本棚より[季刊トライホークス 2019年57号]


世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。

世界あちこち ゆかいな家めぐり

文・写真...小松義夫 絵...西山晶  福音館書店 1,300円
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 その名の通り、世界中のおもしろい家を紹介している本です。家の中には、生活の全てがつまっています。その土地や気候にあったものすごく合理的な家も、私たちからすると珍しいことばかりです。この本にはアジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米の国から、10の家が写真とイラストで紹介されています。その中から2つの家をご紹介したいと思います。
 中国の福建省には、厚い土の壁でかこまれた土楼(どろう)と呼ばれる大きな建物があります。土で作ったドーナツのような形をしたこの建物は、外から見ると壁に小さな窓があるだけです。外と中をつなぐのは小さな門だけ。元々はトラや外敵から身を守るための作りで、入り口を小さくし、建物の壁そのものが城壁のような役割をしています。中央の中庭は鳥や豚を飼う共同の場所。4階建ての各階に内廊下がぐるりとついていて、部屋の数は200以上、300人が暮らす集合住宅です。
 チュニジアのマトマタ地方、夏は50度近く、冬は0度以下になるこの土地では、地下に家が作られています。雨は少なく、水はけの良い土地なので、地下の家に水が入ることはありません。温度は20~28度ぐらいに保たれていて、とても快適です。中央の部分は天井が無く、日が差し込み、空が見える広場のような場所。ここを中心に、横穴が掘られ部屋が作られています。部屋が必要になったら、また掘って増やすのです。
 家賃はあるのか? 村人しか住めないのだろうか? トイレはどうするのだろう? 調度品や生活の様子が描かれているイラストを興味深く見ると共に、さらなる疑問がわいてきます。本は未知の世界への扉、ここではないどこかへ連れて行ってくれます。この本は、まさに世界中に連れて行ってくれて、いろいろな人がいろいろな暮らしをして生きているんだということをページごとに教えてくれます。
 もし、日本の家が紹介されるとしたら 「紙と木でできた家」になるのでしょうか。「障子」や「畳」は、よその国の人にとっては見たことのない不思議な家かもしれません。

魔女に追われたむすめ
ポーランドの昔話より

中・東欧のむかしばなし 三本の金の髪の毛  訳者...松岡享子 絵...降矢なな  のら書店 2,000円
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  ひとりの年とった悪魔が、若くて美しい娘を妻に欲しいと思いました。悪魔は領主の娘に目をつけ、年とった魔女に娘をさらってくるように言いつけました。もし失敗して、悪魔や魔女の嫌いな教会を建てられ、朝に夕に鐘の音が響きわたることになったら大変です。魔女は辛抱強く娘に近づける機会を伺っていました。
  ある日領主の一行が森へ狩りに出かけました。道に迷った占い女のふりをして近づいた魔女は、言葉たくみに娘を一行から引き離します。そして、娘をかかえて飛び去ろう としたその時、足がすべって倒れてしまいました。娘はすかさず逃げ出し森番の小屋の中に隠れましたが、ほうきに乗って森の上から見張っていた魔女に見つかってしまいます......。
  この魔女は〝ほうき〞だけでなく、〝ふるい〞や〝おんどり〞に乗って空を飛ぶこともできます。〝ふるい〞を使って飛ぶときはふるいの中に腰をかけ、〝おんどり〞は色が黒いと魔女の味方になってくれるのです。深い森や山を思いおこさせ、魔女や悪魔がすぐそばにいると思わせるお話です。

季刊トライホークス 57号 (内容紹介)

「季刊トライホークス」は、図書閲覧室で3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。

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夢中になって読んだ本
脇明子さんは、図書室でも紹介している『オタバリの少年探偵たち』『小公子』など多くの児童書や絵本の翻訳を手がけています。子ども時代、本には恵まれていたという脇さんは、「夢中になって読んだ本」として、重版未定などで手に取る機会の少なくなった名作も挙げてくださいました。ぜひお近くの図書館で探してみてください。
連載「ロアルド・ダールとその作品(第2回)
1953年に女優のパトリシア・ニールと結婚したダールは、翌年父親になります。やがて子どもたちに眠る前に聞かせるおとぎ話を作るようになり、作家としても子どもたちに向けた本を書くようになります。孤児のソフィーと心優しき巨人BFGが親子のように仲良くなる『オ・ヤサシ巨人 BFG』は、幼くして亡くなった最初の子ども・オリヴィアに捧げられた作品でした。
山猫だより「企画展の本」
美術館の裏側(?)、日常について書いています。今年の夏、美術館では一泊二日のお泊まり会を行いました。参加したのは近隣の小学4年生49名。あっという間ですが、濃い2日間の様子をお伝えしています。