GIORNALE DEL MAMMA AIUTO!
ガラスの中に広がるトトロの森――【とんぼ玉トトロ】


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20170901s49.jpg企画展示「食べるを描く。」にあわせて、DVD『人間はなにをたべてきたか』全8巻をご紹介中です。
もともとは高畑勲、宮崎駿両監督がテレビ放映当時に観て感銘をうけたというドキュメンタリー番組。
そこに映し出されているのは、肉、米、雑穀など、有史以来人類が食べてきた18の食物と、その食物によって育まれてきた様々な国や地方の風土。丹念な取材で記録された、食と向き合う人々の姿は圧巻です。
特典として高畑勲、宮崎駿両監督と各収録作品の番組制作者との座談会も収録されています。
食欲の秋、この機会に美術館で「食べる」を考えてみてはいかがでしょうか。
今日の何気ない日常の食事がみなさまにとってすばらしい糧となりますように。




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ガラスの中に広がるトトロの森―――【とんぼ玉トトロ】

ネックレスや腕輪になって輝くうす緑色のガラス玉......《とんぼ玉》と呼ばれる装飾品です。
目を近づけてよく見ると、数々の草花や木の実、そしてそのあいだにはトトロたちが見え隠れしているのがわかります。
しかし、それらは単に絵で描かれているのではありません。
この指先ほどのガラス玉のなかに、どうやってこの小さな世界をつくりだせるのでしょうか。
ガラスを溶かしながらつくっているうちにトトロも溶けてしまったり、模様が混ざってしまったりしないのでしょうか。
今回は、そんなとんぼ玉づくりの不思議を探りに、緑あふれる清里へと行ってきました。

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▲トトロ とんぼ玉 左:横型16,000円(税別)/右:縦型20,000円(税別) 




とんぼ玉の中にトトロが住み始めた日

迎えていただいたのはガラス工芸家の城下鮎子さん。
ガラスをバーナーの炎で熱しながらの繊細な作業をこつこつと丹念に、お一人で手がけています。

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▲城下鮎子さん/レザークラフト、七宝焼きなどを経て、ガラス作家・内田敏樹氏に師事し2000年よりとんぼ玉の制作をはじめる。その後、ステンドグラス作家・八田氏の勧めによりトトロのとんぼ玉に着手。2012年に埼玉県朝霞市から山梨県北杜市に移住。

数年前に初めて"とんぼ玉"、を拝見したとき、驚いたのを覚えています。
どうやってあのような模様がつくられているのか、不思議でした。

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▲とんぼ玉の模様
  
城下  とんぼ玉は写真を見てもつくり方はわかりませんよね......。
私は諏訪のガラスの里、という所でとんぼ玉に出会ったとき、あまりに綺麗で感激して、これを絶対につくりたいと思ったんです。
でもその頃「とんぼ玉の作り方」というようなハウツー本がほとんどなくて。
最初は手探りでつくりはじめたのですが、師匠について、本格的に教えてもらうことにしたのです。

そこからどんどん技術を習得し、ご自分の作品展や講座を開くほどの腕前に......。その創作意欲に驚きです。

城下  難しい技術であればあるほど、なんでも「やってやろう!」と思う方なんです。
でも、最初にトトロのとんぼ玉をつくるお話をいただいたときは、正直戸惑いましたね。

城下さんをトトロの世界に誘ったのは、同じ清里に工房を持つ八田ゆり子さん・八田高聡さんご夫妻だと伺っています(ご夫婦はジブリ美術館のステンドグラスを手がけた作家。マンマユート便りvol.13参照)。
出会いはどのようなものだったのでしょうか?

城下  清里・萌木の村で作品展を開いたとき、とんぼ玉の制作実演をしに会場に出向いたのです。
実演中、とんぼ玉に興味があったという八田さんがふらりと見に来られたのがはじまりでした。それからしばらくして、「トトロの玉をつくらない?」って言われて。驚きました(笑)。

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▲この日も八田さんのご訪問が

それがジブリ美術館へとつながるきっかけでしたか。

城下  ジブリ美術館からのお話だとわかるまでに時間がかかりましたが(笑)。
とにかくやってみようということになり、多くの資料にあたったり。宮崎監督の話されたお言葉も読んだりとか、自分の頭の中にトトロの世界が入るようにイメージづくりをしました。

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▲「この写真を見つけて、この雰囲気がいいんじゃないかと思って」(城下さん)。イメージしたのはトトロの寝床の緑の風景

トトロの世界のイメージをご自分の中で膨らませていったんですね。

城下  自分のイメージのためにいっぱい絵を描いてました。トトロは耳の形も独特なことがわかったり。
最初は手に爪もつけていたんですが、全部をリアルにすると小さなガラスの世界では細かすぎて違和感があるので、ある程度は省略したりといろいろやってみました。

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▲「大トトロのおなかの模様は下が五つで上が四つですが、いっぱい入ってると絵的に細かくなりすぎるので減らしました」(城下さん)

とんぼ玉の中で表現されたトトロ、いちばんのポイントは何でしょうか?

城下  とんぼ玉はくるくると回るものなので、どこから見ても裏表がないようなデザインにする必要があります。

なるほど。平面なようで奥行きがある上に、エンドレスな世界になっているのですね。
背景とキャラクターが層になっているとんぼ玉は、アニメーションのセル画のようで、トトロの緑豊かな森の表現にぴったりでした。

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▲花びらやクロスケの層の奥に葉が重なり奥行きがあるのがわかるでしょうか

こちらからもいろいろとお願いを出させていただいて、販売までは半年くらいかかりましたね。

城下  八田さんのチェックも厳しくて(笑)。でもそのおかげで世界観をつかむことができたんです。

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▲緑にかこまれた城下邸は、なんと八田邸と同じ別荘地内にある。「主人が定年退職で田舎暮らしがしたいと言い出して、土地を探したら八田さんの隣が売りに出ていて......。少しでも知り合いがいる所がいいかなぁと(笑)」(城下さん)



とんぼ玉の作り方

では、そんな『となりのトトロ』を題材としたとんぼ玉はどのようにつくられているのでしょうか? 
オリジナルのガラスの世界ができるまでを城下さんに見せていただきましょう。

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▲使用するガラスはすべて国産を使っているそう

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▲城下さんの作業スペース。色とりどりの棒状のガラスが並ぶ

草花やトトロなどのパーツをつくる

よく見るとキャラクター以外にも、色とりどりの草花が豪華にたくさんちりばめられていますね。

城下  まず、ひとつずつのパーツを先につくらなければならないのですが、種類がたくさんあるので製作時間合計だと実はここにとても手間をかけています。

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▲たったひとつの花をつくるのにも3、4時間かかるそう

組みあめのつくり方(マンマユート便りvol.02参照)と同じように、色ガラスを何色も組み合わせた模様入りのガラス棒をつくり、それをどんどん細く引き伸ばして細いガラス棒を作るわけですね。

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▲トトロを例にすると、耳、目、ヒゲ、口などを別々に作り、組み合わせてひとつのトトロのパーツをつくる

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▲棒状に完成したトトロパーツ

城下  そうです。細かい柄入りのパーツを、玉をつくりはじめる前に何種類も作っておくわけです。

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▲作りためたパーツのストック。豊富な彩りの草花が

形のゆがみはでないのでしょうか?

城下  ガラスはひっぱると周りが小さくなるんですよね。
しっかりと火を通して引っぱりますが、ガラスがまだ硬いときに引いてもだめだし、長く炙っても柔らかくなりすぎて細くなりすぎてしまうのでタイミングが大切です。

それをさらに薄く切るのも難しそうですね。

城下   切り方によってもゆがんでしまうので、トトロを切るのがほんとうに緊張します! 
いつもはガラス切り(ハサミのように使う道具)を使いますが、一度電動のバンドソーを試したのです。
でもそれだと断面がギザギザしているので、ガラスがくもっちゃう。なのでやはり慎重にひとつひとつ手で切ることにしました。

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▲できるだけ均等に薄く切る

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▲こちらがクロスケのパーツ。表面がツルツルしているので表情がクリアにみえる

とても細やかな作業の連続ですね。

城下   いっぱいつくっていっぱい失敗して......。長年やっていても、耳のバランスに納得がいかなかったり目の大きさが違ったり、成功率は低いんです(苦笑)。
だからトトロのパーツのストックを使い切ってしまうと、「またつくらなければならない〜」って、いまだに思います(笑)。

薄くカットしたパーツをガスバーナー付属の皿に並べて、これでようやくとんぼ玉作りの準備が整ったわけですね。

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地玉をつくる

城下   事前の仕込み(パーツづくり)が整ったら、玉をつくる作業に入ります。
まず、芯となる棒にバーナーであぶったガラスを巻きつけていきます。

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▲下地となるガラスを巻きつけていく。完成後に棒を抜くとひもを通す穴になる。

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▲透明のものの上に乳白色のガラスを重ねて形を整える

城下   できあがった地玉の上に、細い色ガラスの先端を何色も溶かして葉っぱをつくっていきます。
葉っぱは上下で色を変えてつくります。下の層ですからあまり目立たないんですけど、やるとやらないとでは違うんじゃないかなと思って。

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▲緑色のガラスを熱し地玉に葉を描いてゆく

城下   葉っぱの模様が描けたら、その上から透明ガラスをかぶせます。
このとき地玉が冷めていると透明ガラスと地玉の間に白く膜が入っちゃうので、ある程度保温しておくんです。
熱くしすぎるとぐにゃって溶けちゃうので、中が溶けない程度にして。その加減が難しいです。

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▲透明ガラスをかぶせる。くもりが入りやすいのできれいにしておく。手の油がついても透明ガラスはくもってしまう

城下   森の中の感じをだすのに、さらに葉っぱを表面に描いていきます。
葉っぱを描くのに下地の白、その上に薄い緑、きらっと光るように金箔を練りこんだモスグリーン。
これだけだとつまらないので葉っぱの元のほうに濃い色のガラス、そしてさらに葉っぱの先端には赤いガラスを入れていきます。

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▲白いソーダガラスを下地にする。その上に薄い緑、濃い緑を載せ、葉っぱの先に赤を少し足す

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▲千枚通しでひっかいて葉っぱの形にし、さらに先程とは違う緑のガラスで葉柄を描く

すごいですね。背景の葉っぱだけでもこんなに豊富な色数を用いてたくさんの工程をへているとは......。


葉を入れた地玉にパーツを載せ、なじませる

この状態の玉だけでも綺麗ですが、これにあらかじめ作っておいたトトロやマックロクロスケ、お花のパーツを入れてなじませていくわけですか。

城下   まずトトロを入れる場所を決めて、バランスをみてお花を入れます。
次にトトロ(大・中・小)とクロスケを入れていきます。

トトロやお花が入ると賑やかになりますね。

城下   小さなパーツは温めると丸まるんですよね。トトロとクロスケの目は丸まると小さく見えちゃうの。
だからまるで目を閉じたような黒い点になってしまわないよう、透明なガラスを目の上だけにのせて縮まないようにしてるんです。
トトロの目がいちばん大変......ちゃんと載せないと目が開かなくて、失敗してしまうこともあるんです。

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▲トトロを入れてルーペを使って慎重に目の位置を確認する

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▲小さな小さなトトロの目に細く尖らせた透明ガラスをちょん、と載せる

ガラスでまとって白目の部分が潰れないようにするわけですね。

城下   そうですね。ここまでつくってきて、この目で失敗してしまうということもあるので慎重に。キャラクターは目が命ですから。

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▲隙間にクロスケを入れていく

城下   クロスケもトトロと同じように透明ガラスを上に載せないと、周りの毛が開かなくて黒い点になってしまうんです。クロスケはひとつのとんぼ玉に6個入れているので、これもまた神経を使いますね。


木の実などをアクセントを表面に浮きだたせて、完成

城下   最後に、アクセントとして赤いガラスで木の実をつけていきます。
少し派手になるので、最初は秋の出荷分だけにつけてたんですが、木の実が入っていてもかわいいかなと思って。軽く熱してなじませたら完成です!

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▲赤いガラスで立体的な木の実をあしらう

すごいです。ちいさな一粒に技が凝縮されている......。
ガラスを重ねる工程は、トトロの森の奥深さを表現するのにぴったりなんですね。
とんぼ玉はパーツ作りからはじまり、何個もの繊細な関門を切りぬけて、やっと完成することがわかりました。

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▲完成



苦労の中でのこだわりとは

先程の工程を見ていると、一粒のとんぼ玉に時間と労力を惜しみなく注がれていることがわかりました。
これまでに多くの手工芸を手がけてきた城下さんですが、とんぼ玉ならではの難易点はどういったところでしょう?

城下  ガラスは熱くて手ではさわれません(苦笑)。
手直しがきかないので集中力が必要になりますね。
特にトトロの場合はものすごく疲れます。トトロのあの形をちゃんと出さなければいけないので......。
ひっぱる時に耳が縮んだり、ゆがんだり、失敗が続きずいぶんガラスを捨てることもありましたね。

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▲一見しただけでは気づかないが失敗作の数々

ガラスは再利用は無理ですからつらいものがありますね。

城下  そうなんです。最初のパーツづくりから全部やっていくと、下準備だけで一ヶ月くらいかかります。でもパーツづくりの段階で「あれ?」と感じていたのにそのまま使うと、最終的にやっぱりうまくいかないんです。

小さな妥協も許されないのですか。

城下  どんなにささやかでも、妥協すると必ずあとで自分に返ってくるんですよ。

ひとつをつくるのもかなり大変なのに、最近ではお花のパーツが以前よりも増えている気がしますが......。

城下  ついサービス精神で(笑)。
その時々で、ちょっと違うお花をつくって混ぜることもあります。
草花の配置が単調にならないように、ある部分の葉っぱには赤味をさして目を引くようにもしたり。

金箔も入っているので、華やかでしょう?
アクセサリーですから、自分がまず身につけたくなるような、〝わぁそれステキ♪〟というものをつくりたいんです。

どの角度からみても、キラキラとした表情があり、この色使いの贅沢さは城下さんならではですね。
しかも同じものは二つとないので、自分だけのトトロのとんぼ玉を探す楽しみもあります。

城下  そうだと嬉しいです。
でも、わたしのとんぼ玉を褒めていただけるのも、トトロのアニメーションの世界がしっかりとあるからです。
わたしはそれを少し違うかたちで表現しているだけ......ですから責任重大(笑)。
ジブリ美術館に来られるお客様をがっかりさせられません!

城下さんのつくりだすとんぼ玉の輝きを、ひとつひとつ手にとって眺めて見たくなりました。
今日は暑い日にもかかわらず熱い作業を見せていただきありがとうございました。


(2017年7月12日、山梨県・北杜市にて収録)




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今回ご紹介するのは、企画展示「食べるを描く。」に関連するオリジナル商品です。

オリジナル刺繍ブローチ 4 種 ...各2,000円(税別)

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ジブリ作品にでてくる食べ物をモチーフにした刺繍ブローチ。刺繍糸を重ね、少し厚みのある半立体の作品になっています。お手持ちのお洋服のワンポイントなどにおすすめです。


オリジナルミニタオル「マダムのケーキ」...650円(税別)


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映画『魔女の宅急便』にでてくる、チョコレートケーキそっくりのミニタオル。キキが蓋をあけてケーキを見たときのワンシーンが蘇ります。パッケージには赤いリボンがついているので、プレゼントにしても喜んでいただけそうです。


「食べるを描く。」ポストカードセット24 枚⼊...2,000円 / クリアファイル...300円(税別)


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「食べるを描く。」展示のポスターがクリアファイルになりました。そして全長編作品の食べるシーンが入ったポストカードセット。ジブリの食べるシーンを一挙にご覧いただける豪華な商品です。


マグネット 「目玉焼きトースト」「カルシファーとベーコンエッグ」...各1,000円(税別)


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ふっくら厚みがあって、つやつや。いまにも美味しそうな匂いが漂ってきそうな食玩マグネットができました。ジブリ作品の中でもお馴染みの食べ物が、いつでも近くでご覧いただけます。


※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。