GIORNALE DEL MAMMA AIUTO!
タイガーモス エッチングモデル


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20160301s2.jpg春風を感じながらぶらぶらと散歩したくなる季節になりました。美術館では時期によりかわるがわる短編映画が上映されますが、今月は『やどさがし』。全ての音が人間の声で表現され、動く文字として擬音語や擬態語が画面に描かれています。風や木、家までもが生き生きと躍動するそんな世界の中を、意気揚々と旅する主人公フキちゃんの姿になんだか元気をもらえる映画です。ショップでは、フキちゃんが遭遇する川の主、「ぬらりひょうたん」のてぬぐいを販売中。職人さんが1枚1枚丁寧に染め上げたこのてぬぐいは、使えば使うほど味のある色合いになっていきます。この春、フキちゃんさながらの大きなリュックを背負って、てぬぐい片手にどこかへ出掛けてみるのも楽しそうです。 ショップのてぬぐいコーナーには他にも短編映画のキャラクターや、マックロクロスケが主役のものもありますので、ぜひお気に入りの一枚をみつけてみてください。





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輝く迷路を踏破する楽しみ―――【タイガーモス ブラスエッチングモデル】

『天空の城ラピュタ』に登場する空中海賊の飛行船、
タイガーモス号の骨組みが金色に輝いています。
真ちゅうの薄板の部品をひとつずつ組み合わせていくキットですが、
じつはその工程にはかなり高度なテクニックが必要で、
誰でもかんたんに作れるものではありません。
しかし、最初の発売から16年が経つのに、じわっと売れ続けいまも支持されています。
今回はそんなキットを開発した、作り手たちの熱すぎる情熱に迫ってみました。

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▲海賊飛行船タイガーモス 1/144エッチングモデル...¥18,000(税別)




タイガーモスを選んだわけ

今回のタイガーモスエッチングモデルを企画したのは、
ホビー商品を多く手がける株式会社バンプレストの藤井秀洋さん。
子どものころから模型が大好きだったという藤井さんは、
じつはタイガーモスを作る前の1998年、『紅の豚』の主役飛行艇、サボイアS.21をモチーフに、
エッチングによる骨組みモデルを開発していました。

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▲【株式会社 バンプレスト/ 藤井秀洋さん】1962年生まれ。当時のバンダイグループ ユニファイブ入社後、
自分の趣味を活かし、ジブリ関連メカのエッチングモデル開発を担当。現在はバンプレスト所属。


この企画はどのようにはじまったのでしょうか?

藤井  僕が、ジブリ作品をやってみたかったんです。
バンダイグループ初のジブリ作品を手がけてみたくて。
飛行機マニアなので、十数年前に『紅の豚』を観たとき、
「これは意地でも形にしたい、するしかない!」と。
一か八か、やってみようと思ったのがはじまりです。

それまでエッチングで組み立てるキットはなかったのですか?

藤井  鉄道模型やプラモデルのディテールアップ用などではありましたが、
キャラクターものを出したのはたぶん僕が初めてでしょう。
以前、会社でZIPPOライターの開発をエッチングの技術(※エッチング:薄い金属板を工具で切り抜くのではなく、
薬液で溶かして形作る技法)
でつくっていたのです。
それでその技術を応用して飛行機のキットをつくろうと思いました。

エッチングキットのはじまりは『紅の豚』の[サボイアS.21]だったのですね。

藤井  そうなんです。最初に取り組んだ[サボイアS.21]は大変でした。

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▲発売までに約一年かかった1/48スケールのサボイアS.21。このときの開発ノウハウが次作に活かされた(現在は絶版)。

アニメーションですから、映画のなかではシーンによって
サボイアの形が少しずつ違っているんですよね。
アニメーションの印象を損なわず、なおかつ立体として整合させるにはどうすればいいんだと悩みました。
そのときに、ジブリさんのほうから、
「宮崎監督は自分の頭の中で実際に飛ばしているので、本当に飛ぶように作ったほうがいいですよ」
とアドバイスいただきました。 
しかしそうすると翼や機首のラインがかなり映画と違ってきてしまったんです。
いいのかなぁ...、と緊張しつつ、宮崎監督のところに試作を持っていったのですが、
監督から「きみ、ちゃんと飛行艇のことわかってるね」と言っていただき、ホッとしました。

無事販売できることになったわけですね。

藤井  そこで調子に乗り第二弾として、タイガーモス号をやってみたいと言ったのですが、
「本気か!?」と言われまして(笑)。
飛行船自体の資料もないところからはじまったので、
洋書店に行ってヒンデンブルグ号の本を買ったり『天空の城ラピュタ』を何度も何度も観て、
たぶんこの辺にこういう構造物が入っているだろうと推測していきました。
好き勝手に妄想して、部屋数があわないな...、などと言いながら整合性をとっていったんです。
妄想はいちばん楽しい作業なんですよ。
でもそれを、実際に製品化するとなると...。死にそうになりました(笑)。


ジブリ愛あふれるふたりの空中戦勃発

いよいよタイガーモス号の製品化に取り組みはじめた藤井さん。
しかし、ここからが難題です。
実際に設計し商品化するという至難の業をいったい誰ができるのでしょうか?
藤井さんがパートナーに選んだのは金属模型や専用工具などで定評がある、株式会社アイコムさんでした。

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▲【株式会社 アイコム 代表取締役社長 宮前幹雄さん】1956年生まれ。玩具メーカーのポピー入社後、
超合金などヒット玩具の開発に携わる。その後、独立し1984年よりアイコムでホビー商品を展開。


藤井  元玩具メーカーの開発マンだったアイコムの宮前さんは、金属模型に詳しく、
僕のような素人とは違い、組み方も無理がなく設計してくれるんです。
しかしいま振り返るとここまでつくり込むというのはある意味、狂気の沙汰だったなぁと思います。
ふたりとも若いからできたんでしょうね(苦笑)。

宮前さんは、藤井さんからの依頼を受け、どのような取り組みを始めたのでしょうか?

宮前  設計をしたのは1999年頃で、[ライノセラス]という曲面設計がしやすいCADが出始めたころでした。
それを導入しつつ取り組んだんです。
しかし、三次元の竜骨の設計はデータ上で整合性が出ていても、
実際に部品にするとひずみが出るため、組んでみると合わないことがあるんです。
なのでそのたびに藤井さんに怒られましたね(苦笑)。
だからデータをエッチングに変換して、調整して、組んでみて...、というのを
何度も何度も繰り返しました。何百回やったかわからないですよ。

そんなにたくさん!

宮前  とくに上部のバルーンの部分は、
三次元にしたときに出る歪みが全部、部品の接点のところにくるんですよ。
エッチングの部品同士はすべて噛み合わせなので、その交点が多いほどひずみが生じるんです。
零戦のボディの3倍か4倍、桁が入っていますし、薄いプレートなのでねじれも増えます。
CADではなく自分で組んでは修正指示を出し、
何度も試しながら設計していくしかありませんでした。

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データ上の計算だけでなく、どう歪むかを調整し続けるわけですね。

宮前  いまでこそこんなふうに仲良く話してますがお互い熱いので、
当時はふたりで組み立ての工程がどうの、どっちがいいのと、侃々諤々かんかんがくがくとやりあったり、大ゲンカもしました。

藤井  そういう会話のときは他の人は誰も入れないんですよ。

宮前  お互い頭の中で組み立てた三次元のイメージ同士を戦わせているので、
もう、亜空間のケンカですね(笑)。
なおかつ宮崎監督特有の雰囲気を表現するために、「どの場面のデザインを使うんだ?!」ともめたり。

藤井  宮崎監督の世界観が好きなので、やるんだったら徹底的に突き詰めてつくろうと思いました。
思い返すと楽しいやり取りでしたが。

宮前  最初は一ヶ月くらいでできるだろうと思っていましたが、ぜんぜんでした。
納得できないので、一ヶ月たってもバルーンの形すら決まらなかったんです。
いつ発売できるかなぁって、ふたりで遠くを見ていましたね。

藤井  当時やれるだけのことをやりました。
それでようやく完成させて宮崎監督のところに持っていったときに、
「ばかだねえ! もう言葉もないね、開いた口がふさがらない(笑)」
と言われたのが嬉しかったですね(笑)

宮前  最高の褒め言葉だよね(笑)。


《暴走》と《妄想》が生む情熱

藤井さん、宮前さんのお話を聞いていますと、
これはビジネスとしてはかなりユニークな取り組みのように感じました。
それが完結した背景を探ってみましょう。

おふたりの宮崎監督作品に対する思い入れと、製品化する熱意はたいへん強く感じました。
しかし、やはり企業のビジネスマンとしての問題もあったと思います。
その点はどのようにクリアされたのでしょう?

藤井  開発に一年以上費やし、開発費はかなりの額になってしまいました。
そして2000年にようやく発売しましたが、じつは初回の注文は500個しかこなかったんですね。
しかし、その翌月も500個きまして、その翌月も、更にその翌月も500個の注文があったんです。
結局、一年かけて6千個くらいまでになりました。

すごいことですね。

藤井  一年たったら上司から、「いい商品だね、コンスタントにリピートがきて。
やっぱりこういう商品を作らなきゃだめなんだ」と言われました。
この時は営業に異動になっていたので、「それなら開発職に戻してほしいと」お願いしたのですが、
「お前はだめだ、暴走する」って回答でした(笑)。
まぁいまではまた開発に戻りましたが、当時は自分の開発者生命をかけて作ってしまいましたね。

スケジュールやコストは、あとから考えたのですか。

藤井  完成しても、開発費を使いすぎてクビかもしれないなと、ドキドキしていました。
まあ、振り切った感がありますね。儲かるかどうかは二の次で、自分がやりたいからやるという。
自分の開発した製品のなかで、ここまで振り切ったものはそんなに多くはないんですよ。

宮前  でも、予算が出たからといってまとめられるようなものではないんだよね、こういうものって。
もう好きじゃないとやれないんですよ。
藤井さんは飛行機マニアで宮崎監督ファン、僕は『宮崎 駿の雑想ノート』のファン。
好きだからはじめたけれど、燃え尽きるまでやったよね、ふたりとも。

採算度外視でやや脱線気味ですが、おふたりの愛情と情熱がそのまま製品に込められ保温されているから、
長く愛され、売れ続けているのかもしれませんね。

宮前  暴走しないとこんなことはできませんね。《暴走》と《妄想》は大事。

藤井  振り切った商品を作ると、どこかで帳尻があうんじゃないでしょうか。
これまで僕が手がけて売れたものは、振り返ってみるとどこか突き抜けていたように思います。
 
宮前  宮崎監督も罪ですよね、僕らふたり、病気にさせて(笑)。
でもこういう部分は、仕事として教えてあげても誰でもできるわけではないんです。
楽しい仕事、残る仕事は、人生でそんなに巡りあえません。
好きで続けてきたから、今日みたいな日が来るんでしょうね。

藤井  僕もホビー開発からはずれてしまったのに、こうやってまた話ができるのは、ありがたいことです。



完成への近道?

このキットを製作するお客さまに、コツのようなものがあれば教えてもらえませんか。

藤井  これ、正直に言うと普通の人には組めないキットですね。

えっ、そんな!(笑)

藤井  「組めない」と言うのは言いすぎですが(笑)。
五分で作ろうとか、一時間で作ろうと思ってはいけません。
時間をかけて妄想とともに楽しんでいただきたいという商品ですから。
いまのプラモデルはある意味よくできた立体パズルで、
設計図通りにやれば誰でも組めるようになっています。
でもこのタイガーモス号はそう言ったパズル的なものとは違い、
自分で考えて工夫を加える必要があるんです。

工夫、とは例えばどういったことでしょうか?

藤井   例えば気球部分の曲線の具合は、家にあるものを利用してちょうどいいカーブをつけてみるなど、
自分で創意工夫をしてみることですね。

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それは初心者には難しそうです...

藤井  でも時間をかければかけるだけいいものになるんです。
この、ホワイトメタル製の付属フィギュアひとつひとつも、
バリを削って調整してあげるとぜんぜん変わりますよね。
できるんですよ、どんな人でも。一個に一時間かければ。
全部にていねいに時間をかければいいだけの話なんですよ。

たしかに、少しずつならばできるような気もします。

藤井  できますできます。時間をかけて、ゆっくり作っていけばいいんです。
気力と根性と愛情もかけて。

いいお言葉をいただきました(笑)。
自分なりの工夫を加えて作り上げることによって、格別なものになりますね。

藤井  完成させるのは大変ですが、自分でも最初に完成させたとき、
これを見てニヤニヤしながらお酒を飲みました。

作り上げるのは大変ですが、
出来上がったものを鑑賞するという楽しみ方もあるのですね。

藤井  見ていてうっとりしますよね。
以前、会社の後輩の結婚式のときに、
「藤井さん、ご祝儀いりません。その代わり、これを一機作ってください」
と頼まれたこともありました。結局作ったうえに、ご祝儀もあげましたけどね(苦笑)。
しかし今回、改めて見てみると、あーよかった、大変だったけれどやっぱりおもしろいなぁと。
十数年たってひさびさに出したんですが、本当によく出来てるなぁと思います。

十年後に変わらない魅力が感じられるからこそ、インテリアとしても輝きをはなつのですね。


つくってみよう

さて最後に、タイガーモス号を実際に組み立てるうえでのアドバイスをいただくことにしましょう。

藤井   組み立てるのにたいした工具はいらないんですよ。
事務机の中にあるようなもので作れます。
まず、アートナイフとカッターマットは絶対に必要です。
また、部品を曲げるのにラジオペンチを使いますが、
そのまま使うとパーツに傷がつくので
ラジオペンチの先端部分にマスキングテープを巻いておきます。
あとは真ちゅうブラシ、ピンセット、0.5ミリのドリル、瞬間接着剤(低白化タイプ)があるとよいでしょう。

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▲こちらの道具を使用します

タイガーモス号の組み立てガイド  講師:藤井秀洋

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▲ご興味ある方はこちら

実際に自分で組み立ての工程を楽しむのはもちろん、
藤井さんのように完成後にお酒を嗜みながら眺めたり、
また、作る前のエッチングシートの状態を眺めるのも楽しいでしょう。
タイガーモス号は素材として箱に入っていますが、
その中には自分の時間を有意義にするための夢と希望が一緒に詰まっているのです。
ぜひ藤井さん、宮前さんの熱い想いを、あなたの指先から感じ取ってください。

(2016年1月29日、埼玉県さいたま市にて収録)





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今回ご紹介するのは、エッチングキットにちなみ自分の手で組み立てる商品です。

美術館オリジナルミニエッチングキット 「サボイアS-21」「タイガーモス」 ... 各3,800円(税別)

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小さくても本格的なエッチングキット。「大きいのは難しいけれど、これなら」という初心者の方にもおすすめです。それぞれのパーツは工程によって微妙に形が異なるので、ひとつずつ板から切り離して順番に作るように気を付けましょう。夢と冒険がたくさんつまった飛行挺が、つくる喜びとともにあなたの手に! 小さいとはいえ台座とケース付きの本格的なエッチング模型です。一度挑戦してみてはいかがでしょうか。


「千と千尋の神隠し」神様カードセット... 600円(税別)

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『千と千尋の神隠し』に登場する神様たちがかわいい折り紙カードになりました。山折り、谷折りをするだけでキャラクターを立たせることができ、ずらっと並べた神様を見ているだけで笑顔になれそうです。プレゼントやお土産に、ちょっとしたカードが添えられていると嬉しくなるもの。自分で折れる折り紙カードで、一味違うメッセージにしてみてはいかがでしょうか。


起こし文はがき・大サイズ「全景」「中央ホール」各400円(税別)

起こし文はがき・小サイズ「ニセ受付」... 300円(税別)

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加工済みの切り込み線に従って折り曲げるだけで、立体的に建物やキャラクターが起き上がるハガキの起こし文。組み立ててみると、それぞれ美術館の外観、館内吹き抜けの中央ホール、トトロのニセ受付が出来上がります。美術館で過ごした思い出を胸に、切手をはって誰かに手紙を送るのも素敵です。ぜひ、ご自宅でも小さな美術館を再現してみてください。

※商品は品切れの場合がありますので予めご了承ください。