2001年07月


07月02日(月)
今日から広報に机さんが入社。「机」という苗字が珍しく、芸能人のようだとの声も。一方、今日から美術館の事務所が利用できるため、吾朗さん、北嶋さん、盛田さん、橋田さん、佐々木さん、田村さん、机さんは、スイングから席を移動することになった。「新しい机がうれしい!」「わたしの机はどこ?」など、机の話題が多く飛び交ったため、机さんは、そのたび振り向いていた。


07月03日(火)
「千と千尋の神隠し」TV特番の撮影が美術館で行われる。番組のひとつのコーナーとして、宮崎監督が、千尋のお父さんの声を演じた内藤剛志さんを案内しながら美術館を紹介するという内容だ。7月になったばかりだというのにただならぬ暑さで、皆が汗だくになりつつも撮影はなんとか終了。放送は7月15日(日)の予定。


07月04日(水)
ショップのポスレジの最終セッティングに小葉松さんと宍戸さんが立ち会う。
小型タッチパネルの最新式なので、誰でもなんなく使いこなすことができるそうだ。来週には、配線コードに覆いをする工事が行われる予定で、これでショップの内装は完了しそうだ。棚にグッズが並ぶのが待ち遠しい。また、ワゴン販売に使うワゴンも試作中で、これもどんなものができるのか楽しみだ。

一階常設展示室の家具の搬入設置第一弾が行われる。この日のメインは撮影台とそのケース。撮影台のセッティングの後、ガラス張りの巨大なケースで覆うのだが、実際合わせてみるのは今日が初めてだし、あまりにも重いので、慎重にゆっくりと動かしている。問題なくぴったりと合わさり、さっそく皆で撮影台にセル画を置いてファインダーを覗いていた。


07月05日(木)
すずめが一匹、美術館の中に紛れ込んできた。出口がわからなくなり、ウロウロ、ウロウロ。そこで宍戸さんと盛田さんが救出大作戦に。段ボールの細長い切れ端で窓をバチバチ叩いて威嚇する盛田さんは、まるでハエを追いかけているようだった。そうやって二人で追いまわすのだが、なぜかすずめは窓とまったく違う方向に行ってしまう。しかしようやく盛田さんが無事救出に成功し、二人ともほっと一息ついていた。

昨日撮影台が設置された部屋に、今度は様々な小物が設置された。仕上げ机のそばの棚にはおよそ1000本の絵の具ビンが並べられ、本棚には作画や撮影の参考用の本が置かれ、作画机の周りには描き損じの動画が山と積まれた。ただ机が並んでいただけの部屋に、今ここで仕事をしている雰囲気が漂ってきた。


07月06日(金)
街角自立センターの方々が美術館を視察。車椅子での館内の移動やトイレの設置場所について、貴重な意見をいただいた。


07月07日(土)
運営アルバイトリーダーの面接が行われた。今回は美術館内で行ったため、面接を受ける方々に美術館を一通り見てもらうべく案内することに。こんなとき才能を発揮するのが橋田さんで、「こんなに熱を入れて、とても楽しそうに説明してくれる人は初めて」と定評のある案内ぶりが今日も見られた。


07月09日(月)
朝から美術館に大量の段ボール箱が搬入される。一階常設展示室に置かれる様々な演出小物だ。とはいえ今日は搬入だけで、設置は家具の完成を待つことになる。今は空っぽの部屋がどのように変わるのか楽しみだ。

夏だというのに風邪を引いてしまった人が続出。昨日、息抜きにと有志で乗った屋形船で、あまりにもはしゃぎすぎた報いではないかという説が出ている。


07月10日(火)
ショップの屋外販売用木製ワゴンが搬入されるため、ショップの小葉松さん、宍戸さん、塩島さんが美術館に勢ぞろい。宍戸さんと塩島さんは、ワゴンのかわいい形状には満足したものの、背伸びをしても上部の部品がうまく操れないのには悲しげな顔をしていた。また、ワゴンを作った業者さんが手がけた木製の車椅子も完成。その座り心地の良さと軽さから、手間をかけて作られていることが感じられた。赤く塗られたその姿も美術館に調和している。


07月11日(水)
美術館内のキューラインを確認するため、盛田さん、深谷さん、大口さん、滝口さんが実際に館内を隅から隅まで歩く。より多くの人に、よりいい空間を楽しんでもらいたいため、キューラインの確認も今後の大きな課題だ。ちなみに面積や導線を考慮した上で、予想される最大の混雑場所は2階のネコバス前と1階の常設展示室前とのこと。


07月12日(木)
運営チームは朝8時から竹箒を持って美術館周辺の落ち葉や吸殻を掃いたり、ほこりが舞わないように水をまいたりしている。宍戸さんと塩島さんは、ショップのガラスと床を丹念に磨いてピカピカにしていた。いつもあちこち掃除している吾朗さんを先頭に、最近のムゼオスタッフは掃除好きになっている。


07月13日(金)
身長2メートルを超す大トトロのぬいぐるみが、一時保管場所となっていた二馬力から美術館に搬入される。トトロはさらしでミイラのように梱包され、日通の作業員五人がかりでトラックに積み込まれていた。部屋の入口が狭くて入らないかと心配されたが、大勢のムゼオスタッフが見守る中、無事に所定の位置に収まった。

ごみ捨てに出かけた運営チームの3人が、体長20センチほどもある泥緑色のひき蛙を見つける。迫力満点なのはともかく、いつまでたっても動かないため、大口さんが勇気を出して水をかけてみると、蛙は片足をにょきっと伸ばし、一瞬止まった後、のっしのっしと森に帰っていったそうだ。森の主か? というほどの迫力に、大口さんは「おひきさま」と名づけた。


07月16日(月)
"よしず"を買いに出かけた吾朗さん。その場にいた最年少スタッフの机さんは、よしずが何かを知らず、佐々木さんや安西さんから、葦で編んだすだれのことだと教えてもらっていた。よしずを手に入れた吾朗さんは、早速カフェの天井に登り、取り付けていた。カフェの天井はガラス張りなので、日差しが強いと大変暑くなる。それを防ぐためのよしずなのだ。机さんは、命綱をつけて作業する吾朗さんの勇ましい姿をカメラに収めていた。


07月17日(火)
カフェでメニューの試作が始まった。しかし、まだ建物の内装作業が残っている状況なので、本格的な料理は先のことらしい。今日の試作はクリームソーダで、なかなかうまくいったとのこと。美術館のスタッフは、一日も早く本格的な料理が試作され、試食できる日を密かに待ち望んでいる。


07月18日(水)
「千と千尋の神隠し」打ち上げパーティーが行われ、ムゼオのメンバーも参加。
メンバー紹介のため、全スタッフが壇上に上がったのだが、その人数の多さに自分達が驚いていた。「これだけの大人数に飯を食わせにゃならんのよのー」と、吾朗さんは美術館の今後について考え、遠い目をしていた。


07月19日(木)
深夜、赤坂での打ち合わせを終えた田村さんは、帰りに「千と千尋の神隠し」の初日を明日に控えた日比谷スカラ座に立ち寄った。すると、すでにそこには 300人を超える長蛇の列。「美術館の初日もこんな光景が目の前に広がるのだろうか」などといろいろ思いをめぐらせる田村さんの横で、鈴木プロデューサーのサインと写真を求めるファンの列が、途切れることなく続いていた。


07月21日(土)
昼過ぎからジブリ会議室にて、宮崎監督、鈴木プロデューサーも交え、ムゼオメンバーほぼ全員出席の打ち合わせが行われた。これまで幾度となく議論してきた運営の重要課題について、ひとつの方式を打ち出すことに落ち着き、今後対処しないといけないことも具体的に再確認できた会となった。


07月23日(月)
糸井重里さんが来館し、ブエナビスタホームエンターテイメントや電通の皆さんとともに美術館を一巡り。とにかく暑い一日で、最終地点のカフェについた時には、喉がカラカラ。ちょうどカフェでは試作品の野イチゴジュースがストックされており、皆で一気に飲み干した。しかし喉が潤ったのもつかの間、カフェの薪ストーブに使う薪がトラックに山盛りで運ばれてきた。これを地下1階の薪置き場まで運ぶのに、居合わせたスタッフはもちろん、糸井さんはじめ、ブエナ、電通の皆さん、宮崎監督、鈴木プロデューサーまでもが加わった。トラックから薪置き場までのバケツリレーならぬ薪リレーが、鈴木プロデューサーの掛け声のもとに総動員で繰り広げられた。予想以上の薪の多さに皆汗はだくだく体はヘロヘロ。しかし、笑顔はキラキラ。やっと終わった時には、誰からともなく歓声が湧き起こった。「肉体労働って気持いい」と、いやな顔をせずに手伝ってくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました。


07月24日(火)
昨日から明日にかけて、消防署の方々が約20名ずつ視察に来館することになっている。吾朗さんが挨拶をする際にも、署の方々は「ヤスメ」「キヲツケ」「ミギナラエ」などの号令にきびきびと動き、きちんと整列する姿を見せ、吾朗さんは感動していた。


07月25日(水)
カフェとショップの面接が始まった。こんな日に限って中央線が止まってしまい、面接の時間に間に合わない人もいたが、なんとか無事に一日目は終わった。
いろんな年齢層の人が来てくださり、中にはすでに「千と千尋の神隠し」を見てくださった人もいた。

二馬力の宮崎監督の部屋に吊るされていたプテラノドンの巨大模型が、美術館に搬入された。少しずつだが、部屋が彩られていっている。


07月26日(木)
カフェに椅子とテーブルが運び込まれた。どことなく閑散とした雰囲気だったのが、大分それらしい雰囲気が漂ってきた。椅子は、畳などと同じ材料のイグサを利用して作ったもので、独特のあの香りが気持ちを和ませてくれる。テーブルは、しっかりとした木で作られ、足のところにハート型の繰り抜きがあったりして、とてもかわいい。


07月27日(金)
橋田さん、深谷さん、大口さん、滝口さん、机さんを引き連れた吾朗さんが、美術館を隅から隅まで説明をしながら一巡した。これまでにもいろいろと情報は伝え聞いていたものの、吾朗さんから直接詳しい説明を受ける機会はめったになかったため、メモをとりながら聞き、橋田さんは、他のスタッフも見られるようにビデオをまわしていた。「分かった気になっていた細部の構造があらためて理解できる」と滝口さん。橋田さんと机さんは、館内に鳥の巣があることを初めて知り驚いていた。


07月28日(土)
一階常設展示室の本棚に並べる古本が搬入される。しかし、巨大な棚を埋めたり、机の周りを山積みした本で囲んだりするにはまだ至らず、さらにもっと集めないといけない。


07月30日(月)
今日からアルバイトさんたちの第一陣が入社。朝からのオリエンテーションでは、西方さん、佐々木さん、田坂さん、そして運営チームからそれぞれ説明があり、その後各自で館内を見てもらった。10月のオープンに向けて、急ピッチでいろいろなことを覚えてもらわなければならないため、スタッフも余念のない準備で大忙しだ。


07月31日(火)
今日は、7月31日。開館予定日まで丸2ヶ月となった。すべてのスタッフが「これからの2ヶ月間は、さらにぱつんぱつんのスケジュールでやらなければ。」と少しげっそりした様子でつぶやいている。