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GIORNALE DEL MAMMA AIUTO! 【シルエットオブジェ】~マンマユート便り vol.4

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140301s1.JPG春の足音をきく頃となりました。美術館のまわりの草木もつぼみをつけて、花咲く時を待っているようです。
ジブリ美術館は毎朝10時になると、屋上から響く鐘の音を合図に開館いたします。
一方、ショップがオープンするのは10:15から。
入口に掛けられた看板をみて、美術館の開館から15分遅れているのはなぜ?と思われるお客様もいらっしゃるかもしれません。
それには理由があるのです。ショップの中には、美術館を見ていただくと、より身近に感じられるようなオリジナル商品がたくさんあります。館内で見て、触って、感じていただいた余韻を胸に、最後に立ち寄ってもらえたら...
「10時15分」にはそんな思いが込められています。
そうはいっても、ショップがオープンする前から今か今かと待ってくださるお客様がいらっしゃると、嬉しくなるのも本音ですが。



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幻想世界への道案内―――【シルエットオブジェ】

透明の箱に封じ込められた影・・・
太陽が背景にあるかのように、黒いシルエットになった
ジブリ作品のキャラクターたち。

それらをじっと眺めていると、
夏の強い日差し、また夕暮れ時など
ちょっと懐かしさに包まれた情景が浮かんできませんか。

今回は、動きの一瞬を切り抜いた立体の影絵、
不思議な『シルエットオブジェ』の秘密を探ります。

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▲シルエットオブジェ4種(左)...各¥2,800(税別)/シルエットスタンド3種(右)...各1,500(税別)



『シルエットオブジェ』の製作者、
川口喜久雄さん(左)と、シルエットスタンドの共同製作者の阿部昭彦さん(右)に、お話をうかがいました。
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【造形作家   川口喜久雄さん  1953年、神奈川県小田原市生まれ。その後に移った熊本県で実家の営む自転車店での機械部品や、近傍のレンガ造りの工場などが原風景となる。美学校(赤瀬川原平 絵文字工房)卒業後、(株)サンクアール入社。TV・CM美術造形、展示用模型を手がける。
1998年に同社を退職し、エッチングによるシルエット作品を発表。1999年『架空都市のシルエット』にて、第16回ハンズ・デザイン賞受賞】


偶然が生んだシルエットとの出会い

まず、シルエットオブジェを作りはじめたきっかけを教えてください。

川口  勤めていた造形会社で、誰かがエッチングで部品を作る作業をしていたとき偶然、
エッチング板の隅の方にスペースがポンと空いたんです。
それを見て、「ここに何か入れたいな、もったいない......」と思ったんですよ。
(※エッチング:薄い金属板を工具で切り抜くのではなく、薬液で溶かして形作る技法)

それで、以前たまたま目にした自転車に乗っている少年のイラストを、
なんとなく思い出して描いてみたんです。
そしてスタッフの誰かにパソコンの画像処理で
「これにちょっと影を付けくれない?」って頼んだんですね。

その影と本体が一体化した少年の絵を空いてるスペースに入れて、
出来あがったエッチング板をじっと見ていたら、
僕の頭の中で自然に本体と影が90°折れ、絵が立ち上がって見えたんです。

それは、僕にとっては大事な瞬間でしたね。
そう見えたことが、僕にはすごくありがたい〈偶然〉だったんですよ。
「ああ、影で折り曲げれば、ものは立って見えるんだなあ」って。
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なるほど...。シルエットで立ち上げるオブジェは
まさに偶然から生まれたんですね。
実際に作り始められたのはいつ頃からですか?

川口  造形会社にいた時に、
たまたま出来あがったものを東急ハンズ主催の[ハンズ大賞]に出して、
デザイン賞をもらってしまい、ちょっと調子づいたんです(笑)。
それで、これをなんとか展開できないかと考えました。

造形会社の仕事はCMなどの造形物を作ってスタジオに行くのですが、
撮影の最中、すごく待ち時間があるんですね。
そういう時に、スケッチブックにいろいろメモったりして。

その後会社を辞めて、独立しました。

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◀川口さんが運営するWebサイトの名前は[シルエット工場]。
でも大量生産のための工場ではなく、「作りたいものは何か」を求めて
アイディアを大量生産する〈工場〉を意味する名称なのだとか。
じつは幼少時に故郷・熊本で見た、
古い工場の姿がモチーフになっているのだそうです。





手描きの輪郭から伝わるあたたかさ

デザインは手描きをされてるというお話でしたが、
完成したシルエットオブジェの輪郭をよく見ると
なんというか機械で描いた線じゃないような......。
微妙なゆがみがあるラインですね。

川口  僕はパソコンだけで描く無機質な線が嫌いでね。
手でひく線だと、偶然の要素が入るんです。
だから輪郭がちょっとゆらいで不安定な部分があったり、
拡大すると荒れていたりします。
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◀エッチング素材の金属感を消すために、
シルエットオブジェは黒く塗装されています。
これは一つ一つ、
川口さんご自身によって仕上げられているのです。


パッと見てわかるわけではないのに、
人間の感覚は、微妙なゆらぎをとらえているのですね。
そのゆらぎが、金属なのに〈あたたかみ〉を感じさせるのですね。

川口  形における〈あたたかみ〉というのを、
どんな言葉で言い表すのが良いのかわかりませんが、
自然物から受ける印象と限りなく近い何かが、
そこに擬似的にあるがために錯覚してしまうんでしょう。
さらにオブジェのなかに動きがある生物がいたりするから、
自動的にあたたかさとして受け止めるのでしょうね、きっと。

それに〈影〉がつくことによって、またいい感じに。

川口  〈影〉がものの要素を捨象するというのか、捨て去るというのか......。
輪郭の内部に本当は情報がもっとあるのに、
例えば鼻があったり目があったりというのを一旦消し去ってる。
そこがイマジネーションをさらにかき立てるポイントなのでしょう。





影絵に込めたシュールレアリズムの哲学
―――解剖台の上でのミシンとコウモリ傘

イマジネーションをかきたてられるという点でいうと、
川口さんの作品を見ていると、いろいろな想像をさせられますよね。
「これは何時代の何世紀のものなんだろう」とか、
「この人は何を覗いているんだろう」とかね。
小さなオブジェの中で、人と物が絡んでるのも面白いですね。

川口  僕もわりとそう思っていて、〈楽器と人〉とか〈ネコと何か〉とか
二つの要素を絡ませているんです。
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◀川口さんの作品の一つ、[給水塔百貨店]。
給水塔なのに屋上には観覧車、内部には帆船が......。
〈解剖台の上でのミシンとコウモリ傘の出会い〉という、
シュールレアリズムの概念が込められた一品です。

「二つのものを融合させたい」、という欲求はずっとあります。
シュールレアリズムで、
〈解剖台の上でのミシンとコウモリ傘の偶然の出会い〉
という言葉があるじゃないですか?
ロートレアモンという詩人が書いたことなんですが、
要するに、それがシュールレアリズムの構造を説明する
良い文句になってるんです。
僕がやりたいのはそれなんです。

なんかこう、ちょっと異質なものが出会う時に生まれる、
「幻想」というか......幻想的なものが作りたいんです。

偶然が生み出すものが、一番面白いといえば、面白い。

なにしろ、僕が本当に狙っているのは、
シルエットオブジェを雑貨屋さんにただ売るために置くんじゃなくて、
駅のホームにあったら、面白いな、ということなんですから。
実際にやるにはたぶん大変なことが多いけれど、
キオスクとかで販売してもらいたいなあ、って。
販売というよりは、そこでの個展みたいなことをやりたいんですよね。

なぜ〈駅〉なんですか?

川口  外部空間ということで言えば、
「特殊な場所」という感じがするからでしょうね。
それこそ〈解剖台の上〉(笑)。
日常品の中に個人の要素が入ったものが急に現れる面白さ、
それがアートかなあ、って。
ただ、そういうものだけでは生活はやっていけません(笑)。




ジブリ作品との出会いで広がるシルエットオブジェの世界

そもそも川口さんとジブリ美術館との出会いも偶然だったそうですね。
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが東京・谷中にあるお店で、
川口さんのシルエットオブジェを見て、
「いいじゃない、作ってもらったら?」という流れになったと聞いています。

川口  いや私も直接その場にいなくて、
お店の人からそう聞いたのと、後に鈴木さんから直接、
「ふらっと立ち寄って、たまたま見た」とうかがいました。
その後、美術館内で「オブジェ化できるものがあれば、ちょっとやってみてくれませんか」
という話を頂いたんですよ。

最初は館内の看板とかもやる予定だったんですが。
最終的に苦労の末、4点が商品になりました。

川口  [自転車](となりのトトロの自転車のシーン)は、
細部が見られるように工夫しているんです。
お父さんのメガネの部分も拡大してみると、
ちゃんとメガネのレンズの部分に抜けがある。
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[なわとび](サツキやメイたちが縄跳びをしているもの)は、
展示室の[トトロぴょんぴょん]の動きを元に試作したのですが、
ある日、打ち合わせをしていると、偶然、
当時の館長である宮崎吾朗さんが通りかかり、
「これ、顔を黒く潰せませんか?」と指摘を受けました。
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あと[ネコバス]はお尻のほうをあげているんですが、
そうすると走っている動きの一瞬だ、という雰囲気が出てきて気に入ってます。
口を開けて歯を描くように、というアドバイスもありました。
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鈴木さんも、吾朗さんも偶然通りかかったのですね。
偶然の出会いからはじまったジブリ作品のシルエットオブジェですが、モチーフとしていかがでしたか?

川口  アニメーションでは色がついて動いているものが、
黒一色のシルエットでも成立し、不思議とちゃんと動きも感じられるものになりました。

ほかにも例えば、宮崎駿氏が描かれたものからも刺激を受けますし、
こうやって多くの人に見てもらう機会が増えたというのも、
大きかったと思います。
たまたま私の作品を見つけてくださった鈴木さんのおかげで、
ずいぶん救われたというか、助かりましたね。



偶然という光を求めて...

最後にシルエットオブジェの魅力を。
作っていていちばん面白いことはなんですか?

川口  自分にとってシルエットオブジェにふさわしいデザインが、まだできていません。
それでほじくり返しているんです。
何かあるはずなんだけど、
「なんだっけなあ、なんでつかめないんだろう」というのが、
僕にとっての変わらない魅力というか、面白がれる所なんですよね。

16年もやってるのに、自分の中で核心に触れるものに、
まだ出会っていないんですよ。

近くにあって、つかめそうでつかめない感じなのですか?

川口  うーん...?
これはどうも有名な話らしいですけれど、
「プラトンの洞窟の話」って聞いたことあります?
「我々は洞窟の中にいて、影絵を見ているようなものだ」という。
何かそれと似たような、
自分にとっての〈光〉ともいえる、理想の形がきっとどこかにあるはずで、僕はずっとそれを探し求めている。
しかし、実体ではない〈影絵〉のような目に見える現象ばっかりが気になってしまっている......。
でもきっと最後には、元にあるものを窺い知ろうとし続けているんですね、どうも。

それを追いかけるのが楽しくてしょうがないのですか?

川口  そんなには面白くないのですが(笑)、
ずっとそうさせるのは、いちばん最初の
「エッチング原稿のスペースに入れた、あの偶然の力」だろうと。

ただの(偶然)......そう思うんです。



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ショップ「マンマユート」の店内には、自分の目で見て触って発見できる商品がたくさんあります。引き出しを開けたり背伸びをしたり...。思いがけず自分だけの小さな宝物が見つかるかもしれません。
ここではそんな宝物の中から、おすすめの商品をご紹介します。

今回ご紹介するのは、美術館の中にあるいろいろな場所、ものをモチーフにした商品です。
みなさんは、これらが美術館のどこにあるのかご存知でしょうか?

「パティオ排水溝蓋ミラー」 … 2,400円(税別)

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一度目にしたら気になってしまうこのにんまり顔は、井戸で水遊びをした子なら、どこにあるかすぐにわかるかもしれません。顔のついている上蓋を開けると手鏡になっています。重厚感のあるつくりで、持っていたらちょっと人に自慢したくなりそうです。

「ふしぎ玉ストラップ」  … 1,200円(税別)

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館内には、全部で7色27個のふしぎ玉があります。固そうな鉄格子がぐるっとねじれて、中にキレイなガラス玉がとじこめられています。いったいどうやってガラス玉が中に入っているのか、取り出せそうで取り出せなくて...不思議なので"ふしぎ玉"と名付けられました。ショップで手に入るこのふしぎ玉は、ストラップとして使えるので、どこにでも美術館の思い出を持ち運んでいただけます。

「ペーパークラフトレター[少年の部屋]」 … 380円(税別)

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全て紙でできていて、切り貼りするうちに美術館内にある部屋の一角が再現されます。この部屋に所狭しと貼られているのは、部屋の主である少年が描いたスケッチの数々。これから何かがはじまりそうな空気に満ち溢れています。ぜひ小さなイメージの断片に想像を巡らせながら作ってみてください。封筒の形に折り込めば手紙になるので、創作好きの人への贈り物にも良いかもしれません。




※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。