます。しかし突然やって来た地主のアルフレッド卿に、ボートの使用を禁止されてしまいました。ある日、湖畔の森の中をシャベルで掘り返すアルフレッド卿の姿が目撃されます。不審に思った二人は、転校先で友だちになったティムとペニーとともに、湖にまつわる秘密を探りはじめます。
やがて子どもたちは、1000年以上前に自分たちの村を征服し定住したというヴァイキングの足跡を知り、北方の侵略から逃れ、財宝を守ろうとした僧院の修道士たちの存在を教わります。何かを企んでいるアルフレッド卿の電話でのやりとり、怪しげな古美術商の存在、森の中では白骨化した多数の死体も発見され......。小さな謎が事件と絡みあっておおごととなり、ついには警察まで登場、読者の感情も高ぶっていきます。
流れるような展開や簡潔な描写がわかりやすく、場面が目に浮かび、映画を見ているような気分で楽しめます。個性豊かな10代の登場人物たち、この物語の語り手であるビルと元気な妹のスーザンら4人の危機や友情も生き生きと描かれています。彼らを助けるお堅いキングズフォード校長や、考古学の専門家のフローリー先生ら大人も頼もしく、魅力的な存在です。少し前の湖水地方の人々の生活や、グラマースクールや女学校での学園生活、法廷の様子がのぞけるのも、この作品のおもしろいところです。好奇心旺盛な少年少女たちのひとときの冒険は、はつらつとしていてさわやかで、物語の結末とあわせて気持ちのよい後味を残してくれました。
やがて子どもたちは、1000年以上前に自分たちの村を征服し定住したというヴァイキングの足跡を知り、北方の侵略から逃れ、財宝を守ろうとした僧院の修道士たちの存在を教わります。何かを企んでいるアルフレッド卿の電話でのやりとり、怪しげな古美術商の存在、森の中では白骨化した多数の死体も発見され......。小さな謎が事件と絡みあっておおごととなり、ついには警察まで登場、読者の感情も高ぶっていきます。
流れるような展開や簡潔な描写がわかりやすく、場面が目に浮かび、映画を見ているような気分で楽しめます。個性豊かな10代の登場人物たち、この物語の語り手であるビルと元気な妹のスーザンら4人の危機や友情も生き生きと描かれています。彼らを助けるお堅いキングズフォード校長や、考古学の専門家のフローリー先生ら大人も頼もしく、魅力的な存在です。少し前の湖水地方の人々の生活や、グラマースクールや女学校での学園生活、法廷の様子がのぞけるのも、この作品のおもしろいところです。好奇心旺盛な少年少女たちのひとときの冒険は、はつらつとしていてさわやかで、物語の結末とあわせて気持ちのよい後味を残してくれました。
ちゃあちゃんのむかしばなし日本の昔話より のみのはなし
再話...中脇初枝 絵...奈路道程 福音館書店 1,600円
ある日のこと、泰作さんが魚の干物を売りに出かけました。日が暮れたので、おばあさんがひとりで暮らしている家に泊めてもらったのですが、その家にはのみがいっぱいいて、ちっとも眠れません。あくる朝、泰作さんはおばあさんに言いました。「ばあさまの家ではいいものを飼っているなあ。こののみを捕まえて売ったら、高く売れるのになあ。4、5日したらまた来るので、のみを取っておいてくれ。」 おばあさんは喜んで、朝から晩までのみを取りました。一生懸命取ったので、のみは一升袋いっぱいになりました。
数日して泰作さんがやって来ましたが、家にはのみが一匹もいなくなったので、その夜はぐっすり眠れました。あくる朝、おばあさんがのみの入った一升袋を渡そうとすると、泰作さんは「こののみはみんな死んでいる。のみは生きてないと売れないんだよ。」と言って、出ていったということです。
知恵を働かせて、人をだましたりもするし、たまにはいいこともする泰作さんのお話は、四国・高知の南西部、幡多地方にたくさんあるそうです。
数日して泰作さんがやって来ましたが、家にはのみが一匹もいなくなったので、その夜はぐっすり眠れました。あくる朝、おばあさんがのみの入った一升袋を渡そうとすると、泰作さんは「こののみはみんな死んでいる。のみは生きてないと売れないんだよ。」と言って、出ていったということです。
知恵を働かせて、人をだましたりもするし、たまにはいいこともする泰作さんのお話は、四国・高知の南西部、幡多地方にたくさんあるそうです。
季刊トライホークス 58号 (内容紹介)
「季刊トライホークス」は、図書閲覧室で3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。
- 夢中になって読んだ本
- 今回は国立天文台の縣秀彦さんに本を紹介していただきました。美術館のイベントでも宇宙のお話を聞かせていただきました。「宇宙を知ることは、未来を知ること」と語る縣さんの出発点となった本です。
- 連載「ロアルド・ダールとその作品(第3回)
- 短編の名手として評価されたダールのお話は、意外な結末が特徴でもあります。子どもたちに大人気で、実写映画化も予定されている『魔女がいっぱい』も例外ではありません。ダールの女性描写とともに、この作品の本当のテーマを探ります。
- 山猫だより
- 美術館の裏側(?)、日常について書いています。企画展示「手描き、ひらめき、おもいつき」展に合わせて復活させたものがあります。宮崎駿監督が描き下ろした『クルミわりとネズミの王さま』(岩波書店)のブックカバーと『幽霊塔』(岩波書店)のしおりです。本を購入してくださった方にプレゼントしています。